HR用語の基礎知識

ジュニアボード

人事の図書館 編集長 大西直樹
「ジュニアボード」とは、社内で選抜した若手社員や中堅社員によって構成される擬似的な経営委員会を設置し、経営における様々な課題に関して解決策の提言を行わせる仕組みのことで、「ジュニアボード制度」とも呼ばれています。次世代リーダー・幹部候補の育成や、若手・中堅クラスの社員の斬新な意見を経営に取り入れ、企業の活性化を図る手段として注目されています。

ジュニアボードの歴史は古く、1930年代にアメリカのマコーミック社で考案された疑似委員会が起源だとされています。マコーミック社では本来の役員会のほかに、従業員が参加する疑似役員会や各種委員会を設けて、従業員の意見を経営に反映しようとしました。この経営スタイルを「複合経営制(Multiple Management)」と呼び、擬似役員会を「ジュニアボード(Junior Board of Directors)」と称しました。

会社への参画意識を高め、後継者育成につながる「ジュニアボード」

日本に存在する会社のうち、99%以上が「中小企業」です。そして、中小企業の多くが「後継者問題」に悩まされています。帝国データバンクが全国・全業種約27万5,000社を対象に調査を行った「全国・後継者不在企業動向調査(2019年)」によると、国内企業のうち「およそ3分の2(65.2%)」の会社が後継者不在状態となっており、また日本政策金融公庫によれば、60 歳以上の経営者のうち 50%超が将来的な廃業を予定、このうち「後継者難」を理由とする廃業が全体の約3割に迫る、とされています。また経済産業省・中小企業庁の試算では、中小企業・小規模事業者の事業承継問題を放置すると、廃業の急増により2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)を失う可能性があるとされています。

社員は、入社後に様々な業務を経験することにより、業務に慣れ、成長していきます。しかし経営に関しては経験することができないため、明日からすぐに任せる、というわけにはいきません。ジュニアボードでは、自薦・他薦によって集まった若手・中堅社員が会社の経営に関して提言を行うことで会社への参画意識を高め、意思決定を経験することで、後継者育成につながる等の効果が期待できます。ジュニアボードで扱うデータは多岐にわたりますが、最も多いのは将来のビジョンや中期経営計画の策定で、他には新規事業開発、部門横断的な業務改善、海外事業戦略の策定・見直し等があります。企業規模や選抜するメンバーのレベルにもよりますが、ジュニアボードの案がベースとなって、会社の中期経営計画が策定される場合も多々あります。

ジュニアボード導入のメリットについて。

ジュニアボードを導入することで、以下のようなメリットも得ることができます。

◆若手社員・中堅社員の経営への参画意識を高める
社員が若手のうちからジュニアボードへの参画を意識することによって、大局的な観点から事業を考えることができるようになり、積極的に全社的取り組みへ参加することや、より仕事へのモチベーションが上がるといったことが考えられます。また、ジュニアボードのメンバーとして活動を終えた後は、自身の担当業務の意義等をよりよく理解した上で仕事ができるようになるので、生産性の向上等が期待できます。

◆風通しの良い組織をつくる
ジュニアボードでは、経営層と現場の間で意見交換が行われますから、役職間の余計な垣根を取り払う効果があります。またジュニアボードのメンバーは各部署から横断的に選ばれるので、セクショナリズムなどの弊害を取り除く効果も期待できます。

◆社内の課題を再確認する
ジュニアボードでは、経営課題に関する原因や解決策を考えていきます。このプロセスを経て、ジュニアボードのメンバーや最終的に提案を受ける経営層は、社内の経営課題を「解決すべきもの」として再確認することとなり、経営課題を埋もれさない手段としても有効です。

◆大企業だけではなく中小企業でも有効
一般的に中小企業では、その構造上、「後継経営者の育成」「次世代の幹部となる後継者不足」「社員の年齢構成の歪さによる若手とベテランの溝の発生」といった課題を抱えがちです。また別の課題として、中小企業では経営陣が保守的である会社が多いため、時代の流れにあわせた意思決定ができず、顧客離れや業績後退などが発生しがちでもあります。これらの課題に対して、ジュニアボードをうまく活用できれば、後継者育成や若手とベテラン間のコミュニケーションの活性化、若手の発想を経営へ反映させられるといった、様々なメリットをもたらすことが可能になります。

ジュニアボードで成果をあげるポイントとは?

ジュニアボードの擬似役員会は、実際に企業経営をしたことがない若手社員で構成されているため、有益な意見だけでなく、現実の経営とかけ離れたアイデアや発想も出てきますし、現実的に考えて、ジュニアボードからのアイデアを経営にすぐに反映させることが難しいこともあります。そのようなときに忘れてはならないことが、ジュニアボートの目的が後継者や人材育成にある点です。有益なアイデアが出てこないから評価しないのではなく、若手社員が真剣に議論して出てきた発想に対して、経営者や幹部が真剣に受け止めて回答する、もしくは将来の革新につながる可能性を見出そうとする姿勢を見せることが必要です。つまり、ジュニアボードに対して、トップが前向きな姿勢と後継者育成の視点を忘れずに関わっていくことが成果を出すためのポイントです。

また、目に見える効果が現れないという理由等で、ジュニアボード制度を短期でやめてしまうケースが多々あります。ジュニアボードは、1回あたりに参加できる人数が少なく、社員の意識等もすぐに変わるものではないので、長期的な継続を経なければその効果を得にくいという面がありますので、どれだけ継続性を持って行えるかが成功のポイントになります。数年、数回にわたって継続して実行されることにより、社内に「事実を把握し、それに基づいて考える」や「合理的に解決策を検討する」等の共通の考え方を理解する仲間、ネットワークが構築されていきます。この集まりが、次世代の経営を担っていく中核メンバーとして成長していくことが期待されます。

ジュニアボード制度を幹部候補育成に活用することで、若手社員の段階から経営への意識を高めることが可能です。ジュニアボードのメンバーを選抜する際は、あらゆる部門からメンバーを選抜し、自薦他薦だけでなく面談や論文試験を実施して適性や意欲を見極めることが重要になります。

ジュニアボード制度は、若手や中堅の社員の意見を活発化させたり、経営人材を育成することができたり等、企業の成長を促すメリットの大きい制度です。導入に際しては継続性を持たせることや、前向きな姿勢で取り組むこと等に注意して、最大限の効果を発揮できるようにしましょう。

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