「リアリティショック」とは?起こる要因と企業が取る対策を解説
2021.10.18
「リアリティショック(reality shock)」とは
「リアリティショック(reality shock)」とは、その名の通り「現実に直面した際のショック」を意味しており、とくに新しい環境に身を置いた際に「実際の状況が思い描いていたものと違った」と感じた際のギャップに思い悩むことを指す言葉です。
「リアリティショックはゆとり世代特有の問題である」と考える人も多いですが、この概念自体は半世紀以上も前に、米国の組織心理学者E.C.ヒューズによって提唱されており、時代を問わず、大きな理想を抱いて入社する新入社員の誰もが経験する可能性のある問題であると言えます。
リアリティショックは新入社員だけでなく、ベテラン社員にも起こり得るとされています。例えば昇進によって管理職に就任してから、イメージしていた仕事や立場でないことが原因で、リアリティショックが起こるケースがあります。
他にも、育休復帰をしたものの、想像していた状況とは異なるため、リアリティショックを経験することもあります。
リアリティショックが起きると、喪失感や将来への不安を感じるようになり、受ける衝撃の大きさによってはやる気を全く失い、最悪の場合、離職へとつながっていくことになります。
早期退職とリアリティショックの関連性
では実際に、早期離職とリアリティショックはどのくらい関連しているのでしょうか。
「独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)」では、初めての正社員勤務からの離職者に対し、退職の理由について調査を行い、在職期間ごとに項目を整理した形で結果を発表しています。この調査において、離職までの期間が短いほど割合が多い理由としては、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」「人間関係がよくなかった」「自分がやりたい仕事とは異なる内容だった」「仕事がうまくできず自信を失った」といった内容が挙げられています。
上記のような「労働条件」「人間関係」「業務内容」「仕事への自信」といった理由は、いずれも「期待と現実のギャップ」との関連性が高い項目であり、早期離職とリアリティショックが密接に関わっていることを示していると言えます。
※独立行政法人労働政策研究・研修機構「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ(第2回若者の能力開発と職場への定着に関する調査 ヒアリング調査)」(https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2020/documents/221.pdf)
リアリティショックが起きる4つの要因
新入社員からベテラン社員までが経験する可能性のあるリアリティショックですが、ここでは、これが起きてしまう4つの要因について解説します。
仕事に関するギャップ
会社や仕事に対する理想が高すぎると、就職後に「こんなはずではなかった」と感じてしまいがちです。自分の能力を活かせる仕事が回ってこない、新入社員だからか単純な仕事ばかり、といったケースではやる気がある社員ほど理想と現実のキャップに不満を募らせていきます。残業や休日出勤の多さ、職場の安全面や衛生面の不備等も、リアリティショックの原因になります。
対人関係に関するギャップ
職場で放っておかれる、仕事を覚えるまで邪険に扱われる、不満や悩みを打ち明けられる相手がいないといったケースや、上司による叱責や粗探しに疲れて積極的になれないケースなどがあるでしょう。コミュニケーション上のストレスが積み重なっていくと、新入社員は「この会社に自分の居場所はない」と思ってしまいます。
他者能力に関するギャップ
他の社員と自分の能力を比較した結果、劣等感を感じて自信を失くしてしまうパターンや、その逆に周囲の意識の低さに呆れて先行きに不安を覚えるパターンなどがあります。前者であれば、優秀な同期に囲まれてしまった場合に、後者については頼れる先輩や上司と出会えない場合に、新入社員はショックを受けることになります。
評価に関するギャップ
社内で納得のいく評価が得られない場合にも、社員は「こんなに頑張っているのに」と、不満を募らせていきます。昇給が期待を下回った場合や、現在の役職に納得がいかない場合も、「会社側から評価されていない」という不満につながります。
リアリティショックに企業ができる対策
誰にでも起こりうるリアリティショックに対して、企業側はどのような対策を取るべきでしょうか。
リアリティショックそのものは入職者側の主観的な感覚ですが、企業と入職者との認識の齟齬や共有不足が原因で生じているケースも多いです。企業側が採用過程から入社後までフォローする体制を整えておくことで、リアリティショックを軽減し、早期離職に対策することは十分に可能であると考えられます。
採用の時点でギャップのない状態に努める
入社後の社員が大きなギャップを感じている場合、採用ミスマッチである可能性があります。採用ミスマッチを防ぐには、以下のような取り組みが有効です。
- 採用広報には写真や動画等、より雰囲気が伝わりやすいものを用いる
- 数字を用い、より具体的に伝える(「有給取得率高め」 →「有給取得率95%」)
- 選考フロー中に複数の社員と会う場(カジュアル面談など)を設ける
- 実際の業務に一部関わらせる
受け入れ態勢を整える
「この会社には自分の居場所はない」と思わせないことが大切です。受け入れ準備を行い、会社にとって「必要な人材」であり、「組織として歓迎している」としっかりと伝えましょう。特に新入社員の場合、これから働く会社の最初の印象は大切です。名刺や備品といった細かいものも、不足なく準備しましょう。
定期的に1on1の場を設ける
リアリティショックの予防で、最優先すべきなのは対人関係の問題です。気軽に相談できる相手がいる職場なら、新入社員は一人で悩みを抱え込まずに済むようになります。1on1ミーティングやメンター制度、ブラザー・シスター制度を導入する他に、上司が率先して行動するのも効果的です。
適切な評価制度を導入する
給与や役職に不満を持つ社員が多い場合は、評価制度に問題がある可能性があります。給与や昇進条件などについて、社員が納得できる内容になっているか見直しが必要です。上司と定期的に面談を行い、理想の働き方を確かめ合うと同時に、会社側からの期待を伝えることで、現状に納得できる社員もいるでしょう。
リアリティショックに対処して企業へのエンゲージメントを高めよう
もしいま、リアリティショックを起こした社員へのフォロー体制が整っていなければ、早めに着手しておきましょう。
そしてリアリティショックへの対策で一番効果的なのは、「この会社でずっと働きたい!」と思う社員を増やすことだと言われています。ギャップを感じても、「ここならやっていける、乗り越えられる」と思える風土を作っておけば、自然とレジリエンスの高い社員やリーダーが生まれ、強い組織ができあがるはずです。
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