「応募者が思うように集まらない」「自社が求める人材に出会えない」など、採用に関する課題を抱えている企業や担当者も多いのではないでしょうか。課題を解決するためには、採用手法を見直すことも大切です。
近年、逆求人と呼ばれる採用手法が注目を集めており、導入する企業が増えています。この記事では、逆求人の意味や企業が採用手法として導入するメリットなどを解説します。課題を解決できそうであれば、導入を検討してみてください。
逆求人とは
「逆求人」とは、逆求人サイトやイベントで学生が自身の強みや経験などのプロフィールを提示し、それを見た企業が気になった学生に直接アプローチする採用手法のことです。
従来は企業が募集した求人に対し、学生が応募するスタイルが一般的でした。逆求人は従来の採用手法とは逆で、企業から学生にアプローチを仕掛けるスタイルです。
逆求人は、もともとはある企業が主催する小規模な逆求人の就職活動イベントで、終了後に評価の高い学生に対して企業からオファーを出す形式のものを指す言葉として使われていました。
逆求人とダイレクトリクルーティングの違い
近年における逆求人は、イベントに限らず企業からスカウトが届く「ダイレクトリクルーティングサービス」も包括したジャンルの総称として使われることもあります。
ダイレクトリクルーティングは、企業が積極的に求職者に接触し、採用を進める手法です。この方法では、企業がダイレクトリクルーティングサービスやSNSを使って、能力の高い学生を探し出し、直接連絡を取ります。また、ダイレクトリクルーティングは新卒採用だけでなく、中途採用にも適用される広範な手法とされています。
一方で逆求人は、ダイレクトリクルーティングの中でも新卒採用に特化した形態を指します。ここでは、学生が自らのスキルや経験をアピールし、企業からのオファーを待つのではなく、企業が主体的に学生にアプローチするスタイルをとります。このことから、逆求人は「新卒ダイレクトリクルーティング」とも呼ばれています。
各企業が逆求人に注目している背景
近年、採用手法として逆求人を導入する企業が増えています。その背景には、社会情勢や新卒採用市場の変化があります。
「待ち」の姿勢では応募を集められないため
多くの企業が逆求人に注目している理由の一つは、求職者側が優位の「売り手市場」という現状にあります。
近年、有効求人倍率は上昇傾向にあり、新卒採用においても売り手市場となっています。企業優位の買い手市場であれば、合同説明会や求人広告を通してある程度の応募者を集めることができました。しかし売り手市場においては、企業間の人材獲得競争も激しく、求人サイトなどに広告掲載をするだけの「待ち」の姿勢でいる企業は、十分な応募を得られない状況になってきています。
数少ない人材を獲得するためには、企業から積極的にアプローチする「攻め」の姿勢が求められており、その手段として逆求人が注目されています。
なお、有効求人倍率についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
自社を知らない学生に対してもアプローチができる
逆求人は応募を待つのではなく、企業から積極的に仕掛けるため、幅広い学生にアプローチすることが可能です。
近年は少子化による労働力不足のため、新たな人材の獲得が難しくなってきています。知名度が高い大手企業には応募者が集まりやすい一方で、認知度が高くない中小企業には応募者が集まりにくい状況があるのも事実です。
逆求人は企業から学生に直接アプローチできるため、企業の規模や認知度に関係なく優秀な人材の獲得につなげられる可能性があります。
企業が逆求人を活用するメリット
逆求人は、学生側のニーズに関わらず企業側から動けるため、効率的に採用活動を進められる可能性があります。
幅広い層の人材にアプローチできる
逆求人は企業が気になる学生にアプローチできるため、幅広い層の人材に興味を持ってもらえるチャンスを作れます。一般的な採用手法では、認知してもらえていない企業や自社への興味が低い学生からは、応募を募ることができませんでした。
しかし、逆求人は企業側から働きかけることができる能動的な採用手法のため、学生からの認知度や興味の大小に関わらずアプローチ可能です。
企業からのアプローチがきっかけとなり、求人に目を通す学生が増える可能性もあります。レスポンスがあった学生とコミュニケーションを続ければ、応募や採用につなげることも期待できるでしょう。
自社が求める人材に出会える可能性が高い
逆求人は事前に学生が登録したプロフィールを見て、企業が人選してアプローチできる採用手法です。条件を絞って学生を探せば、自社が求める人材を見つけられる可能性が高まります。
一般的な採用手法の場合、自社にフィットする人材からの応募があるとは限りません。一方の逆求人は学生からの応募を待つだけでなく、企業からアプローチできるため、質の高い母集団の形成が期待できます。
時間やコストの削減が期待できる
逆求人は会社説明会が不要なので、採用活動に関する時間やコストの削減が期待できます。通常、学生に対して行う最初の採用活動は、自社に興味を持ってもらえるよう、会社説明会を開催することでしょう。
説明会を開催するには、会場の手配や人員の配置などに手間がかかります。応募者が多ければ、エントリーシートや履歴書に目を通す時間や人員の確保も必要です。
一方の逆求人は企業が狙った学生だけにアプローチする採用手法なので、限られた応募者の対応だけで済みます。
企業が逆求人を活用する際の課題
逆求人は、企業にとってメリットばかりではありません。ノウハウがなければ、学生に自社の魅力が上手く伝わらない場合や選考の手間が増える場合もあります。
ターゲットごとに自社のアピール方法を工夫する必要がある
逆求人で自社に興味や関心がない学生にアプローチする際には、魅力の伝え方の工夫が必要です。ターゲットを採用につなげるためには、まず自社に興味を持ってもらい、応募してもらわなければなりません。
自社の魅力が上手く伝わらなければ応募につながらず、思うような成果を上げられないでしょう。魅力を上手く伝えるためには、ターゲットごとに伝え方を変えることも大切です。
自社が求める条件の人材に出会えるとは限らない
逆求人は企業が人選した上でアプローチできる採用手法ですが、必ず自社が求める条件の人材に出会えるとは限りません。学生のプロフィールや自己PRなどのテキスト情報だけでは、自社にフィットする人材を見極めるのは難しいのが現状です。
実際に面接で学生と話してみると、求める人材とは違ったという可能性も出てきます。ミスマッチを防ぐためにも、採用担当者は人材の見極めが甘くならないように注意しましょう。
採用担当者の負担は増える可能性もある
逆求人を導入すると、採用担当者の負担が増えることもあるので注意しましょう。基本的には限られた学生だけの対応で済むため、一般的な採用手法に比べて時間やコストの削減が期待できます。
しかし、レスポンスがあった学生に対しては、会社説明会の代わりに自社の説明を個別にする負担があります。また、逆求人は、一人の学生に対するコミュニケーション数が多い採用手法です。ターゲットごとにメッセージ内容を工夫する必要もあるため、採用担当者に負担がかかる可能性もあります。
逆求人で人材にアプローチする方法
企業が逆求人で学生にアプローチする代表的な方法は、逆求人サイトと逆求人イベントへの参加です。どちらもターゲットを絞ってアプローチできるものの、学生とのコミュニケーションの仕方が大きく異なるため、自社に適した方法を選びましょう。
逆求人サイトを利用する
「逆求人サイト」とは、逆求人に特化したWebサイトのことです。一般的には、ダイレクトリクルーティングやダイレクトソーシング、スカウト型就活サイト、スカウト系就活などと呼ばれています。
逆求人サイトには、学生が自身の経歴や自己PRなどを登録します。企業はそのデータベースをもとに、求める人材を見つけます。条件にマッチした人材が見つかれば、ターゲットにメッセージを送信できる仕組みです。
逆求人サイトで人材を探すなら、あさがくナビの活用を検討してみましょう。あさがくナビは2023年オリコン顧客満足度(R)調査において、「逆求人型就活サービス」「就活支援コンテンツ」で第1位を獲得しています。
アバター検索やAIスカウト機能などをフル活用すれば、自社が求める人材に出会える可能性があります。あさがくナビのサービスの詳細は、こちらからご確認ください。
逆求人イベントに参加する
逆求人でのアプローチには、逆求人イベントに参加する方法もあります。逆求人イベントとは一般的な会社説明会と異なり、学生のブースを採用担当者が訪問するスタイルです。
学生とは1対1で面談できるため、しっかりとしたコミュニケーションが取れる点が魅力の一つです。学生の人物像を対面で確認できるため、ミスマッチを低減でき、自社が求める人材の採用につなげられる可能性があります。
逆求人イベントに参加するなら、あさがくナビの就職博がおすすめです。あさがくナビは就職博とデータ連動しているため、イベントに参加するような積極的に就職活動をしているアクティブユーザーへのアプローチが期待できます。
逆求人から採用につなげるコツ
企業が逆求人を導入しても、必ず成功するとは限りません。逆求人で見つけた人材を採用につなげるためには、コツを掴んでおくことも大切です。
自社が求める人物像を明確にする
逆求人で人材の獲得を成功させるためには、自社が求める人物像を明確にしておく必要があります。求める条件が曖昧なまま人材を探すと、アプローチしなければならない学生の数が増えます。
多くの学生にアプローチすれば、その分手間がかかり、採用業務が煩雑になりがちです。また、狙うターゲット層が増えると、ミスマッチにつながる可能性もあります。
求める人物像を明確にすることは逆求人に限ったことではなく、すべての採用手法に当てはまる大事な要素です。自社の条件にマッチする人材に合わせて採用基準を明確にしておけば、効率的に採用活動を進められるでしょう。
気になるターゲットとはこまめに連絡を取る
逆求人サイトやイベントで気になるターゲットを見つけた場合は、プロフィールなどから自社が求める人材か、自社に合う人材かを精査した上で、アプローチをかけるか検討します。自社の選考に参加してもらいたいターゲットが見つかったら積極的に連絡し、こまめにコミュニケーションを取るよう心がけましょう。
逆求人をはじめとするスカウト型の採用手法は近年増えており、導入する企業も多いです。そのため、優秀な人材ほど多くの企業からアプローチを受けている可能性が高いのが現状です。多くのオファーのなかから学生に選んでもらうためには、自社を意識させることが大切です。
たとえば逆求人イベントでの接触を試みる場合、学生に事前連絡を入れておくことで、当日はスムーズに話を進められます。
メールの文面は1to1のメッセージを意識する
スカウトメールの文面は、ターゲットごとに変えましょう。自社が狙ったターゲットは、すでに多くのスカウトを受けている可能性もあります。そのため、テンプレートのまま一斉送信した場合、学生に見透かされてしまう確率は高いでしょう。
学生に興味を持ってもらうためには文面を工夫し、「なぜあなたにスカウトメールを送ろうと思ったのか」1to1のメッセージを意識することも大切です。あさがくナビのアンケートでは、スカウトメールに記載されているとうれしいこととして、「自分にスカウトを送ろうと思った理由」が最も多かったことがわかっています。
※出典:「2023年卒学生の就職意識調査(スカウトメール)2021年11月版」(あさがくナビ)(https://service.gakujo.ne.jp/wp-content/uploads/2023/10/211126-navienq.pdf)
スカウトメールを送信した理由を文面に入れることで、開封率や返信率が高まると期待できます。
イベントでは親近感を持ってもらえるよう心がける
逆求人イベントは、ターゲットの学生と直接コミュニケーションが取れる絶好の機会です。イベントでは、学生から本音を引き出せるような雰囲気づくりも重要な要素になります。
採用担当者が硬い態度で臨むと、学生の緊張感が増して本音を話しづらくなる可能性もあるため、親近感を与えるよう心がけましょう。学生の緊張をほぐす際には、アイスブレイクを活用するのも手段の一つです。
逆求人を活用して優秀な人材の採用につなげよう
逆求人は企業だけでなく、学生も注目している採用手法です。企業からのスカウトを待っている学生も多いため、上手く活用すれば優秀な人材の獲得が期待できます。しかし、逆求人を導入しても、必ず成功するとは限りません。
逆求人で人材の獲得につなげるためには、自社が求める人物像を明確にし、ターゲットに適したメール作成を心がけることが大切です。イベントでは、テキストだけでは把握しきれない情報を引き出すことに注力すれば、ミスマッチの低減も期待できます。
自社の採用課題の解決手段として、逆求人の活用も検討してみてはいかがでしょうか。
株式会社学情 エグゼクティブアドバイザー(元・朝日新聞社 あさがくナビ編集長)
1986年早稲田大学政治経済学部卒、朝日新聞社入社。政治部記者や採用担当部長などを経て、「あさがくナビ」編集長を10年間務める。「就活ニュースペーパーby朝日新聞」で発信したニュース解説や就活コラムは1000本超、「人事のホンネ」などでインタビューした人気企業はのべ130社にのぼる。2023年6月から現職。大学などでの講義・講演多数。YouTube「あさがくナビ就活チャンネル」にも多数出演。国家資格・キャリアコンサルタント。著書に『最強の業界・企業研究ナビ』(朝日新聞出版)。