HR用語の基礎知識
労働生産性とは、従業員一人当たりまたは労働時間1時間当たりに生産できる成果を数値化したものです。財務省のホームページでは、「従業員一人当たりの付加価値額をいい、付加価値額を従業員数で除したもの」と定義されています。
※出典:財務省「法人企業統計調査からみる日本企業の特徴 資料2」
労働生産性は、従業員一人当たりの労働量や投資額がどれだけ見合っているかを数値化できるため、経営判断の指標の一つとして用いられることもあります。数値が高い場合は、労働力が効率的に働いている状態です。
一方で数値が低い場合は労働力が効率的に働いていないため、労働生産性を向上させるために何らかの対策が必要となります。
物的労働生産性の計算式は、次のとおりです。
生産量には労働によって生み出された成果、労働量には労働者数を当てはめて計算します。
工場で5人の従業員が3時間で15個の商品を生産した場合、物的労働生産性の数値は次のとおりです。
物的労働生産性 | 計算式および数値 |
従業員一人当たりの成果 | 生産量(15個)÷(労働者数5人)=従業員一人当たり3個 |
従業員一人1時間当たりの成果 | 生産量(15個)÷(労働者数5人×労働時間3時間)=従業員一人1時間当たり1個 |
従業員一人当たりの成果は、生産量15個を労働者数5人で割った結果、従業員一人当たり3個になります。従業員一人1時間当たりの成果は、生産量15個を労働者数5人と労働時間3時間をかけた数値で割った結果、従業員一人1時間当たり1個になります。
付加価値労働生産性の計算式は、次のとおりです。
付加価値額には売上から諸経費を差し引いた金額、労働量には労働者数を当てはめて計算します。
3人の従業員が2時間で30,000円の売り上げを達成した場合、付加価値労働生産性の数値は次のとおりです。なお、商品の材料費や運送費に6,000円かかったと仮定します。
付加価値労働生産性 | 計算式および数値 |
従業員一人当たりの成果 | 付加価値額(30,000円-6,000円)÷(労働者数3人)=従業員一人当たり8,000円 |
従業員一人1時間当たりの成果 | 付加価値額(30,000円-6,000円)÷(労働者数3人×労働時間2時間)=従業員一人1時間当たり4,000円 |
従業員一人当たりの成果は、売上30,000円から諸経費6,000円を差し引いた数値を労働者数3人で割った結果、従業員一人当たり8,000円になります。従業員一人1時間当たりの成果は、売上30,000円から諸経費6,000円を差し引いた数値を、労働者数3人と労働時間2時間をかけた数値で割った結果、従業員一人1時間当たり4,000円になります。
近年、労働者不足を課題に抱える企業が増えています。厚生労働省の「労働経済動向調査(令和3年8月)の概況」では、正社員は平成23年8月の調査から41期連続で不足超過であることがわかっています。
特に建設業、医療・福祉、運輸業・郵便業、情報通信業は、労働者不足が深刻な状況です。
産業 | 不足 | 過剰 |
調査産業計 | 34% | 5% |
建設業 | 50% | 0% |
製造業 | 35% | 7% |
情報通信業 | 35% | 2% |
運輸業・郵便業 | 42% | 4% |
卸売業・小売業 | 18% | 4% |
金融業・保険業 | 10% | 1% |
不動産業・物品賃貸業 | 33% | 2% |
学術研究・専門・技術サービス | 34% | 6% |
宿泊業・飲食サービス業 | 16% | 4% |
生活関連サービス業・娯楽業 | 33% | 6% |
医療・福祉 | 45% | 4% |
サービス業(他に分類されないもの) | 31% | 4% |
※出典:厚生労働省「労働経済動向調査(令和3年8月)の概況」
労働者不足を課題に抱える企業は、労働生産性の向上が急務です。労働生産性が向上すると、従業員一人当たりの生産性が上がります。その結果、より少ない資源や投資で多くの利益を得られるようになります。
従業員が快適に働けるように労働環境を整備すると、生産性の向上につながる可能性があります。たとえば、テレワークやABW※などの多様な働き方を導入するのも一つの方法です。
※ABW:(アクティビティ・ベースド・ワーキングの略。働く場所や時間を自由に選択できる働き方)
総務省の「令和3年版情報通信白書」によると、継続してテレワークを導入している事業者は、平成23年から令和2年までの期間、導入していない事業者よりも労働生産性が高いことがわかっています。
テレワーク導入済 | テレワーク未導入 | |
令和2年 | 759万円 | 517万円 |
令和元年 | 805万円 | 623万円 |
平成30年 | 947万円 | 636万円 |
平成29年 | 877万円 | 611万円 |
平成28年 | 957万円 | 599万円 |
平成27年 | 922万円 | 730万円 |
平成26年 | 791万円 | 610万円 |
平成25年 | 964万円 | 602万円 |
平成24年 | 848万円 | 587万円 |
平成23年 | 823万円 | 594万円 |
※出典:総務省「令和3年版情報通信白書 第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済」
また、従業員が生産性を高められるように、オフィスのデザインやレイアウトを工夫する方法もあります。たとえば、来客対応が多い部署のワークスペースを応接室の近くに配置すれば、動線が簡素化されて移動時間を削減できます。