効率的に採用活動をするには、適切な時期を見極めることが大切です。適切な時期に採用活動を行うと、自社への応募数が増え、優秀な人材を確保できる可能性が高まります。
本記事では、中途採用にベストな時期や繁忙期・閑散期などを解説します。それぞれの時期に採用活動をするメリットや注意点も併せて解説するので、人材を確保するためにお役立てください。
中途採用にベストな時期はいつ?
採用のしやすさという観点で見ると、求人数が少なく求職者が多い時期は、企業にとって採用活動に適したタイミングです。このような時期は採用競合が少なく、自社の求人情報が求職者に届きやすくなります。
さらに求職者が多いほど応募数が増える可能性があるため、優秀な人材を確保できる確率も高まります。しかし求人数や求職者数は日々変動しており、採用市場は景気や社会情勢の影響も受けるため、どの時期がベストとは言えません。
それでも、厚生労働省の有効求人倍率を参考にすると年間を通しての傾向が見えてきます。また、業種別の有効求人倍率も参考にすると、自身の属している業界における特徴もみえてきます。
※参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/114-1.html)、ハローワーク情報サイト~ハロワのいろは~「職業別の有効求人倍率」(https://www.hwiroha.com/syokugyoubetsu_yuukou_kyuujinn_bairitsu.html)
採用市場には、求職者が増える繁忙期と落ち着く閑散期があります。どちらの時期にも、採用活動を進める上でのメリットとデメリットがあります。採用活動を効率的に進めるには繁忙期と閑散期を把握し、戦略や採用スケジュールを見極めることが大切です。
中途採用の繁忙期とは
一般的に中途採用の繁忙期にあたる時期は、1年のうちに複数回あります。繁忙期は、求職者と求人数が増える時期です。繁忙期だと考えられている時期にはそれぞれ理由があるため、採用活動を始める前に把握しておきましょう。
繁忙期にあたる時期
中途採用の繁忙期は、1~2月・6~7月・9~10月です。
新年度を迎える直前の1~2月
1~2月は新年度を迎える直前になるため、求職者が増えやすい時期です。年度末の3月に現在の職場に区切りをつけ、4月入社を目指そうと考える人も少なくありません。
一方、企業側でも年度末で退職する社員の欠員を補充するために、採用活動を始めます。新年度が始まると新卒社員の対応に追われるため、年度末までに中途採用を終わらせようとする動きがあります。
夏賞与のタイミングと重なる6~7月
夏の賞与が支給される6~7月は「賞与を受け取ってから退職しよう」と考える人も多く、求職者が増える時期です。
9月入社に向けて動く求職者を狙い、6~7月頃に中途採用を始める企業もあります。6月を過ぎると、オリエンテーションや各種手続きなどの新卒社員への対応が一段落するため、中途採用活動に注力しやすい時期です。
上半期と下半期の境目の9~10月
9~10月は、上半期から下半期への移行や決算などの節目を迎える企業が多い傾向にあります。同時に、人事異動や配置転換によって社員を取り巻く環境も変わりやすい時期です。
求職者のなかには、上半期で現在の職場に区切りをつけ、下半期からは新たな職場で働こうと考える人もいます。人事異動や配置転換によって社員が足りなくなる部署がある場合に、中途採用を行って人員配置を実施する企業もあります。
繁忙期に中途採用をするメリット
繁忙期に中途採用をするメリットは、次のとおりです。
応募者が増えやすい
優秀な人材を確保できる可能性がある
担当者が中途採用に注力しやすい
求職者が多い繁忙期は、より多くの応募者の中から人材を採用できます。自社への応募者が増えれば、優秀な人材を見つけられる可能性が高まります。
また、繁忙期は年末や年度末と重なるため、4月・9月・下半期など入社の調整がしやすい時期です。9月や下半期は新卒社員の入社と時期をずらせるため、担当者も中途採用にウェートを置きやすくなります。
繁忙期に中途採用をする際の注意点
求職者が増える繁忙期は求人を出す企業が多いため、自社の求人が埋もれてしまう可能性があります。
また、求職者が複数の企業に応募していれば、内定を出しても辞退につながるリスクがあります。
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中途採用の閑散期とは
求職者が少ない閑散期は、競合他社が採用活動を控える傾向にあります。
閑散期にあたる時期
中途採用の閑散期は、4~5月・8月・年末年始です。
新年度を迎えた直後の4~5月
4~5月は新年度を迎えた直後のため、採用市場が落ち着く時期です。長期休暇中は求職者が転職活動に消極的になりやすく、大型連休がある5月は求職者が減る傾向にあります。
また、新卒採用と中途採用の担当者が同一の場合、新卒社員の対応に追われている4~5月は、中途採用の活動を控える企業もあります。
夏季休暇と重なる8月
8月はお盆や夏季休暇と重なり、4~5月同様に転職活動をする求職者が少ない時期です。
社員が交代で休暇をとる企業も多く、書類選考や面接などの採用活動が滞りやすくなります。また、サービス業の場合、忙しくなるお盆や夏季休暇は、採用活動を控える企業も多いようです。
年末年始
12月下旬から1月初旬は部署を問わず多忙な時期のため、業務に追われて転職活動に注力できない人が多い傾向にあります。
また、この時期は社内全体が業務に追われるため、企業も中途採用をする余裕がない場合が多いようです。
閑散期に中途採用をするメリット
- 求職者に自社の求人が届きやすい
- 少ない母集団から優秀な人材を発掘できる可能性がある
閑散期は採用活動をする企業が少ないため、求職者に自社の求人を見つけてもらいやすい時期です。
長期休暇中は、基本的に転職活動を控える人が多い傾向にあります。しかし、普段は仕事で忙しい人が、長期休暇を利用して転職活動を始めるケースがあり、優秀な人材に出会える可能性もあります。
閑散期に中途採用をする際の注意点
大型連休や夏季休暇などの間は転職活動をする求職者が少ないため、求人を出しても多くの応募者を期待できません。そのため閑散期は、応募数自体が少ない可能性を覚悟したうえで採用活動を始める必要があるでしょう。
また採用担当者が休暇をとるため、採用スケジュールが長期化しやすい側面があります。採用担当者が不在で選考がスムーズに進まなければ、途中離脱する応募者が出てくるリスクが高まります。
中途採用の基本的なスケジュールと戦略の立て方
効率的に中途採用を進めるには、自社の経営戦略に沿ったスケジュールを立てることが大切です。
採用フローについてくわしく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
入社時期から逆算して採用活動の時期を決める
スケジュールを立てる際には、まず中途採用者の入社時期を決めましょう。中途採用の基本的なフローは、次のとおりです。
- 採用計画を立てる
- 予算に応じた採用手法を検討する(媒体、エージェント、ダイレクトリクルーティング、リファラルなど)
- 母集団の形成
- 選考
- 内定・入社
入社時期が明確な場合は、逆算して採用計画を立てます。欠員や人事異動の関係で入社時期が決まっているなら、入社日の2~3ヶ月前からを目途に採用活動を開始しましょう。
たとえば4月入社を予定している場合は、応募から入社までの期間を考慮し、1月中または2月初旬には求人を出し始めるのが理想的です。採用計画を立てる際には、同時にどのような人材を採用したいのかを明確にしましょう。
母集団を形成するには広告や自社サイトの掲載内容を工夫し、求職者に魅力を感じてもらいやすい求人を出すことが大切です。
各部署へのヒアリングと選考プロセスの効率化に着手する
中途採用の戦略策定においては、まず、各部署における必要な人員数や人材の要件を明確にするために、ヒアリングを徹底するようにしましょう。各部署のリーダーやマネージャーとコミュニケーションを取り、採用する人材の経歴や能力・スキルセットなどを詳細に把握することが大切です。
次に、採用活動においては素早い選考と選考の辞退防止に努めましょう。中途採用では、市場競争が激しいため、迅速な選考が求められます。選考プロセスを効率化し、スピーディーに選考を進めることで、優秀な求職者を確保しやすくなります。また、選考の辞退を防ぐために、求職者のニーズに対して真摯に対応することも重要です。求職者との関係値を良好に保つことで、採用率の向上に繋がります。
繁忙期の中途採用活動を成功に導くコツ
繁忙期は転職活動をする求職者が多い一方で、採用競合も増えやすいため、自社の求人が埋もれてしまう恐れがあります。より多くの求職者に自社の求人を見てもらうには、さまざまな工夫が必要です。
広告作りを工夫する
求職者が増える繁忙期は他社も採用活動をしているため、自社の求人が埋もれてしまう可能性があります。繁忙期の採用活動によって人材を確保するには、いかに自社の求人に注目してもらえるかがポイントになります。
より多くの求職者に求人を見てもらうには、広告作りに工夫をすることが必要です。たとえば、求職者に興味を持ってもらえるようなキャッチコピーを考える方法もあります。自社の求人がサイトの上位に表示されるようにすれば、目に留まりやすくなります。
転職サイトに掲載する場合は、コンセプトに沿った画像を選びましょう。実際に働く社員の画像を掲載すると入社後の自分をイメージしやすいため、アピールとして効果的です。
プッシュ型ツールを活用する
繁忙期は求人数も多いため、求職者からのアクションを待つだけでは十分な応募数を得られない可能性があります。応募数を増やすには、企業からアクションを起こすのも手段の一つです。
転職サイトや転職エージェントに求人を掲載すると、プッシュ型ツールが利用できます。プッシュ型ツールとは、企業が求める人材にスカウトメールを送信できる機能です。スカウトメールを送信すれば求職者に直接アプローチできるため、応募数の増加が期待できます。
選考スピードをアップする
繁忙期は転職活動をする求職者が多く、競合他社も増える時期です。この時期は複数の企業に応募している求職者も多く、自社に応募があっても途中辞退につながるリスクがあります。
途中辞退を防ぐには、選考スピードをアップするのもポイントです。書類選考期間が短いほど採用決定率が高まる傾向にあるため、選考スピードを上げると途中辞退のリスクを軽減できます。
閑散期の中途採用活動を成功に導くコツ
求職者が減る閑散期は採用スケジュールを長めにとり、求人に担当者の休暇期間を記載するなどして、採用活動を成功させましょう。
長期的なスケジュールを組む
閑散期は、求人数と求職者数がともに少ない時期です。そのため、自社への応募数も多くないことを覚悟しておく必要があります。担当者の長期休暇と重なる場合は、通常よりも長めに採用スケジュールを組むことがポイントです。
また、閑散期の採用活動では、求人を通常よりも長い期間出すようにしましょう。繁忙期を迎える直前に求人を出すと、求職者が増え始めるタイミングに合わせられるため、自社の求人を見つけてもらえる可能性が高まります。
また、時期に関わらず求人を出し続けると、他社の採用活動が落ち着いた閑散期の応募も期待できます。
求人に自社の休暇期間を記載しておく
閑散期は、企業側の担当者も夏季休暇や年末年始などの長期休暇に入る時期と重なります。応募があっても、担当者の不在によってその後の返事がいつになるかわからなければ、求職者に不安を与えてしまう可能性があります。
そのため、企業の長期休暇と重なる時期に求人を出す場合は、自社の休暇期間を記載しておくようにしましょう。また、担当者が休暇中でも連絡できるよう別の担当者に引き継ぎしておくと、閑散期でも滞りなく選考を進められます。
通年で中途採用を行う選択肢もある
業界や職種によっては繁忙期や閑散期を狙った採用活動よりも、通年採用のほうが良いケースもあります。通年採用とは特定の時期に限らず、年間を通じて採用活動をする方法です。
医療業界や建設業界などの人材不足が深刻な業界では、通年採用をしたほうが効率的に採用活動を行えます。また、プログラマーやエンジニアなどのIT系の職種もニーズが高いため、長期的な採用のほうが成果を得やすい傾向にあります。
自社の求める人材や戦略に合わせて採用活動をしよう
採用市場には、繁忙期と閑散期があります。求職者が増える繁忙期はより多くの応募数が期待できます。採用競合が多いので、広告作りの工夫やプッシュ型ツールの活用などで、求職者にアプローチすると効果的です。
閑散期は求職者数、求人数ともに減るため、求職者が増え始める前の段階で求人を出し、通常よりも長めにスケジュールを組むようにしましょう。業界や職種によっては通年採用のほうが良いケースもあるため、自社が求める人材や戦略に合わせて採用活動をすることが大切です。
株式会社学情 エグゼクティブアドバイザー(元・朝日新聞社 あさがくナビ編集長)
1986年早稲田大学政治経済学部卒、朝日新聞社入社。政治部記者や採用担当部長などを経て、「あさがくナビ」編集長を10年間務める。「就活ニュースペーパーby朝日新聞」で発信したニュース解説や就活コラムは1000本超、「人事のホンネ」などでインタビューした人気企業はのべ130社にのぼる。2023年6月から現職。大学などでの講義・講演多数。YouTube「あさがくナビ就活チャンネル」にも多数出演。国家資格・キャリアコンサルタント。著書に『最強の業界・企業研究ナビ』(朝日新聞出版)。