クレドの意味とは?導入するメリット・作成手順・注意点について徹底解説
2023.06.28
ラテン語で「志」や「約束」を意味する「クレド」は、企業のコンプライアンス経営において重要な概念として用いられます。
実際に企業経営の考え方として取り入れるためには、クレドに関する知識を詳細に把握することが大切です。
本記事では、クレドの定義をはじめ、企業に導入するメリットを詳しく解説します。加えて、近年重要視されるようになった背景や、実務に導入する手段についても合わせてご紹介します。
クレドとは?
まず、クレドとは何を示す言葉なのかを把握することが大切です。この項目ではクレドの基礎的な知識について解説します。
企業に属する従業員が心がける心情や行動指針
クレドは、企業がコンプライアンス経営のために必要な心がけや心情、行動指針を包括した言葉です。もともとはラテン語で「Credo」と表記し、信条や志、約束といった意味を持ちます。
クレドは企業が従業員に対して、あるべき姿勢や言動を具体的に示すために用いられます。
適切なクレドの運営指針を策定することで、価値観や倫理上の課題を発見し、実務的な解決策を導き出すことができます。クレドに基づくルールを従業員に周知することで、正しいコンプライアンス経営の在り方を示すこともできるでしょう。
企業理念との違い
企業理念とは、企業が目指す存在意義や目標、理念的な価値観などを総合的に示したもので、企業が長期的に追求するべき方向性を示します。企業の存在意義や事業目的を明確にし、社会的責任を果たすことを表明することが多く、従業員やステークホルダーに向けたものが多いです。
一方、クレドは、企業の社員や関係者が共有すべき信条や行動規範を示したものです。企業文化や品質管理、お客様サービスなど、特に重要視するべき事項を示し、従業員が企業の価値観を共有し、実践するための具体的指針となります。
つまり、企業理念は企業全体が共有する長期的な目標や方針であり、クレドは従業員や関係者が共有する信条や行動規範という点で異なります。企業理念は目指すべき将来を示すものであり、クレドは今から実践すべき価値観を示すものです。両方が企業文化や組織風土を形成する上で重要であり、それぞれが従業員のモチベーションや企業のブランドイメージ形成に大きく貢献することが期待されています。
パ-パスとの違い
パーパス(Purpose)は「目的」「意図」という意味を持つ言葉です。ビジネスでは「存在意義」を指します。
クレドでは「従業員自身がどのように行動すればよいのか」といった行動指針を示しますが、パーパスは「自社は何のために存在するのか」「なぜその事業をおこなうのか」といった存在意義を表すのが特徴です。
企業におけるクレドの重要性
なぜ企業のクレドが重要視されるようになったのか、その一因として2000年代はじめに社会問題ともなった企業の不祥事があげられます。
2000年代初頭、大手企業による数々の汚職や不法行為などの不祥事が頻発し、処罰や株価による経営破綻に至る企業が世界中に現れました。
日本でも食品偽装や金融不祥事が発覚するケースが相次ぎ、社会に大きな衝撃が走りました。このような営利主義から生じた不法行為を防ぐため、2006年には金融商品取引法や公益通報者保護法といった、企業の内部統制を義務づける法律が施行されました。
しかし、多くの企業は法律に定められた義務を守る以前に、自らの倫理観そのものを改めなければ根本的な解決には至りませんでした。企業にとって利益の追求は重要ですが、それが度を超えてしまうことで倫理観の欠如を招く恐れがあります。
こういった背景から、クレドという考え方が注目され始めました。従業員に対し、企業の目的や社会的責任・存在意義に基づく倫理観を浸透させることができれば、不祥事を未然に防ぐことができると考えたのです。やがてクレドの考え方は世界的に広まり、現在も重要視されています。
クレドを導入するメリット
クレドの導入で考えられるメリットは、おもに次の4つです。
- 従業員の意識改革につながる
- 従業員のモチベーション向上が期待できる
- 他社との差別化ができる
- 人材育成の手段になる
それぞれの詳細を順番に解説します。
従業員の意識改革につながる
クレドを共有することで、従業員間の信頼関係が深まります。同じ目標に向かって行動することで、従業員は互いに理解し合い、助け合うことができるようになります。また、クレドが示す行動指針に基づいた行動を取ることで、従業員間のコミュニケーションがスムーズになります。
従業員同士の信頼関係の構築とコミュニケーションの活性化は、やがて社内全体の意識改革につながります。従業員の日々の働きぶりにおいて、どのような振る舞いや心掛けをすべきか業務に臨む姿勢をはじめ、適時自己を見直すよう行動が促されていきます。
従業員のモチベーション向上が期待できる
クレドの導入は、従業員のモチベーションを高め、仕事に取り組む意欲を引き出すことができます。従業員が企業の目的や価値観に共感し、それに沿って行動することで、仕事へのやりがいや達成感を抱き、モチベーションが高まります。
また、クレドに基づいた業務や活動を行うことで、従業員は自分たちの仕事が企業の目的に貢献していることを実感しやすくなります。
その結果、仕事に対するやりがいや意欲が高まり、モチベーションが向上していくでしょう。
他社との差別化ができる
市場競争が激化する中で、商品やサービスの差別化が困難になっています。このような中で、クレドを掲げることで、顧客は単に商品やサービスだけでなく、企業の価値観や使命に共感し、企業へのイメージアップを期待できます。これにより、企業の存在価値を高め、競合他社との差別化を図ることができるでしょう。
企業の独自性を強化すれば、採用活動でも有利に働くことが期待できます。競合他社よりも優位に立つことができれば、求職者にとっても魅力的に映るでしょう。
人材育成の手段になる
クレドに基づいた研修やトレーニングを実施することで、従業員のスキルアップや意識改革が促進されます。クレドを通じて、従業員が企業の目的や価値観に共感し、自らの行動に反映させることで、組織内における意思決定スピードが早まり、自ら考え行動する人材を育成することができます。
従業員が企業の価値観に共感し、「自分自身がこの会社で成長できている」と感じることで、企業に対する帰属意識が育まれ、長期的な雇用関係を築くこともできるでしょう。
クレドの作成手順
クレドの作成手順は次のとおりです。
- クレドの作成に関わるメンバーの選出
- 大まかなスケジュールの決定
- 経営陣と従業員へのヒアリング
- ヒアリング結果の集約と従業員への周知
それぞれの詳細を順番に説明していきます。
1.クレドの作成に関わるメンバーの選出
まずはクレドを作成するためのチームを結成する必要があります。作成メンバーを各部署から選出しましょう。
企業全体を客観的に考察しながら作成することが求められるため、経営者層、管理職層、一般従業員層それぞれからメンバーを選任するのがポイントです。
2.方向性とスケジュールを設定する
チームを結成できたら、方向性やスケジュールを設定しましょう。
まずは、企業の経営理念やビジョンを再確認し、その上でクレドに盛り込む方向性を決定します。具体的には、企業が重視する価値観や社会的使命、顧客に提供する価値やサービスに関する信念などが含まれます。
また、いつまでに従業員に対するクレドを周知させるのか期限を区切って作成を進めましょう。クレド完成までの工程においては、社内ヒアリングを含む情報収集が必要となり、作成中に予期せぬ問題が発生することもあるため、スケジュールは柔軟に調整できるようにしておくことが望ましいです。
3.経営陣と従業員へのヒアリング
経営陣の意見を聞くことも重要です。経営陣は企業のビジョンや方針を詳細に把握しているため、クレド作成の初期段階で経営陣の意見を取り入れる必要があります。
次に、従業員の声を集めます。ヒアリング方法は、アンケートやインタビュー、ワークショップなどがあります。また、社内コミュニケーションツールを活用して、より多くの従業員の声を集めることも可能です。
ヒアリングの際には、従業員の意見を積極的に取り入れることが大切です。そのためにも経営陣や従業員など、参加者の背景や立場による意見の偏りをなくせるように、個々のフィードバックを匿名で収集することが有効です。
4.ヒアリング結果の集約と従業員への周知
ヒアリング結果を集約する際には、どのような考え方や価値観が多く出てきたのか、傾向を把握しましょう。集約された意見を分析し、共通する価値観や考え方を抽出します。チーム内で議論を重ねながら、価値観や考え方をまとめ、クレドの文言に落とし込んでいきます。
集約されたクレドが経営陣に承認されたら、従業員に共有します。社内のコミュニケーションツールや社内報、社内メール、オンラインで閲覧できる説明資料などを活用して、クレドを従業員に周知していきます。
クレドを導入する際の注意点
ここからは、クレドを導入する際の注意点を3つピックアップしてご紹介します。
- 従業員と導入理由・目的を共有する
- 実現可能な範囲を見極める
- ボトムアップで作成・運用を進める
それぞれ詳しく解説します。
従業員と導入理由・目的を共有する
従業員がクレドの導入理由や目的を理解できないまま、クレドを導入しても効果が得られない可能性があります。
クレドの導入にあたっては、従業員に対してなぜクレドが導入されるのか、どのような目的があるのかを説明することが必要です。その際には、クレドが企業の理念やビジョンを体現するものであることを伝え、従業員の理解が得られるように取計らいましょう。
従業員がクレドを理解し、行動指針に沿った行動ができるよう、定期的な研修やミーティングなどのフォローアップの機会を設けることも効果的です。従業員がクレドに基づいた行動の仕方や考え方が身につけられるように、実践的なトレーニングを行います。
実現可能な範囲を見極める
クレドには、実現不可能な高い理想ばかりを盛り込むことはできません。従業員があまりにも共感できない、普段行っていないことや現場で対応できない内容となっていないか、注意して確認する必要があります。もし現実離れしたクレドを掲げてしまうと、「言っていることとやっていることが違う」と社内から批判が殺到し、かえって逆効果となる可能性もあります。
そのため導入前には、実現可能な範囲内のクレドとなっているか、しっかり社内で吟味することが重要です。実際にクレドを実践することを念頭において、従業員に無理な負荷を与えることなく、企業の現状や導入目的を踏まえながら、実現可能な範囲を見極めて設定することが大切となるのです。
ボトムアップで作成・運用を進める
クレドには、従業員の自発性を促進させるという効果があります。その効果を最大化させるためにも、経営陣だけではなく、従業員からのアイディアを尊重し、積極的に取り入れて作成することが重要です。
そうすれば、役職関係なく一人ひとりの従業員がクレドに共感しやすくなるので、やがてチーム全体ひいては組織全体の一体感が増し、ボトムアップを実現させることができます。そのためにも、クレドの普及や啓蒙活動を社内で徹底させることを意識しながら運用していきましょう。
自社にクレドを導入して、従業員の意識改革を実現させよう
クレドとは、企業のコンプライアンス経営に求められる心がけや心情のこと。企業経営において倫理性が重要視される近年では、特に欠かせない取り組みの一つです。クレドに基づく行動指針を従業員に浸透させることで、自発的な意識改革を促すことができます。
クレドを導入する際は、目的と理由を従業員と共有し、具体的な行動に落とし込むことができるよう、共感しやすいクレドの作成が重要です。そのためには、徹底した社内のヒアリングと従業員の意見を反映させたクレドが必要となります。従業員が実現しやすい明確な行動指針を提示できるようにしましょう。
従業員とともにクレドを作り上げ、運用していくことで、組織全体がより一体感を持ち、目標達成に向けた行動を共有することができます。
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