構造化面接とは、臨床心理学におけるアプローチのひとつで「自社の採用要件を明確にした上で、あらかじめ評価基準と質問項目を決めておき、マニュアル通りに実施していく」という面接手法です。応募者全員に一貫して同じ質問を行い、明確な基準に従って回答を評価することで、面接担当者の主観による評価のばらつきが出にくく、より公正に応募者を評価することが目的でGoogle等の有名企業でも導入されています。
オンライン面接において、構造化面接は必須。
新型コロナウイルス感染症の拡大は企業の採用活動にも影響を与え、オンライン面接を実施する企業が増えています。人事担当者や面接官の声を聞いてみると「オンライン面接であれば対応できるという求職者が増え、この時期でも選考を進められて機会損失を防げた」というポジティブな意見があり、求職者からも「現職や家庭との両立を考えると、オンライン面接のほうがありがたい」「外出を避けたいので、自宅から面接できるのは安心」と好意的に受け止められているようです。
しかし一方で、画面越しの面接では、「求職者の表情や目線、緊張の度合い等を読み取りづらく、選考・見極めが難しい」という面接官も少なくありません。また面接官の主観によって求職者の評価が大きく変わり、入社後にミスマッチになってしまったり、経験の浅い社員が面接を担当する場合、評価の基準が分からず合否を判断できないケースも多いようです。そのような状況を回避するために有効な手法として、構造化面接が注目されており、当サイトの1周年スペシャルコンテンツである動画「コロナで変わる採用のスタンダード」でも、株式会社人材研究所代表取締役社長の曽和利光さんが「オンライン面接には構造化面接が適しており、評価制度が高まるだけではなく、求職者に対して好印象を与えることができる」として、「オンライン面接において構造化は必須」だと述べられています。
何を評価するのかだけでなく、どのように評価するのかを設定することが大切。
構造化面接はオンライン面接だけでなく、以下のようなニーズや課題を抱えている企業にとって効果的です。
◆面接時間を短縮したいがなかなか実現できていない。
◆面接後の評価について、意見が割れることが多い。
◆採用目標達成のために基準に満たない人材にも内定を出している。
◆早期離職者が多い。
これらの問題が生じる背景にある課題は2つあります。1つ目は、求職者を見極める判断基準が曖昧であること、2つ目は、面接官が主観で質問と評価を行っていることがあげられます。具体的には面接の多くの時間を想定質問や誘導質問※に費やしていたり、面接官がハロー効果に引きずられて評価を行っているケースが多く見られます。
※想定質問/候補者が事前に準備できる質問 例:「自社の志望理由を聞かせてください」
※誘導質問/企業側が期待している答えが相手に伝わってしまう質問 例:「地方への転勤は可能ですか」
では、実際にはどのように行えば、効果的な構造化面接を行うことができるのでしょうか?
STEP1. 自社の採用基準を明確にし、評価項目・評価基準を設定する。
面接では、具体的に何を評価するのかの評価項目だけでなく、どのように評価するのかの評価基準を設定することが大切です。評価項目・評価基準を設定するには、自社がどのような人材を採用したいのか、採用基準を具体的かつ明確にする必要があります。
STEP2.人材要件に合わせて質問を作る。
どんな人材を採用したいのか決めたら、求職者がその人材要件に当てはまるかを確認するための質問を考えていきます。例えば「計画力」という評価項目を採用における重要指標とした場合には、「プロジェクト計画段階の設計が功を奏して、成果を収めた経験についてお聞かせください」等、求職者が持つ計画力についての話題を促します。
STEP3.フォローアップとなる質問をして掘り下げる。
2.で行った起点となる質問からずれないよう、掘り下げるための質問を用意しておきます。失敗した話や苦労した話があれば、具体的にどんな問題があると考えたのか、いつ問題であると気がついたのか、どのような解決策で対応したのか、プロジェクト内での役割は何か等、評価項目・評価基準をより掘り下げていきます。
STEP4.評価項目ごとに基準を設定し、合否の判定を行う。
面接後は、最初に決めた評価項目に沿って4〜5段階で評価できるように基準を策定していきます。
このとき、それぞれの評価項目に対して、「A~Dのうちできることが2つ以下ならレベル1」「AとBとCができていればレベル3」と基準例を詳しく決めておくと公平な判断がしやすくなります。そして、求職者の能力がそれぞれの項目でどの段階なのかを判定していきます。
Googleの構造化面接は「行動面接」と「状況面接」を組み合わせて設計。
Googleの構造化面接は、「行動面接」と「状況面接」の2つを組み合わせて設計されています。
【行動面接】
求職者の過去の行動を掘り下げる質問を投げかけていく面接のことです。行動は、求職者の資質や性格から生まれるもので、行動を分析すれば、その背後に隠れている真の能力や志向性、誠実さを測ることができます。例えば、「あなたがこれまでの仕事でもっとも苦労した経験を教えてください」といった質問を皮切りに、当時の状況(Situation)、そのとき抱えていた課題(Task)、どのような行動(Action)をとったか、どのような成果(Result)が出たのか、順に掘り下げて聞いていきます。行動面接はこれらのアルファベットの頭文字を取って「STAR面接」とも呼ばれています。
【状況面接】
「もし、○○な状況にあったらどうしますか」というように、面接官側で設定した架空の状況に対して、どのように考え、行動するのかを答えてもらうものです。こちらも行動面接と同様に、具体的な話を掘り下げて聞いていくことにより本音を引き出し、求職者の本質に迫ることができます。例えば「もしあなたか弊社の事業のマーケティング責任者になったとしたら製品の認知を倍増にするためにどのような取り組みをしますか。これまでの経験を踏まえて教えてください」等、教科書通りの回答ではなく自身の経験を元にした回答をしてもらうことで、これまでどのような思考プロセスで意思決定をしてきたかを知ることができます。
Googleの元人事担当上級副社長のラズロ・ボック氏は米メディア「WIRED」の署名記事で、「採用面接の目的は、求職者が仕事に就いたときのパフォーマンスを予測すること。そのためには、面接では一つの方法に縛られるのではなく、いくつかの方法(構造化面接法のほか、一般的な能力認知テストや責任感や誠実度を測る検査、リーダーシップ検査等)を組み合わせるほうが効果的ということが、過去の研究からわかっている」と述べています。構造化面接の導入を考えている場合は、メリットとデメリットを十分把握した上で、必要に応じて他の方法と織り交ぜることも視野に入れて検討されてはいかがでしょうか。
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