

近年、新卒採用では人材獲得競争が激化しています。優秀な人材を獲得するには、競合他社との差別化を図り、選ばれる企業になることが重要です。
採用パンフレットは自社の魅力や強みを発信するツールとして、積極的に活用されています。
本記事では、会社案内との違いや、採用活動におけるメリット、掲載すべきコンテンツ、制作のポイントなどを分かりやすく解説します。
新卒採用パンフレットとは
新卒採用パンフレットは、企業が自社の魅力を学生に伝え、企業理解や応募を促すために制作する採用ツールです。
学生はパンフレットの情報から企業への理解を深め、自分に合った企業か判断します。そのため、企業の魅力を最大限に引き出し、ターゲットの学生に響く内容にすることが大切です。
会社案内パンフレットとの違い
新卒採用パンフレットと会社案内パンフレットは、どちらも企業の情報を伝えるためのツールですが、目的とターゲットが異なります。
それぞれの違いは次の通りです。
新卒採用パンフレット | 会社案内パンフレット | |
目的 |
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ターゲット |
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掲載内容 |
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採用ホームページとの違い
採用ホームページとパンフレットでは、採用ターゲットへのアプローチ方法が異なります。
それぞれのメリット・デメリットは次の通りです。
新卒採用パンフレット | 会社案内パンフレット | |
メリット |
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デメリット |
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効率的な採用活動を成功させるには、両媒体の強みを活かした連携が重要です。
新卒採用パンフレットが必要な理由
従来の採用活動では、会社案内を使うのが主流でしたが、近年は新卒採用パンフレットを制作する企業が増えています。
これは、会社案内だけでは伝えきれない、新卒採用に特化したメッセージを学生に届けるためです。
新卒採用パンフレットが必要な理由について詳しく解説します。
働く魅力を具体的に伝えられる
採用パンフレットは、仕事の魅力やキャリアパスを具体的に学生に伝えることに特化したツールです。
一方、会社案内は事業内容や財務情報が中心のため、働くことにフォーカスした情報を扱いにくい傾向があります。
採用パンフレットに仕事内容やキャリアパスなどを掲載することで、学生は働くイメージをより具体的に持てるようになるでしょう。
企業の文化や雰囲気を伝えられる
募集要項や事業内容だけで企業の文化や雰囲気を伝えるのは難しいものです。しかし、採用パンフレットなら企業独自の社風や文化、職場の雰囲気などを伝えられます。
オフィス環境や社員の働く様子、社内イベントの写真を掲載することで、学生は職場の雰囲気を視覚的に訴求できます。
また、福利厚生や研修制度の具体的な内容を示すことで、企業の働きやすさや社員の成長を支援する姿勢をアピールすることも可能です。
他社との差別化を図れる
人材獲得競争が激化しているなかで、優秀な人材を獲得するには選ばれる企業でなければなりません。
採用パンフレットにターゲットの学生層に響くメッセージやコンテンツを盛り込むことで、他社とは異なる独自の魅力や強みを効果的に伝え、差別化を図ることができます。
特に、社員インタビューや座談会といった働き方や社員の様子がわかる情報は、他社と差別化を図りやすいでしょう。
説明会やイベントで活用できる
新卒採用パンフレットは、合同企業セミナーや自社説明会、インターンシップなど、さまざまな採用イベントで活用できる有効なツールです。
パンフレットを活用することで、合同説明会などの限られた時間でも、効率的に情報を伝えられます。
また、学生が自宅でじっくりと内容を確認したり、家族や友人と相談したりする際の参考資料としても役立つでしょう。
新卒採用パンフレットの制作事例5つ
新卒採用パンフレットは、企業の魅力を学生に伝える重要なツールです。
学生の心に響くデザインやコンテンツで成功している制作事例を5つ紹介します。
株式会社カツロン

体裁 | A4縦8ページ |
ターゲット | 全学部全学科 |
狙い・利用方法 | 興味喚起・理解促進 |
株式会社カツロンは、1949年創業の老舗プラスチック製品メーカーです。自社の製品が社会のさまざまなところに使用される一方、一般消費者からは認知度が低いことが課題でした。
それを解決するため、実際どこで製品が使われているかを表すマップや、モノづくりの流れ表した図を作成。デザインも親しみやすくわかりやすいように工夫されています。
※参考:株式会社学情「株式会社カツロン 採用パンフレット」
一般社団法人大阪ファイン

体裁 | A4縦12ページ |
ターゲット | 理系学生 |
狙い・利用方法 | 興味喚起・理解促進 |
一般社団法人大阪ファインは、大阪府を中心に複数の保険薬局を運営している法人です。薬学部の学生に向け、イベントなどで配布するパンフレットとして制作しました。
法人の想いに共感する学生を広く募るため、シンプルなデザインを基調とし、詳細な情報を深く読み込ませる工夫を凝らしています。
※参考:株式会社学情「一般社団法人大阪ファイン 採用パンフレット」
株式会社actcle

体裁 | A4縦8ページ |
ターゲット | 全学部全学科 |
狙い・利用方法 | 企業理解・母集団形成 |
株式会社actcleは、主にセールスプロモーション事業で、ウォーターサーバーの販売代行を行っている企業です。
パンフレットのカラーは、企業ロゴのオレンジ・黄色・黒を採用。明るく和気あいあいとした会社の雰囲気を伝えるため、社員の表情豊かな画像を中心にレイアウトしています。
※参考:株式会社学情「株式会社actcle 採用パンフレット」
丸藤シートパイル株式会社

体裁 | A4縦8ページ |
ターゲット | 全学部全学科 |
狙い・利用方法 | 興味喚起・理解促進 |
丸藤シートパイル株式会社は、建設資材の専門商社です。
地下エンジニアリングという企業コンセプトを尊重しながら、事業理解を促進するため、学生にも馴染みのある実績をより多く取り入れたデザインに仕上げています。
※参考:株式会社学情「丸藤シートパイル株式会社 採用パンフレット」
株式会社フロニカ

体裁 | A4縦4ページ |
ターゲット | 全学部全学科 |
狙い・利用方法 | ブランディング構築 |
株式会社フロニカは、リネンサプライとクリーニング事業を展開する企業です。
主要事業であるクリーニングの清潔感を表すため、ブルーとホワイトを基調としました。また、社名を筆記体で表現することで、個性を尊重し、柔軟な働き方を重視する社風を効果的に伝えています。
※参考:株式会社学情「株式会社フロニカ 採用パンフレット」
新卒採用パンフレットを制作するメリット

新卒採用パンフレットは、企業の魅力を伝えるのに効果的な手段です。独自の強みを発信することで、他社との差別化を図り、優秀な人材との出会いを創出します。
具体的にどのようなメリットがあるのか、詳しく解説していきます。
採用のミスマッチを防ぐ
新卒者が入社前に抱いていた仕事への期待と、実際の業務内容や企業文化との間にギャップが生じると、早期退職につながる可能性があります。
株式会社学情の調査によると、社会人経験3年未満の第二新卒の転職理由は「もっとやりがい・達成感のある仕事がしたい(35.0%)」が最多であることからも、企業理解の重要性が伺えます。
採用のミスマッチを防ぐには、採用パンフレットの活用が有効です。独自のコンテンツや写真、データから企業理解を深められ、入社後のギャップを軽減できます。
※参考:株式会社学情「20代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(転職理由)2024年9月版」
採用ブランディングを強化できる
採用ブランディングは、自社の魅力を戦略的に伝え「この会社で働きたい」と求職者に印象づける取り組みを指します。採用パンフレットも、採用ブランディングを強化するための重要なツールです。
質の高いデザインや魅力的なコンテンツは、学生に「こんな素敵な環境で働けるのか」とポジティブな印象を与えます。
また、独自の情報を積極的に発信することで、競合他社との差別化にもつながるでしょう。
カルチャーフィットの高い採用が期待できる
新卒採用を成功させるには、学生の能力や学歴だけでなく、カルチャーフィットにも注目することが重要です。
いくら優秀な人材であっても、カルチャーフィットが低いと本来の能力を発揮できなかったり、早期退職につながったりする可能性があります。
採用パンフレットは、募集要項だけでは伝えきれない、企業のビジョンや価値観、仕事に対する思いといった魅力を伝えられるため、カルチャーフィットの高い採用が期待できます。
後から資料を確認できる
合同企業セミナーや会社説明会は多くの情報が一度に提供されるため、学生が内容を深く理解することは難しいかもしれません。
疑問や不安が残ったままだと、時間とともに志望度が下がってしまう可能性があります。
そこで、採用パンフレットを活用することで、学生が自宅に帰った後にも企業の魅力や強みを再確認できます。
また、家族に説明する際の資料としても役立つでしょう。
新卒採用パンフレットの掲載内容
新卒採用パンフレットは、学生にとって企業の「顔」となる重要なツールです。
応募につなげるためには、ただ情報を羅列するだけでなく、戦略的に内容を構成し、独自の魅力をアピールしなければなりません。
どのような内容にすれば良いか、具体的に解説していきます。
企業概要
企業概要には、次のような内容を掲載しましょう。
- 企業理念・ビジョン
- 代表あいさつ
- 会社概要
- 沿革
代表あいさつでは、学生が「入社後にどうなれるのか」「どんな成長ができるのか」といった未来への期待感を抱けるような、ポジティブなメッセージを掲載するのが好ましいです。
事業内容・仕事内容
事業内容・仕事内容は、学生が入社後の働き方を具体的にイメージできるように詳しく説明します。
具体的な掲載内容は次の通りです。
- 主要事業の紹介
- 仕事内容・職種紹介
仕事内容や職種を紹介する際は、業界特有の専門用語やカタカナ言葉は避けましょう。もし使う場合は、分かりやすい言葉で解説を加えるか、具体例を挙げて説明すると理解しやすくなります。
社員インタビュー・座談会
社員インタビューや座談会は、企業の「生の声」が聞ける貴重なコンテンツです。
若手からベテランまで幅広い層の社員に参加してもらうと、さまざまな視点からの声が集まり、学生は入社後の働き方やキャリアパスを明確にイメージしやすくなります。
社員インタビュー・座談会では、次のような項目を設けると良いでしょう。
- 具体的なエピソード
- 失敗談や乗り越えた経験
- 会社の雰囲気・人間関係
- 入社前後のギャップ
キャリアパス
採用パンフレットにキャリアパスを掲載することで、学生が入社後の自分を具体的に想像しやすくなります。
単に昇進モデルを示すだけでなく、そこで得られる経験やスキルの広がりを伝えるのが効果的です。
キャリアパスを掲載する際のポイントは次の通りです。
- 複数のキャリアパス例を示す
- 先輩社員の事例を紹介する
- 教育研修制度について説明する
- 評価制度について説明する
社風・企業文化
オフィスの写真や社内イベントの様子などを掲載することで、企業の社風や文化を伝えられます。
真剣に仕事に取り組んでいる様子だけでなく、休憩中に談笑している姿や、社内イベントを楽しんでいる写真も取り入れましょう。
そうすることで、学生は企業の表面的な情報だけでなく、そこで働く人々の温かさや、日々の生活が想像できるリアルな社風・企業文化を感じ取れます。
福利厚生
採用パンフレットに福利厚生を掲載する際は、単に制度を羅列するのではなく、それが社員にどう役立つのかを伝えることがポイントです。
具体的な利用例やエピソードを用いると学生もイメージしやすいでしょう。また、有給取得率や育児休業取得率など数字で示すことで、透明性と信頼性が高まります。
福利厚生は、企業が社員を「人財」として大切にしているかを示すバロメーターでもあります。「社員を思う気持ち」が伝わるように工夫することが大切です。
採用情報・募集要項
採用パンフレットに採用情報や募集要項を掲載することで、学生はWebサイトを探したり、問い合わせたりする手間が省けます。
これにより、企業は説明や問い合わせの負担を軽減でき、空いた時間を選考や丁寧なフォローアップにあてられるのもメリットです。
採用情報や募集要項のページには、次の情報を掲載しましょう。
- 募集職種
- 募集人数
- 応募資格
- 選考フロー
- よくある質問(FAQ)
- 応募方法・問い合わせ先
新卒採用パンフレットの制作ポイント

効果的なパンフレットを制作するには、単に情報を羅列するだけでなく、戦略的な視点と学生目線の工夫が重要です。押さえておくべき制作ポイントについて詳しく解説します。
求める人物像を明確にする
「どのような学生に、自社のパンフレットを読んで、応募してほしいのか」を具体的に定義することが大切です。
ターゲットが明確でないと、曖昧な内容のパンフレットになってしまう可能性があります。
求める人物像を明確にする際は、学生のスキルや経験だけでなく、性格や志向性などパーソナリティの部分も詳細に設定しましょう。
学生のニーズを把握する
ターゲットの学生がどのような情報を求めているのか把握することで、本当に知りたい情報に絞り込み、効果的にアプローチできます。
株式会社学情の調査によると、学生がミスマッチを防ぐために最も重視する項目は「会社の雰囲気・カルチャー(69.5%)」で、次いで「仕事内容・配属先(65.2%)」でした。
採用パンフレットの内容を精査する際は、このような学生のニーズに沿ったコンテンツを積極的に取り入れていきましょう。
※参考:株式会社学情「2025年卒学生の就職意識調査(ミスマッチ)2024年2月版」
学生が重視しているポイントを取り入れる
学生が企業選びの際に重視しやすいポイントは次の通りです。
重視するポイント | 掲載内容 |
給与・福利厚生 | 具体的な数値や利用例 |
やりがい・達成感 | 具体的なプロジェクト例や社員の声 |
スキルアップ | 研修制度・資格取得支援・キャリアパスなど |
社風・雰囲気 | 社員インタビュー・座談会・オフィス写真 |
ワークライフバランス | 残業時間・有給取得率・育児休業制度など |
企業の安定性・将来性 | 業界での立ち位置・今後の展望・経営理念など |
トーン&マナーを合わせる
トーン&マナー(トンマナ)とは、ブランドのデザインに一貫性を持たせることです。
設定したコンセプトに基づき、写真の雰囲気や言葉遣い、デザイン、色使いなどを統一することで、パンフレット全体に一貫性が生まれ、学生に強い印象を与えられます。
トンマナがずれないように、事前に使用するフォントやキーカラー、文章の口調などを具体的に定めておきましょう。
ストーリーテリングを活用する
ストーリーテリングとは、単なる情報を羅列するのではなく、物語の形式でメッセージを伝える手法です。
感情に訴えかけるストーリーを盛り込むことで、学生の興味関心を引きつけ、志望意欲の向上といった効果が期待できます。
具体的には、次のようなコンテンツがあります。
社員の声 |
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プロジェクト |
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企業の歴史と未来 |
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ネガティブな情報も取り入れる
企業の魅力や強みを伝えたいあまり、良い面だけを見せようとすると、学生に「本当かな?」「何か隠しているのでは?」と不信感を抱かせてしまう可能性があります。
これは、入社後のミスマッチにもつながりかねません。
たとえば、「繁忙期は月に〇時間程度の残業が発生する」や「最初の数年間は地道な〇〇作業が多い」といった、企業の課題や大変な側面も開示しましょう。
そうすることで、企業としての透明性や誠実さを伝えられます。
新卒採用に特化した会社に依頼する
新卒採用パンフレットの制作は、新卒採用に特化した会社へ依頼するのがおすすめです。
一般的な制作会社とは異なり、学生の心理や企業のニーズを深く理解しているため、質の高いパンフレット制作を期待できます。
株式会社学情は、就活サイト「Re就活キャンパス(旧あさがくナビ)」をはじめ、就職・転職情報サービスを幅広く展開しています。
採用ツールの制作も手掛けており、新卒採用のノウハウを持った専門スタッフが企業の魅力を最大限に引き出す採用パンフレットを制作します。
新卒採用パンフレット制作なら、株式会社学情にご相談ください
新卒採用パンフレットは、学生が企業理解を深めるための重要なツールです。
社員のリアルな声や職場の雰囲気、そして時に企業の課題を正直に伝えることで、学生は入社後の自分を具体的にイメージできます。
効果的な採用パンフレットを制作するには、求める学生像を明確にし、彼らが知りたい情報を的確に伝えることが重要です。
株式会社学情は、これまで数多くの新卒採用をサポートしてきました。その過程で培ってきたノウハウを活かし、企業の採用課題に最適な採用ツールをご提案します。
採用パンフレットの制作をご検討の方は、株式会社学情へお問い合わせください。

株式会社学情 エグゼクティブアドバイザー(元・朝日新聞社 あさがくナビ(現在のRe就活キャンパス)編集長)
1986年早稲田大学政治経済学部卒、朝日新聞社入社。政治部記者や採用担当部長などを経て、「あさがくナビ(現在のRe就活キャンパス)」編集長を10年間務める。「就活ニュースペーパーby朝日新聞」で発信したニュース解説や就活コラムは1000本超、「人事のホンネ」などでインタビューした人気企業はのべ130社にのぼる。2023年6月から現職。大学などでの講義・講演多数。YouTube「あさがくナビ就活チャンネル」にも多数出演。国家資格・キャリアコンサルタント。著書に『最強の業界・企業研究ナビ』(朝日新聞出版)。