ワークエンゲージメントの基本から解説!高める方法を実践しよう
2023.05.01
働き方改革により多様な働き方が認められるようになり、従業員の企業への帰属意識が変化してきました。企業の成長を求めるには、ワークエンゲージメントの高い従業員を増やすことが求められます。
この記事では、ワークエンゲージメントの意味と企業におけるメリット、高めるための具体的な方法について解説します。従業員のエンゲージメント向上に悩まれる人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
ワークエンゲージメントとは?
ワークエンゲージメントは、オランダのシャウフェリ教授によって定義された用語で「仕事に対してポジティブで充実した心理状態」を指します。従業員の仕事に対する心理状態の尺度として用いられます。
仕事に対してポジティブで充実した心理状態のこと
ワークエンゲージメントは、次にあげる3つの要素で構成されます。
- 活力:仕事に対して努力ができ、困難な課題でも積極的に取り組める。ストレスを感じにくく楽しみながら仕事に取り組める状態
- 熱意:仕事への関心が強く、誇りを持ち、チャレンジする意欲がある。探究心旺盛で新しい商品やサービスを生み出せる状態
- 没頭:仕事に集中して夢中になり、幸福を感じて時間が早く過ぎる感覚を持つ。仕事が終わっても簡単に頭を切り替えられない状態
ワークエンゲージメントは、これらすべてが満たされている状態を示す概念です。
ワーカホリズム・職務満足感との違い
ワークエンゲージメントと関連する概念として「ワーカホリズム」と「職務満足感」があります。
前述したとおり、ワークエンゲージメントは、仕事に対してポジティブな感情や態度を抱いている状態に対し、ワーカホリズムは、ネガティブな感情に基づく強制的に働かざるを得ない状態との大きな違いがあります。端的に表現すると、「心から働きたい」と感じている心理状態がワークエンゲージメント、「無理してでも働かなければならない」と感じている心理状態がワーカホリズムだと言えます。
職務満足感は、ワークエンゲージメント同様、自分の仕事に対してポジティブな感情や態度を抱いている状態を指します。仕事への態度や認知も高い状態です。
しかし、活動水準すなわち仕事へのやる気は、ワークエンゲージメントより低くなります。
ワークエンゲージメントが重要視される背景
ワークエンゲージメントが注目を集めたのは、2019年に厚生労働省が発表した「令和元年版労働経済の分析」で特集されたことによります。
ワークエンゲージメントの概念自体は、2002年に確立されました。近年注目を集めはじめた背景には「働き方の多様化による人材の流動化」「少子高齢化による労働人口の減少」があげられます。
最近では、副業やテレワークなど多様な働き方が生まれ、終身雇用制度をとる企業も減ってきているのが現状です。労働人口も今後減少することがわかっており、企業を存続させるため優秀な人材の確保が必須となっています。ワークエンゲージメントを高めることで、組織へのエンゲージメントを相乗的に高めることが期待されています。
なお、日本のワークエンゲージメントは世界各国と比較して高いとは言えません。「令和元年版労働経済の分析」の資料でも、調査した国では日本が最下位となっています。今後について、企業においてはワークエンゲージメントの高まる施策を、積極的に実施することが求められるでしょう。
ワークエンゲージメントを高めるメリット
ワークエンゲージメントを高めることで、企業には次のようなメリットが期待できます。
- 生産性の向上
- 従業員のメンタルヘルス対策
- 従業員の離職率の改善
- 顧客満足度の向上
それぞれについて、詳しく解説します。
生産性の向上
従業員のワークエンゲージメントが高まると、生産性の向上が見込めます。
ワークエンゲージメントの高い従業員は、仕事に対して熱意を持って積極的に取り組む傾向が強いです。そのため、業務において高いパフォーマンスが期待できます。また、新規業務や困難な業務にも挑戦する気持ちを持っており、新しい提案でビジネスチャンスを広げられる可能性が高まります。
ワークエンゲージメントの高さが周囲にも影響し、チーム全体が活性化して生産性も向上するでしょう。
従業員のメンタルヘルス対策
従業員のワークエンゲージメントが高まると、ストレスへの耐性ができ、メンタルの不調をおさえられます。
活力に満ちた状態が続いているため、楽しんで業務に取り組める状態となり、ストレスが発生しても早期回復が見込めるでしょう。
従業員の離職率の改善
従業員の離職率も、ワークエンゲージメントによって改善が可能です。
仕事にやりがいや誇りを持って取り組むことで、仕事だけではなく企業へのエンゲージメントも生まれます。組織に対してのポジティブな感情は「企業に貢献したい」といった企業への定着にもつながります。
離職率が下がると、副次的に採用や教育にかかるコスト削減も期待できるでしょう。
顧客満足度の向上
ワークエンゲージメントは顧客満足度にも影響します。
従業員が仕事内容に誇りを持ち、熱意を持って取り組んでいるため、質の高いサービスや製品の提供ができるようになります。また、従業員が満足感を持って働く姿を見ると、顧客や得意先から信頼感や安心感を得やすくなるでしょう。
ワークエンゲージメントを高めると、社内だけではなく顧客に対しても良い影響を与えられます。
ワークエンゲージメントの尺度・測定方法
ワークエンゲージメントを測定する尺度として、次のような方法が取られています。
- UWES
- OLBI
- MBI-GS
それぞれの内容は、次のとおりです。
UWES
UWES(Utrecht Work Engagement Scale)は、ワークエンゲージメントを測るために活用されていることの多い方法です。
「活力」「熱意」「没頭」に関する質問を、17の項目に盛り込みます。質問に5段階もしくは7段階で回答することで、ワークエンゲージメントの測定が可能です。
質問数を9項目に減らした短縮版、3項目の超短縮版も開発されています。
OLBI
OLBI(Oldenburg Burnout Inventory)は、ワークエンゲージメントと対極にある「バーンアウト(燃え尽き症候群)」を測定する方法です。
「疲弊」「離脱」を測定する質問となり、点数が低いほどワークエンゲージメントが高いことを表しています。
MBI-GS
MBI-GS(Maslach Burnout Inventory-General Survey)もOLBIと同様、バーンアウトの測定で使用されます。
「疲労感」「シニシズム(冷笑的な見方や態度)」「職務効力感」を16項目の質問に分けて測定する方法です。
MBI-GSもOLBIと同じく、測定値が低いほど「ワークエンゲージメントが高い」となります。
ワークエンゲージメントを高める方法6選
従業員のワークエンゲージメントを高めると、企業にとって大きなメリットが得られます。具体的な方法はさまざまですが、その中でも代表的な6つの施策をご紹介します。
グループワークの開催
従業員個人が持つ悩みや困りごとに対して、従業員同士で積極的に意見交換できる場を設けることで、職場の活性化やチーム全体のパフォーマンス向上へつなげられます。また、職場の強みを知り、長所を伸ばす効果も期待できます。
ある程度事前に準備しておかないと、スムーズに進められず効果が薄くなる可能性も否めません。事前にテーマや進行役を決めておいて、アンケートやチェックリストで意見をまとめておくと良いでしょう。
CREWプログラムの実施
CREWとは「Civility(礼節、丁寧さ)、Respect(敬意)and Engagement(エンゲージメント) in the Workplace(職場)」の略で、アメリカで開発されました。職場の人間関係にアプローチし、より良い関係性と働きやすい職場風土の醸成を目指すプログラムです。
CREWプログラムは「お互いを知る」「敬意・尊敬について考える」「今後の職場を考える」といったステップを踏み、週1回など開催頻度を決めて、継続してミーティングを実施します。
3ヶ月以上継続してプログラムを実施することで、職場の風土改善・敬意を持った人間関係の構築が期待できます。
メンター制度の導入
メンター制度とは、新入社員や若手社員に対して、年齢や勤続年数の近い従業員が指導者(メンター)となり、1対1の対話をメインとして教育や指導をする制度のことです。
相談しやすい先輩をメンターとすることで、日常の悩みやキャリア相談など気兼ねなく開示してもらえる効果があります。
業務上の指導だけではない人間関係ができるため、早期離職を防ぐ効果があるのもメリットです。指導された従業員だけではなく、メンター自身のワークエンゲージメント向上も見込めるでしょう。
ジョブ・クラフティングの実践
ジョブ・クラフティングとは、仕事に対する関わり方を認知面・行動面で変えることによって、仕事へのモチベーションを高めるアプローチ手法です。仕事へ取り組む方法や、他の従業員との接し方について考えてもらうことで、ワークエンゲージメント向上を目指します。
具体的には、ジョブ・クラフティングの研修を行い、事例を用いたワークによって仕事に対する前向きな考え方を浸透させます。
業務の自動化の推進
AIの活用やExcelのマクロ・VBA、RPAツールの導入などで業務を自動化し、従業員の業務負担を軽減するのも一つの方法です。
時間のかかる事務仕事を自動化して負担を軽減することで、労働時間の短縮が期待できます。労働時間の短縮や休暇の取得促進など、雇用管理体制が整っていると従業員のワークエンゲージメントの向上に寄与します。
人事評価の見直しと改善
人事評価制度の見直しや改善もワークエンゲージメントを考える上で重要なポイントと言えます。恣意的な評価や基準があいまいな評価は排除し、従業員の努力や成果が正当に評価されるよう、人事評価に公正な基準を設定するようにします。
また、評価に対して丁寧なフィードバックも大切です。フィードバックの内容によって業務への取り組み方が改善され、モチベーションアップにつなげられます。
「頑張ったら認めてもらえる」と思える評価方法にすることで、向上心やチャレンジ精神を鼓舞することが期待できるでしょう。
ワークエンゲージメントを高めて生産性の向上や離職率の改善を図ろう
ワークエンゲージメントを高めて優秀な人材を確保することが、働き方の多様化や労働人口の減少にともない、企業では重要視されてきました。従業員のワークエンゲージメントを高めると企業の受けるメリットも大きいため、積極的な取り組みが求められます。
ワークエンゲージメントを高めるために企業がとれる施策はさまざまあります。自社にあった方法を見つけて従業員のエンゲージメント向上を図ることが、企業の生き残り策として大切だといえるでしょう。
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