フリーライダーとは?企業に生まれる原因と対策をわかりやすく解説
2023.09.01
業務を円滑に遂行するためには、社員のチームプレイや相互の意思疎通、協力が欠かせません。しかし、なかには「フリーライダー」と呼ばれる一部の人々が社内のコミュニケーションを阻害し、ほかの勤勉な社員に悪影響をもたらす例があります。
特に人事部に在籍するのなら、フリーライダーの問題や影響を把握して、社員がフリーライダー化する前に対策を講じる必要があるでしょう。そこで本記事では、フリーライダーの意味や特徴、具体的な対策や予防策を紹介します。
フリーライダーとは
フリーライダーとは組織に所属しながらも大きく貢献をせず、利益だけを享受しようとする人を指します。フリーライダーと呼ばれるとおり、いわゆる「ただ乗り」をする人です。ビジネスでは昔から俗に「給料泥棒」と言われることもありますが、フリーライダーは経営者側ではなく社員のデメリットや不利益に着目した表現のため、少しニュアンスが異なります。
フリーライダーは「不労所得者」「コストを負担せずに利益を享受する人」という意味を持つ言葉で、もともと社会学や経済学で使われていた学術用語から転じて一般にも広まりました。
フリーライダーに該当する4つの特徴
では、具体的にフリーライダーとはどのような状態を指すのか、具体的な特徴を解説します。
1.積極的に働かない
フリーライダーは最低限の仕事しかしない傾向にあります。基本的に受け身であり、自ら仕事を探したり、業務を改善したりする意欲がありません。保守的で現状維持を望むことが多いです。
また、新しい取り組みや難しい仕事へのチャレンジなど、なにか普段よりも負担がかかりそうな仕事には理由をつけてやろうとしないのも特徴です。どうしてもやらざるを得ない状況に陥ると、言い訳をするか、「成長や練習のため」と一見立派な建前を述べて他人や部下に押しつけます。
一時間でこなせるタスクでも、二時間、三時間とだらだら時間をかけて引き延ばすケースもあります。本人の業務遂行能力が低く他人より時間がかかるパターンも考えられますが、フリーライダーは真面目に働いても成果が出ない状態とは違い、怠慢であり降りかかる負担に対して常に逃げ腰です。
2.説得力のない批判をする
目の前にある仕事から逃れるため、フリーライダーは批判的な発言をすることが多いです。自分が仕事をやるべきでない理由についてもっともらしく語ります。また、新しい仕事やアイディアの提案があっても否定し、どうにかして回避しようとします。しかし、その否定や批判は根拠に乏しいのが常です。
たとえば、新しい試みを提案したとき「今までうまく回っていたのだから必要ない」「社員の負担が増えるだけだ」「成功するとは限らない」などと拒否します。データを用いての説得や、現状を詳しく分析して代替案を出すなど、建設的な批判はしません。
また、フリーライダーは保身も大切にするため、自らの立場を危うくするような部下や同僚に対しては横柄な態度を取って批判します。部下や同僚はフリーライダーにとって「自分に代わって面倒な仕事をする存在」のため、彼らに対し先輩風を吹かせて日頃からあらゆる雑用を押しつけることもあります。批判を重ねて業務を回避し、自分だけが楽に過ごせれば良いのがフリーライダーの特徴です。
3.成功は横取り・失敗は責任転嫁する
フリーライダーは仕事への意欲や熱意に欠けますが、褒められたり評価されたりすることは好みます。そのため、自分の利益を優先した結果、部下や同僚が努力して得た成果を横取りすることも少なくありません。
たとえば部下や同僚が成功したとき、「自分があの時このようにアドバイスしたからだ」と言ったり、雑談中にたまたま同僚が言っていた提案を自分のものとして先に提出したりします。また、チームで共有すべき一部の情報を隠蔽して自分だけが利用し、成果を上げたように見せるケースもあります。
フリーライダーはあらゆる手で他人の成果を横取りしますが、一方で失敗は責任転嫁します。仕事のミスはすべて同僚や部下のせいにし、自分にはなにも落ち度がないとの姿勢を崩さないでしょう。
4.自己評価は高い
フリーライダーは自己を過大評価しやすいです。周囲の手柄を横取りして評価された結果、自分は仕事ができると思い込んでいます。あるいは、評価されない場合それは自分が悪いのではなく、仕事や同僚、部下に問題があると主張します。
そのため、もし周囲からやんわりと注意を受けたとしても、本人は自身の仕事の遂行方法に自信を持っており耳を貸しません。善意でのアドバイスも否定して受け入れない傾向にあります。
なお、フリーライダーはあくまで利益に「ただ乗り」する人を指します。実際の業務遂行能力が高いかどうかは関係がありません。仮に、本気で業務を遂行すれば結果を出せるとしても、ただ乗りの傾向があればフリーライダーと言えます。
フリーライダーが引き起こす企業への影響
フリーライダーは個人の問題だけに留まらず、放置すると社内にも影響を及ぼします。具体的な影響は次のとおりです。
社員のモチベーション・生産性低下につながる
フリーライダーの業務の肩代わりや、フリーライダーから成果を奪われる日々が続くと、善良で勤勉な社員のモチベーションは低下してしまいます。また、単純に負担が増す分個々のリソースを圧迫するため、組織全体の生産性も低下するでしょう。
特に、組織のなかでも優秀な人材は自身の仕事を終わらせて他者をフォローする側に回ることも多く、フリーライダーのしわ寄せを一手に引き受ける立場になりがちです。また、フリーライダーが引き起こしたミスや問題を解決するケースもあり、負担はより大きくなります。
結果的に、組織に残すべき優秀な社員がストレスを抱えたり、離職や転職を検討したりする事態を引き起こしてしまいます。優秀な人材を失ってフリーライダーが残れば、組織の生産性はますます低下する一方です。優秀な人材が離れる前に、企業側は対策を講じなくてはなりません。
社内のチームワークが乱れる
フリーライダーは、ほかの人材の質を低下させたり、チームワークを乱して業務遂行を滞らせるリスクがあります。フリーライダーが自身で努力をせず、他者の成果を奪って評価されるのを見れば、真面目に働いているほかの社員はやる気を失うでしょう。
また、フリーライダーの問題に気がつかず評価している企業側への不信感を募らせるかもしれません。フリーライダーの仕事を見て、「あのレベルで評価されるのなら、自分もそうしよう」と自身の仕事の質を下げ、第二、第三のフリーライダーとなる懸念もあります。さらに、フリーライダーは同僚や部下に迷惑をかけるため、双方のコミュニケーションにも支障を来たします。人間関係が悪化すれば業務効率も低下してしまうでしょう。
このように、フリーライダーを放置すると本人だけでなく周囲もフリーライダー化したり、業務が円滑に進まなくなる恐れがあるため、できるだけ早急に対処する必要があります。
企業の成長そのものを阻んでしまう
フリーライダーがいると、チームだけに留まらずやがて企業そのものの成長を阻んでしまうでしょう。前述したように、フリーライダーに対処せずにいると負担が増えた優秀な社員はやがて離職に踏み切る場合があります。離職しない社員もストレスを抱えたまま業務をこなし、新たなフリーライダーに変化するケースも少なくありません。
優秀な社員が外部に流出してしまい、残った社員の成長も見込めないとなれば、企業全体の生産性が低下するのは明らかです。顧客満足度や競合他社との競争力も下がります。新入社員を入れても、既存社員がフリーライダー化している状態では教育もしにくくなります。
このようにフリーライダーは最終的に企業そのものにも大きな悪影響を及ぼすため、できるだけ定着する前に改善策を取ることが有効です。
フリーライダーが生まれる3つの原因
フリーライダーを生み出す原因は、本人の資質だけでなく企業側にもあります。考えられる原因を見ていきましょう。
年功序列を重視した人事評価システム
フリーライダーを生み出す原因には、個人のスキルではなくあくまで年功を重視した評価システムがあげられます。年功序列型の評価では、能力がなくても勤務さえ続けていれば順当に昇給するため、自身の能力を見直すきっかけがなく過大評価につながります。
また、終身雇用が前提のシステムではよほどの理由がなければ解雇される心配がありません。自身で努力し成果を出さなくても、出社するだけで確実に報酬を得られ続ける日々に慣れるとフリーライダー化していきます。自身の将来を楽観視できている状態がフリーライダーを生み出すと言っても良いでしょう。
社員の教育不足
国内企業で多いメンバーシップ型の雇用では、そもそも社員に対する教育不足がフリーライダー化を招いているケースもあります。教育を担当する人材や時間が足りなかったり、マニュアルがなかったりして十分に教育が行き届いていない場合、フリーライダーはどうすれば効率的な働き方ができるのかわかりません。自己流の仕事術を繰り返した結果、結果としてフリーライダーになってしまった可能性も考えられます。
特にメンバーシップ型雇用では自らのポストが脅かされる心配が少なく、ジョブ型雇用に比べて意欲的にスキルを磨く機会や動機が失われがちです。企業はできるだけ教育に時間を割くとともに、キャリア形成のサポートをして、社員自らが今後のキャリアを望むように支援すべきでしょう。
メンバーシップ型雇用による余剰人員の発生
企業内で余剰な人員が発生すると、フリーライダー現象が起こることがあります。特にメンバーシップ型雇用では、この現象が顕著です。
メンバーシップ型雇用や終身雇用を採用している企業では、景気の悪化や業績の低下、事業方針の変更、または技術革新による業務効率化により余剰人員が生じた場合に、簡単に人員を解雇することはできません。余剰人員が発生した場合、部署異動を行って対処することもありますが、異動先でも人手過多で余剰人員のままとなることがあります。その結果、明確な役割がないまま、仕事をせずに報酬を受け取る日々が続き、社員はより楽をする方向に流れてしまいます。
部署異動は、実際に人手が不足している部署に対しては有効な対策ですが、そうでない場合はフリーライダー現象を引き起こすリスクがあります。余剰人員の受け入れ先として適切な選択をすることが重要です。
フリーライダーを生み出さないための6つの対策
実際に社員がフリーライダー化した場合、あるいは事前に防ぎたいなら次の対策が有効です。
1.個人の仕事を「見える化」する
有効な対策の一つは、個々の仕事ぶりを外から誰でも確認できる状態にすることです。成果が一目でわかるようになれば、フリーライダーが浮き彫りになり、成果をあげていない証拠がある以上言い逃れもできません。不当にフリーライダーが評価される事態も防げます。
また、フリーライダーは自身を過大評価する傾向にあるため、仕事の進捗や成果が可視化されれば自身が自社に貢献していない事実、同僚や部下と差がある現状を認識して危機感を持ちやすくなります。進捗は同僚や部下だけでなく上司も確認できるため、もしフリーライダー化していそうな社員がいればすぐに把握し、定着する前にサポートもできます。
実際に仕事を「見える化」するには、SFAやCRMなど情報をリアルタイムで共有できるIT支援ツールの利用がおすすめです。
2.公平な評価制度を設計・導入する
フリーライダーの怠慢を防止するには、誰の目から見ても公平で明らかな評価制度を設計・導入することが有効です。評価の基準があらかじめ公開されていれば、社員は基準を達成しようと努力をしやすくなります。また、努力の方向性が定まるためスムーズに業務を遂行できるでしょう。仕事ぶりを可視化するのと並行して透明性の高い評価を行えば、フリーライダーは生まれにくくなります。
このとき重要なのは、数値を用いてより具体的な基準や指標を設けることです。たとえば「成約件数をアップさせる」「クレーム件数を減らす」ではなく、具体的に数値を示します。数値がないと、ほかの社員であれば成約件数十件アップを達成できるところ、フリーライダーが一件アップでも目標達成したことになってしまいます。九件分はほかの社員と差があるままで、結果としてフリーライダーである事実は変化しません。
また、360度評価のように、同僚のような他者からの評価を取り入れるのも予防に有効です。
3.キャリアアップ研修を実施する
キャリアアップ研修を実施するのも良い方法です。社員教育を徹底し定期的に行えば、社員は業務を効率良くこなすスキルを身につけられ、モチベーションも維持しやすくなります。いままで仕事の方法がわからずに他者の成果を横取りするしかなかった社員は、身につけたスキルを用いて自分で成果をあげることに興味を持ちやすくなるでしょう。
また、研修にはマニュアルを用意し一律の内容で実施するようにすれば、教育内容にばらつきが出てしまうOJTの欠点をフォローできます。
さらに、キャリアアップ研修を集団で実施すれば、チームの協力やコミュニケーションの重要性を理解しやすくなります。同じ教育を施せば業務の理解も進みやすく、円滑な遂行につながるでしょう。
4.適切な人材配置を行う
個々の適正を見極めて、長所やスキルを活かせる人材配置を行うことも重要です。フリーライダーは本人にもともと怠け癖があって誕生するとは限らず、仕事の内容や難易度が個人に見合わないのが原因のケースもあります。
たとえば自身の知識やスキルよりはるかに難易度の高い業務を任された場合、能力が足りずに評価されないばかりか、業務の進め方や内容すら正しく理解できないでしょう。
「仕事をしているふり」をするフリーライダー化を防ぐためにも、本人の適性を定期的な面談や周囲からの評価などで把握して、然るべき人材配置を試みることが大切です。
5.採用方法を見直す
新卒採用よりも、能力を重視した中途採用を中心にするよう採用方法を見直してみるのも一つの手段です。たとえば、メンバーシップ型雇用はフリーライダーを生む一因と言えます。そのため、ジョブ型雇用や中途採用の比率を増やすことで、フリーライダーが発生するリスクを下げることが期待できます。また、即戦力採用なら複数の応募者のなかからよりマッチした人材を絞りやすく、人材教育のコストもおさえられるのもメリットです。
ただし、即戦力採用をするとすでに今までの経験から仕事術を確立しており、教育がしにくかったり、採用する人材との意見に食い違いが出たりするリスクもあります。
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6.業務ごとに明確な目標を設定する
フリーライダー化を防ぐには、業務に対して目標意識を持ってもらうことが有効です。業務ごとに明確な目標をあらかじめ設定すれば、社員は目標に向けて行動しやすくなります。また、他者の成果を横取りしにくくなるでしょう。
管理する側にとっても社員の仕事内容や進捗状況の把握が容易になるのは大きなメリットです。もし業務の進捗が明らかに遅れていてフリーライダー化しそうな社員がいれば、なにをすれば良いのか先回りしてアドバイスできます。
併せて、定期的に面談の機会を設けるのも良い方法です。フリーライダー化する前に業務遂行する上での悩みを聞きだせればフォローしやすくなります。
フリーライダー化予防には業務の可視化や評価制度が鍵となる
フリーライダーはほかの社員の貢献によって生じた利益にただ乗りし、自身で努力をしません。フリーライダーが一人でもいるとほかの社員のモチベーションを下げ、第二、第三のフリーライダー化を招きます。また、優秀な社員の離職につながりかねないため、早めの対策が必要です。個々の業務の可視化や公平で透明性の高い評価制度の導入など、できる限り早めに整備しましょう。
もし、すでにフリーライダー化した社員により業務遂行や企業の成長に支障が出ているなら、厚生労働省管轄の総合労働相談コーナーで相談する手もあります。予約不要、無料で全国的に利用できるため、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。あるいは、費用はかかるものの、労務問題を取り扱う法律事務所への相談も有効です。
フリーライダーは適切に対処すれば再び組織で活躍してくれる存在になり得ます。対策や対処法を知り、社員が個々の能力を発揮して業務に取り組めるようなサポートを心がけましょう。
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