通年採用を導入するのは難しいと感じている企業も多いでしょう。通年採用は、優秀な人材やグローバル人材を獲得しやすい一方で、業務負担が増えるといったデメリットもあります。本記事では、通年採用が難しいといわれる理由や通年採用のメリット、導入方法について解説します。
通年採用と一括採用の違い
採用活動には、通年採用と一括採用があり、近年は労働人口の減少や働き方の多様化によって通年採用を行う企業が増えています。
ここでは、通年採用と一括採用の違いについて解説していきましょう。
通年採用とは
通年採用とは、時期を限定せず年間を通して採用活動を行うことです。特に中途採用では、欠員補充や増員を目的に採用活動を行うため、多くの企業で通年採用が用いられています。
近年では、グローバル人材や優秀な人材を獲得するために、新卒採用でも通年採用を行う企業が増加しています。
一括採用とは
一括採用とは、同時期に一括して採用活動を行うことです。一般的には、採用活動期間に規定がある新卒採用で用いられます。
決まった時期に採用活動を行い、多くの人材を受け入れる新卒一括採用は、終身雇用や年功序列といったこれまでの日本の人事制度と相性が良かったことから、多くの企業が取り入れてきました。
一方、近年の社会情勢の変化に合わせて、採用方法の見直しを検討する企業も増えています。
中途採用と通年採用の違い
中途採用と通年採用の違いは以下のとおりです。
- 中途採用
すでに就業経験を持つ求職者、または就業経験のない既卒者を対象に行う採用活動のこと
欠員の補填や従業員の増員を目的に、スポットで採用活動を行う場合もある
- 通年採用
新卒採用・中途採用に関係なく、年間を通して採用活動を行うこと
中途採用と通年採用の違いは、「採用活動の期間 」と「採用する対象」の違いにあります。
通年採用のメリット4つ
通年採用を効果的に行うにあたって、通年採用のメリットを押さえておきましょう。通年採用には、一年を通して採用するからこそのメリットがあります。
採用要件に適した人材を採用しやすい
採用要件に適した人材を採用するには、求職者の見極めが重要です。しっかりと母集団形成を行い、求職者の潜在能力や経験を見極めるには、時間がかかってしまいます。
通年採用は採用活動の期間が限られていないため、求職者が採用要件に適しているかじっくり見極められるでしょう。ただし、選考に時間をかけすぎると辞退率が高まるので注意が必要です。
内定辞退による欠員リスクを軽減できる
内定辞退が出てしまうと、欠員を補填するには再び採用活動を行わなければなりません。
採用活動の期間が限られている一括採用では、追加募集をかけても求職者が集まらなかったり、活動時期が過ぎてしまったりすることがあるでしょう。
一方、通年採用は採用活動の期間が限られていないので、内定辞退があってもすぐに採用活動が再開できます。
会社の事業計画に応じた採用活動ができる
会社の事業や経営計画は常に変化し続けるため、状況に応じた採用を行わなければなりません。
通年採用であれば、常に採用活動を行っているので事業や経営計画の変化にも柔軟に対応できます。また、一括採用と異なりこの時期までに採用しなければならないという期限がなく、慌てて内定を出す必要がないので、事業や経営計画に適した人材かをしっかり見極められます。
優秀な人材を採用しやすい
一括採用では、採用活動の期間が決まっているため、卒業時期が日本と異なる国の留学経験者や海外の大学を卒業するグローバル人材の取りこぼしが発生していました。
通年採用であれば、一括採用や新卒採用という枠にとらわれず、求職者のスキルや人柄を重視した採用ができるでしょう。
他にも選考や入社のタイミングを求職者ごとのニーズに合わせて柔軟に調整でき、母集団の幅を広げられます。
通年採用の導入が難しいといわれる3つの理由
通年採用には、「採用要件に適した人材を採用しやすい」「優秀な人材を採用しやすい」といったメリットがある一方で、導入が難しい側面もあります。
通年採用の導入が難しいといわれる理由について解説していきましょう。
採用コストがかかる
採用活動に期限がない通年採用は、一括採用よりも採用活動が長期化しやすい傾向にあります。
求人サイトの掲載費や採用広報などにかかる外部コストはもちろん、採用担当者のほか面接対応を行う責任者や役員の人件費などの内部コストも増加してしまいます。
採用コストを削減するには、適切なスケジュール管理を行い、無駄なコストを削ることが大切です。
採用担当者の負担が増加する
採用活動が長期化すれば、採用担当者の負担が増加します。
通年採用では応募の時期が分散しやすいため、その都度対応しなければなりません。特に中小企業では専任の採用担当者が不足している傾向が強く、一部に負担が集中してしまう可能性があるでしょう。
採用担当者の負担を軽減するには、採用活動のアウトソーシングや採用管理システムを導入するなど、業務負担を分散するような工夫が必要です。
内定者ごとに研修や教育を行う必要がある
通年採用は求職者ごとに入社日が異なるため、入社ごとに研修や教育を行わなければなりません。研修や教育の実施回数が増えるので、採用担当者や教育担当者の負担が増加してしまいます。
一方、一括採用は入社時期が同じなので、研修や教育を一度にまとめることも可能です。
研修や教育に関する負担を軽減するには、事前に研修や教育内容を精査し、体制を整えておきましょう。
通年採用を導入する手順
通年採用を導入する手順は以下のとおりです。
- 採用計画を決定する
- 採用手法を決定する
- 選考フローを決定する
- 内定後の流れやフォローを決定する
ここでは、通年採用を導入する手順をそれぞれ詳しく解説していきます。
1.採用計画を決定する
まずは採用計画を決定しましょう。
採用計画を立てるうえで決めるべき事項は以下のとおりです(順番は企業によって異なります)。
- 採用要件(求める人物像、必須スキル、キャリア、実績など)
- 採用活動の期間
- 配属先
- 採用人数
- 採用費の予算
- 採用単価
採用計画を立てることで、採用活動に関する目標や課題などが明確になります。採用手法や選考方法を決定するうえでも軸となる部分なので、人材を採用する部署の意見も取り入れましょう。
2.採用手法を決定する
採用計画に基づき、採用手法を決定します。
主な採用手法の種類は以下のとおりです。
|
メリット |
デメリット |
求人広告 |
多くの求職者にアプローチできる |
採用につながらない場合もある |
人材紹介 |
採用要件に適した人材が採用できる |
成功報酬額が高い |
転職イベント |
求職者に直接会ってアプローチできる |
出展費以外にも装飾品や参加する社員の人件費がかかる |
ダイレクトリクルーティング |
採用要件に適した求職者と出会える可能性が高い |
スカウティングに時間と労力がかかる |
リファラル採用 |
マッチング率が高く、採用や職場への定着が期待できる |
似ている人材に偏りやすい |
採用手法を選ぶ際は、各サービスの強みや特色を理解し、自社に適した方法を選択しましょう。
3.選考フローを決定する
応募から選考、内定までの流れを決定します。
選考フローを決定する際は、次のポイントに注意しましょう。
- 選考フローを複雑化しすぎない
- 一次面接から内定までの期間は2週間程度を目安とする
- 面接回数は2回前後
求職者は複数社の選考を同時に受けているため、選考スピードが遅いと辞退される可能性があります。面接日程を早めに組んだり、オンライン面接を取り入れたりするなどして、選考スピードを速めましょう。
4.内定後の流れやフォローを決定する
内定後の流れや入社までのフォローを決定しましょう。
内定決定後は、速やかに内定通知を出します。内定出しが遅いと求職者の熱意が冷めてしまうため、選考から1〜2週間以内には内定通知を出してください。
内定後は面談や研修の機会を設け、企業理解を深めつつ、入社への熱意が冷めないようにフォローしましょう。
難しいといわれる通年採用を成功させるポイント
通年採用は難しいといわれていますが、採用を成功させるポイントを押さえれば挑戦しやすくなります。最後は、通年採用を成功させるポイントについて解説していきましょう。
採用広報に力を入れる
求職者に企業の存在や魅力を知ってもらうために、採用広報に力を入れましょう。
通年採用では、企業がそれぞれのタイミングで採用活動を進めるため、自社の求人情報が埋もれてしまう可能性があります。
就職・転職市場では、企業の知名度によっても採用の成否が左右されます。企業の魅力を伝える採用サイトを作成したり、SNSで企業情報を発信したりするなど、積極的な情報発信が大切です。
自社に適した採用手法を選択する
採用手法は、自社の採用計画や採用要件に適したものを選びましょう。
たとえば、大手求人サイトは会員数も多いですが、求人広告の掲載数もそれだけ多くなります。業界や職種によっては他の案件に埋もれてしまい、応募につながらない可能性もあるでしょう。
最適な採用手法を選ぶことで、採用要件に適した求職者へ効率的にアプローチできます。
採用対象の枠を広げる
通年採用を成功させるには、既卒や第二新卒、ヤングキャリアなど採用対象の枠を広げましょう。
既卒、第二新卒、ヤングキャリアの特徴は以下のとおりです。
名称 |
特徴 |
既卒 |
学校卒業後、社会人経験がない |
第二新卒 |
社会人経験3年未満で25歳以下 |
ヤングキャリア |
社会人経験3年以上で26〜29歳 |
中途採用では即戦力が求められがちですが、若手求職者のなかには高いポテンシャルを持った人材がたくさんいます。
難しいといわれる通年採用を「Re就活」で成功させよう!
通年採用を成功させるには、採用要件を明確化し、最適な採用手法を選ぶことが大切です。
特に母集団形成が上手くできない場合は、採用要件の幅を第二新卒やヤングキャリアまで広げるのが良いでしょう。第二新卒は年間を通して転職活動を行っているため、新卒採用が落ち着いた時期に第二新卒の採用活動が進められます。
20代転職に特化した「Re就活」は230万人の会員のうち、195万人がヤングキャリア・第二新卒です。初めて通年採用を行う企業でも、カスタマーサクセス担当が求人掲載や採用活動をサポートします。さらに、20代転職イベント「転職博」、人材紹介の「Re就活エージェント」などのサービスを展開し、企業の採用課題に合わせて効果的な採用方法のご提案が可能です。
通年採用でお困りの方は、20代採用に強い株式会社学情へお問い合わせください。
株式会社学情 エグゼクティブアドバイザー(元・朝日新聞社 あさがくナビ編集長)
1986年早稲田大学政治経済学部卒、朝日新聞社入社。政治部記者や採用担当部長などを経て、「あさがくナビ」編集長を10年間務める。「就活ニュースペーパーby朝日新聞」で発信したニュース解説や就活コラムは1000本超、「人事のホンネ」などでインタビューした人気企業はのべ130社にのぼる。2023年6月から現職。大学などでの講義・講演多数。YouTube「あさがくナビ就活チャンネル」にも多数出演。国家資格・キャリアコンサルタント。著書に『最強の業界・企業研究ナビ』(朝日新聞出版)。