メンバーシップ型雇用は、職務内容を限定しない雇用契約を結んだうえで、雇用される側は企業から割り振られた業務に従う雇用方法です。企業は基本的に総合職として人材を採用し、個人の能力や各部署のニーズを考慮して人員配置を行います。
おもに新卒一括採用とともに導入されています。スキルや経験ではなく、ポテンシャルや人間性、カルチャーマッチなどを重視して採用をおこないます。
このことからも分かるようにメンバーシップ型雇用は、「終身雇用」や「年功序列」を前提とした制度です。これは「ジョブ型雇用」(概要を後の章で説明)を主とする欧米とは異なる日本独自の方法であり、「日本型雇用」とも呼ばれています。
メンバーシップ型雇用ではポテンシャル採用が基本であり、戦力になるまで時間がかかることが課題でした。
一方、ジョブ型雇用では、職務に対して既に適したスキルを持っている人材を採用するため、即戦力になる点が大きな違いです。
そのほかの違いについて、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用を比較した一覧は次の通りです。大枠で捉えると、メンバーシップ型はゼネラリストを育てる雇用方法、ジョブ型はスペシャリストをターゲットとした雇用方法であるといえます。
メンバーシップ型 | ジョブ型 | |
業務の内容・範囲 |
|
|
評価基準 |
|
業務の成果 |
採用方法 | おもに新卒一括採用 | キャリア採用・新卒 |
採用基準 |
|
|
異動・転勤 | あり | なし |
キャリアアップ | 定期異動にともなって経験を積み、年齢や勤続年数に応じて管理職に昇格していく |
|
解雇 | 基本的には終身雇用で、解雇制限が厳しいためよほどの理由がなければ解雇しない | 一般的には該当職務がなくなれば解雇 |
業務ごとに雇用を行う「タスク型雇用」という方法もあります。一般的には業務が終わると同時に雇用契約も満了となります。
タスク型雇用の主な目的は、臨時的に発生する業務の処理です。
終身雇用を前提としたメンバーシップ型雇用とタスク型雇用との違いは、雇用期間と業務が限定されているかどうかです。
新卒採用の慣例となっているメンバーシップ型雇用ですが、改めてどのようなメリット・デメリットがあるのか見てみましょう。企業から見た場合と求職者から見たメリット・デメリットを、それぞれ詳しく解説します。
(引用:株式会社学情 就職・転職意識調査 2023年8月2日)
近年では「配属ガチャ」という言葉もあります。どこの部署や勤務地に配属されるか、入社するまでわからない状態のことを、ソーシャルゲームのアイテムガチャになぞらえた言葉です。
メンバーシップ型雇用で入社した新卒者が、希望する業務内容に就けなかったことを理由に早期離職するケースも稀ではないようです。
社員に多様な業務経験を通じて幅広くスキルを学ばせたい場合や、ジョブローテーションを通じて幅広い視点を持つ管理職候補を育成したい企業には、メンバーシップ型雇用が適しています。また、チーム全体で協力し、共通の目標を達成することを求めるケースにおいても同様です。
ジョブ型雇用では特定の専門業務に特化した働き方が一般的であり、その結果、業務が特定の個人に依存しやすくなる傾向があります。よって、従業員全員に同程度のスキルで同じ業務をさせたい企業には、ジョブ型雇用よりメンバーシップ型雇用のほうが向いているといえます。
特定のスキルや専門知識を重視し、高度な業務を担当できる人材を求めている場合には、メンバーシップ型雇用よりジョブ型雇用のほうが適していると言えます。たとえば、IT、エンジニアリング、デザイン、クリエイティブ分野などの企業がそれにあたります。
チームでの協力よりも個々の専門性が求められる業務や、柔軟な勤務スタイルが求められる企業(例えば、時短勤務、リモートワーク、子育てや介護との両立を支援する企業)においても、ジョブ型雇用が適しているでしょう。
ここまでメンバーシップ型雇用のメリット・デメリットや向いている企業の特性をご紹介してきました。ジョブ型雇用と対比して語られることが多いメンバーシップ型雇用ですが、どちらがよい・悪いではなく、その時々の時代背景にマッチしているか否かで判断されるべきでしょう。
現代では、技術進歩のスピードやトレンドの移り変わりが速まっていることにより、ゼネラリストよりもスペシャリストの需要が高まると推測できます。
また、今後の新卒採用の対象になるZ世代は、他の世代と比較すると「キャリアの自律」への関心が高いと言われています。自分でキャリアパスをコントロールできないメンバーシップ型雇用より、希望が叶えられるジョブ型雇用のニーズが上回るであろうことは想像に難くありません。
労働人口の減少や転職が一般的になった点を鑑みると、採用の高難度化にはますます拍車がかかり、将来的にはメンバーシップ型雇用に代わってジョブ型雇用が主流になる可能性が高いといえるでしょう。
とはいえ、企業側にも雇用される側にも、メンバーシップ型雇用のメリットはあります。デメリットも踏まえて、自社の求める採用ターゲットに適した雇用方法を選択することが重要です。