中途採用者がすぐ辞める原因は?定着率を高める方法と採用手法
公開日:2025.12.09

中途採用は即戦力確保に不可欠ですが、約3割の企業が定着に不満を抱えています。早期退職は、採用・育成コストの無駄や生産性低下、企業イメージの悪化につながりかねません。
本記事では、中途採用者がすぐに辞める原因や、ミスマッチを防ぐための採用戦略、入社後のフォローなど定着率を高める具体的な方法を解説します。
一定数の企業が定着状況に不満を感じている
厚生労働省の調査によると、過去3年間における中途採用者の定着状況の満足度は以下のとおりとなっており、一定数の企業は中途採用者の定着状況に満足していないことが分かります。
中途採用において、人材の定着は重要な課題です。多くの企業で定着率を向上させるための対策が求められています。

※参考:厚生労働省「中途採用・経験者採用者が活躍する企業における情報公表その他取組に関する調査研究」
中途採用者の早期退職による問題5つ

中途採用者の早期退職は、企業にとって避けたい大きな課題です。実際にどのような問題が生じるのか、具体的に解説します。
無駄な採用コストがかかる
中途採用者が早期退職してしまうと、多くの採用コストが無駄になってしまいます。
採用コストには、次のようなものがあります。
|
外部コスト |
・求人広告の掲載費 ・人材紹介の手数料 ・合同説明会(合同企業セミナー)の出展費 など |
|
内部コスト |
・採用担当者や面接官の人件費 ・求職者に支給する交通費 ・内定者懇親会の開催費 な |
これらの直接的な費用に加え、採用活動による他業務の停滞で生じる機会損失も、企業にとっては大きな損失です。
教育・育成コストの損失
多くの企業は、新しい社員が長期的に活躍することを前提として、教育や研修に時間や費用を投じます。しかし、新入社員が早期に退職してしまうと、その育成にかけたコストが無駄になってしまいます。
具体的な教育・育成コストは次のとおりです。
- 研修プログラムの参加費
- 教材費
- OJTに費やされる教育担当者や上司の時間と労力 など
早期退職が繰り返されると、教える側のモチベーションや生産性も低下し、企業全体の損失につながる可能性があります。
生産性の低下
中途採用者が早期退職すると、その人が担当していた業務をイチから引き継がなければなりません。引き継ぎが不完全なケースも多く、一人ひとりの業務負担が増加してしまいます。
これにより、既存社員は「また自分たちが頑張らなければならないのか」と感じ、モチベーションが低下する可能性があります。
早期退職が繰り返されると、こうした引き継ぎ作業が頻繁に発生し、組織全体の生産性低下につながるでしょう。
人材が育たない
早期退職が繰り返されると、組織内に人材が定着せず、貴重なノウハウや技術が蓄積されにくくなります。
ノウハウや技術力は企業の成長を支える重要な財産です。これらが失われると、企業の競争力は低下し、新しい課題にも対応できなくなってしまいます。
結果として、事業の停滞や縮小につながる恐れがあるでしょう。
企業イメージが悪化する
早期退職が頻繁に起こると、「人が定着しない会社」「入社後にギャップが大きい」といったネガティブなイメージが広まってしまいます。
優秀な人材ほど企業の情報を細かくリサーチしているため、企業イメージが悪化すると優秀な人材の獲得が難しくなるでしょう。
また、既存社員にも悪影響を与えます。企業イメージが悪いことで、「この会社には何か問題があるのでは?」という不信感が生まれ、転職を考えるきっかけにつながる可能性もあります。
中途採用者がすぐ辞める原因5つ
株式会社学情の調査によると、30代の中途採用者を迎えた企業の93.7%が「即戦力ギャップ(入社後のスキルや能力の期待とのずれ)」を経験しています。同様に、中途採用者の78.7%が「期待通りのパフォーマンスを発揮できなかった」と感じた経験があると回答しました。
このような企業と求職者双方のギャップは、中途採用者の早期退職に直結する可能性があります。すぐに辞める原因を把握し、定着率の改善に活かしましょう。
※参考:株式会社学情「即戦力ギャップ(入社後ギャップ)はなぜ起きるのか?」
想定していた業務とギャップがあった
入社前に想定していた業務内容と、実際に任された業務との間に大きなギャップが生じると、早期退職につながる可能性が高まります。
たとえば、「専門性を活かせるはずが雑務ばかりだった」や「チームで協力する仕事だと思ったら、完全に個人プレーだった」など、職務内容や働き方といった点でギャップが生じます。
業務内容にギャップが生じる主な原因は次のとおりです。
- 職務内容の説明が抽象的だった
- 企業側の良い面ばかり強調していた
- 人事部と現場の認識にずれがあった
企業文化や社風とのミスマッチ
企業文化や社風とのミスマッチは、早期退職の原因の一つです。
給与や仕事内容といった目に見える条件が合っていても、会社の雰囲気や価値観、働き方などが個人の特性と合わないと、早期退職につながりやすくなります。
このようなミスマッチが生じる主な原因は、次のとおりです。
- 企業のリアルな情報を伝えきれていない
- 求職者の志向性を見極められていない
- 求職者とのコミュニケーションが不足している
キャリアパスへの不満
中途採用者はキャリアアップを目指して転職する人が多く、入社後に「期待していた仕事と違う」「この会社で成長できない」と感じると、早期退職につながる可能性があります。
特にキャリア志向の高い人材ほど、自己成長の機会や正当な評価を求めているため、早期に見切りをつけやすいでしょう。
キャリアパスへの不満が生じる主な原因は次のとおりです。
- キャリアパスが不明確
- 成長機会が少ない
- 正当な評価を受けられない
労働条件や待遇への不満
入社前に聞いていた情報と実際の待遇が異なっていたり、自身の希望や市場価値に見合わないと感じたりすると、早期退職につながることがあります。
たとえば、「想定よりも給与が少なかった」や「休日出勤があるという説明がなかった」など、企業と求職者の認識のずれからギャップが生じます。
こうした不満が生まれる主な原因は、次のとおりです。
- 事前の説明不足
- 評価制度が適切でない
- 人事部が実際の労働環境を把握できていない
入社後のフォロー不足
入社後の受け入れ体制が不十分だと、新しい環境への適応に時間がかかります。
その結果、本来のパフォーマンスが発揮できず、孤立してしまう可能性があります。このような状況が続けば、やりがいや達成感を得られにくくなり、早期退職につながりかねません。
このようなフォロー不足が生じる主な原因は、次のとおりです。
- 受け入れ体制が整っていない
- 研修に割ける人員がいない
- 研修に関するノウハウが不足している
中途採用者の定着率を高める採用戦略7つ

中途採用者の早期退職は、企業に大きな損失をもたらします。しかし、採用課題に対して適切な対策を講じることで、早期退職のリスクを低減できます。
入社前からできる定着率を高める具体的な方法について、詳しく解説しましょう。
採用基準を明確にする
中途採用では、即戦力を求めるあまり、スキルや経験を重視してしまいがちです。しかし、それだけでは求職者の潜在能力を見逃してしまったり、カルチャーフィットを軽視してしまったりする可能性があります。
採用を成功させるためには、入社後に担ってほしい役割や期待する成果、そして自社の文化に合う人物像を具体的に定義することが重要です。
求める人材の人柄や性格、キャリア志向といったパーソナリティの部分まで詳細に設定することで、ミスマッチによる早期退職のリスクを減らすことができるでしょう。
他部署と情報を共有する
採用基準を設定する際は、人事部だけでなく、配属先の上司や同僚に求める人物像をヒアリングすることが大切です。
人事部だけで決めてしまうと、人事部と配属先との認識にずれが生じて、採用のミスマッチにつながる可能性があります。
また、設定した採用基準は、採用活動に関わるすべての人と情報を共有しましょう。これにより、誰が面接官を担当しても、共通認識を持って求職者を公平に評価できます。
求人広告の内容を見直す
求人広告は、多くの求職者が企業を判断する最初の情報源です。内容に誤りがあると入社後のミスマッチに直結し、早期退職の原因になります。
そのため、求人広告の内容は定期的に見直しましょう。誤解を招く表現や曖昧な情報がないか確認し、正しい情報を明確に記載することが重要です。
内容を徹底的に見直すことで、自社に本当にマッチする人材との出会いを増やし、定着率の向上につなげることができます。
企業のリアルな情報を取り入れる
企業の良い側面ばかりをアピールすると、入社後のギャップが生じやすく、早期退職の原因になる可能性があります。
マッチング精度の高い採用を目指すには、ネガティブな要素も含めたリアルな情報を開示することが大切です。
たとえば、「平均残業時間:月〇時間(繁忙期は〇時間になることもあります)」のように、厳しい側面についても具体的に伝えましょう。
求職者は仕事の大変さを理解したうえで応募するため、入社後の活躍と定着につながります。
採用動画を活用する
採用動画は、求人広告やテキストだけでは伝えきれない情報をアピールするのに効果的です。たとえば、企業の雰囲気や社員のリアルな声、仕事の様子などを視覚的・聴覚的に伝えることができます。
これにより、求職者は入社後のイメージを具体的に描きやすくなり、カルチャーフィットのミスマッチを防ぐことにつながります。
株式会社学情が提供する“職業体感型”採用動画「JobTube」は、第三者目線で企業の魅力を伝えるサービスです。採用のプロが企業を直接訪問・取材するため、より効果的にアピールできます。
スキルテストを実施する
スキルテストは、求職者が申告したスキルと、企業が求めるスキルが一致しているかを見極めるための手法です。求職者の技術力や実務能力を正確に把握することで、入社後の業務内容とのミスマッチを防ぎ、早期退職のリスクを減らせます。
スキルテストの内容は、配属先の上司や同僚の意見を取り入れながら精査しましょう。現場の意見を反映することで、より精度の高いテストを作成できます。
カジュアル面談を実施する
カジュアル面談とは、企業と求職者がリラックスした環境で対話し、相互理解を深めるための機会です。マッチング精度の高い採用を成功させる手法として、導入する企業が増えています。
求職者・企業にとってのメリットは次のとおりです。
|
求職者 |
企業 |
|
・企業の雰囲気や働き方などの理解を深められる ・給与や残業など聞きにくい質問を気軽にできる ・面談で得た情報をもとに選考に進むか判断できる |
・企業の魅力や社風などを具体的に説明できる ・求職者の不安や懸念をその場で払拭できる ・求職者の志向やスキルを詳細に把握できる |
入社後の定着率を高める施策4つ
中途採用では即戦力が求められるため、入社後すぐに期待するパフォーマンスを発揮してくれると期待してしまいます。しかし、優秀な人材でも新しい環境に慣れるには少なからずサポートが必要です。
適切なサポートは中途採用者の定着率を高めるだけでなく、早期戦力化にもつながります。
オンボーディング
オンボーディングとは、新入社員が会社や業務にいち早く慣れ、活躍できるようにおこなう一連の育成・サポートプロセスのことです。
単なる入社手続きや初期研修だけでなく、新入社員が期待されるパフォーマンスを発揮できるよう、継続的に支援する取り組みを指します。
オンボーディングを丁寧におこなうことで、「こんなはずではなかった」というギャップや不安を解消し、定着率の向上につなげることができます。
メンター制度
メンター制度とは、新入社員が経験豊富な先輩社員(メンター)に、業務から会社生活全般にわたる相談ができる制度です。
新しい環境での不安や疑問を気軽に相談できる相手がいることで、孤立感の解消につながります。また、会社の慣習や人間関係といった明文化されていない情報もメンターから学べるため、組織への適応が早まるでしょう。
1on1ミーティング
1on1ミーティングとは、直属の上司や人事担当者と新入社員が定期的に一対一で面談する制度です。
業務の進捗確認だけでなく、個人の悩みや課題を共有することで、問題の早期解決につながります。また、定期的に実施することで上司と部下の信頼関係が深まり、部下の成長とエンゲージメント(貢献意欲)の向上を促せます。
1on1ミーティングは、個人の成長だけでなく、組織全体のパフォーマンス向上にも貢献する有効なコミュニケーションツールです。
社内コミュニケーションの強化
社員同士の円滑なコミュニケーションは、新入社員が組織にスムーズに溶け込むための土台です。
具体的な制度に加えて、日頃から積極的にコミュニケーションを取ることで、オープンな文化を醸成できます。
社内コミュニケーションを強化する具体的な方法は、次のとおりです。
- 新入社員の歓迎会
- 定期的なランチ会
- 社内イベント(社員旅行・懇親会・部活動など)
マッチング精度の高い採用手法
定着率を高めるには、高いマッチングが期待できる採用手法を導入することがポイントです。自社の採用課題と手法が合致していないと、採用活動を効率的に進められません。
マッチング精度の高い採用手法について解説します。
ダイレクトリクルーティングを活用する
28〜35歳の即戦力人材に特化したダイレクトリクルーティングサイト「Re就活30」では、会員の詳細なプロフィール情報をもとに、求める人材を効率的に検索・アプローチすることが可能です。
アプローチ手法としては、Web履歴書をもとに1通ずつ送信するヘッドハンティングと、一括または自動配信が可能なスカウトメールの2種類があり、目的に応じて使い分けることで、高い接触率と効率的な採用業務の両立を実現します。
人材紹介を活用する
人材紹介とは、企業と求職者の間に立ち、双方のニーズに合ったマッチングを行うサービスです。人材紹介会社が採用基準に合う人材を紹介するため、マッチング精度の高い出会いが期待できます。
多くの人材紹介会社は成果報酬型の料金体系を採用しており、求人サイトの掲載費に比べて採用単価が高額になる可能性があります。そのため、自社の採用ターゲットに適したサービスを選ぶことが重要です。
転職イベント(合同企業セミナー)
転職イベント(合同企業セミナー)は、転職を希望する求職者と中途採用を行う企業が一堂に会する合同企業説明会です。求人情報だけでは伝えきれない企業の魅力や熱意を直接アピールでき、社員との交流を通じて職場の雰囲気や人柄を深く理解してもらえます。
イベントには、幅広い層を対象とした総合型と、特定の業界や年齢層に特化した特化型があります。マッチング精度を高めるなら特化型がおすすめです。
たとえば、来場者の約90%が20代である「転職博」では、経験とポテンシャルを兼ね備えた若手人材と直接面談が可能です。また、初めて出展する企業でも、株式会社学情のスタッフがブース運営から求職者のアテンドまでサポートするため、安心して利用できます。
リファラル採用
リファラル採用とは、社員から友人や知人を自社に紹介・推薦してもらう採用手法です。
自社の文化や求める人物像を理解した社員からの紹介のため、高いマッチング精度が期待できます。また、求職者側もリアルな情報を得られるため、入社後のギャップが少ないというメリットもあります。
求人サイトや人材紹介のような掲載費や手数料はかかりませんが、紹介者にインセンティブを支払うのが一般的です。その際は、職業安定法に基づき賃金や給与として支払う必要があるため、注意しましょう。
中途採用者がすぐ辞めるのはミスマッチが原因?マッチング精度の高い採用で定着率向上を目指そう!
中途採用者がすぐ辞める背景には、採用のミスマッチがあります。たとえ優秀な人材でも、企業と採用者の希望や価値観が合致しなければ、入社後のギャップから早期退職につながるでしょう。
企業への定着率を向上させるには、採用活動から入社後フォローまで、一貫した採用戦略が重要です。
株式会社学情は、28〜35歳の即戦力人材に特化した「Re就活30」などを通じ、企業と求職者のマッチングを重視した採用をサポートします。
中途採用の早期退職や定着率にお悩みの方は、株式会社学情へご相談ください。

株式会社学情 エグゼクティブアドバイザー(元・朝日新聞社 あさがくナビ(現在のRe就活キャンパス)編集長)
1986年早稲田大学政治経済学部卒、朝日新聞社入社。政治部記者や採用担当部長などを経て、「あさがくナビ(現在のRe就活キャンパス)」編集長を10年間務める。「就活ニュースペーパーby朝日新聞」で発信したニュース解説や就活コラムは1000本超、「人事のホンネ」などでインタビューした人気企業はのべ130社にのぼる。2023年6月から現職。大学などでの講義・講演多数。YouTube「あさがくナビ就活チャンネル」にも多数出演。国家資格・キャリアコンサルタント。著書に『最強の業界・企業研究ナビ』(朝日新聞出版)。
