HR用語の基礎知識
リテンション(retention)とは「保持」「維持」の意味がある言葉です。おもに人事やマーケティングの領域で使われますが、それぞれ意味が異なります。
この記事では人事におけるリテンションの意味や効果、今企業で注目されている理由について分かりやすく解説します。
企業がリテンションの概念に着目し始めたのは、人材不足がおもな原因です。特に近年は少子高齢化と団塊世代の大量退職の影響により労働人口が昔よりも減り、慢性的な人材不足が懸念されています。
総務省の「令和4年 情報通信に関する現状報告の概要」によれば、生産年齢人口(15~64歳)がピークに達したのは1995年頃で、8,716万人でした。しかし、それ以降減少が続き、2010年には8,103万人、2020年には7,509万人まで落ち込んでいます。さらに、2050年には5,275万人と1995年の約6割まで減る見込みです。
※出典:「令和4年 情報通信に関する現状報告の概要」(総務省)
(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nd121110.html)
このように働き手が急速に減っていくなか、企業は優秀な人材を一人でも多く獲得・維持し続けなければ立ち行きません。
また、同時に人材の流動化が進んでいるのも企業にとって問題です。近年は、かつて当たり前だった年功序列・終身雇用の考え方が通用しなくなってきています。働き手はより条件の良い企業へ転職することも多く、特に新卒で入社し、入社後すぐに会社を辞めてしまうケースも後を絶ちません。
厚生労働省の「令和3年雇用動向調査結果の概況」を見ても、令和3年時点で40~59歳の男性離職率は5.5%であるのに対し、20~24歳の男性離職率は24.2%もあります。女性も同様に、26.9%の人が20~24歳で離職しています。
※出典:「令和3年雇用動向調査結果の概況」(厚生労働省)
(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/22-2/dl/gaikyou.pdf)
このように働き手が減少し、会社に定着しにくい現状が続いているなか、多くの企業は獲得した優秀な人材を失わないために早急に対策する必要に迫られています。
代表的なリテンション施策には金銭的報酬があります。給与を上げたり、働きに見合った給与を提示することで人材の流出を防ぎます。
金銭的報酬にはいくつかの種類があります。
これらを組み合わせた金銭的報酬を用意し、社員に提示することで、社員の働く満足感や働きがい向上につなげることができます。
ただし、金銭的報酬は会社の業績に応じて設定するため、他社よりも高い報酬を必ずしも提示できない場合も少なくありません。このため、金銭的報酬だけをリテンション施策として取り入れるのは難しいと言えます。
リテンション施策のもう一つの種類は、非金銭的報酬です。たとえば、テレワークを導入してワーク・ライフ・バランスの実現を目指したり、スキルアップやキャリア形成のサポートを行う体制づくりに注力したりと、導入できる施策はさまざまです。
ほかにも、次のような施策があげられます。
仮に金銭的報酬に限界がある企業でも、非金銭的報酬を数多く提供することで社員にやりがいや愛社精神を持ってもらえます。他社にはない魅力を感じてもらえることで、人材が留まりやすくなるでしょう。
リテンションにより得られる3つのメリットを解説します。
では、具体的に社内のリテンションを強化するためにはどのようにしたら良いのでしょうか。具体的な施策をいくつかご紹介します。
リテンションとは人事において「人材の確保・維持」を意味します。少子高齢化や団塊世代の大量退職などにより働き手が減っている今、優秀な人材の流出をくい止めるリテンションに注目が集まっています。採用コストの軽減や長期的なノウハウの蓄積がしやすくなるのもメリットです。
リテンションの方法は金銭的報酬、非金銭的報酬を組み合わせるのが一般的で、特に非金銭的報酬は企業によってさまざまな工夫を凝らす余地があります。ライフスタイルの変化に合わせて働きやすい環境、キャリア形成やスキルアップの支援、あるいは社員同士のコミュニケーションを活性化させる場の提供など、できることから始めていきましょう。
リテンションにより、社員の業務へのモチベーションを向上させ愛社精神を養い、長く貢献してもらえる会社を目指してください。