リベラルアーツの学習は柔軟な発想力や想像力を育みます。社会やビジネスでは、専門的な知識だけでなく、幅広い視野を持つことが求められており、今後もリベラルアーツの重要性は高まっていくでしょう。
本記事では、リベラルアーツとはなにかを解説します。また、リベラルアーツを学ぶことで期待できる効果も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
リベラルアーツとは
リベラルアーツとは、生きていくための人間力を養う基礎的な学問です。
思想や哲学など多岐にわたる分野の書籍を読んで話し合ったり、学んだ内容をレポートにまとめたりして、さまざまな学問分野の知識を広く学びます。
リベラルアーツの起源は、古代ギリシャの自由七科です。その後、中世ヨーロッパで大学の基本科目となり、近代以降はアメリカでも導入されるようになりました。日本でも大学教育や人材育成、企業研修の一環として取り入れられています。
大学教育の場合、リベラルアーツに含まれる科目は大学によって異なりますが、一般的には人文科学や社会科学、自然科学などの分野であるケースがほとんどです。
あらゆる領域での教養を身に付け、幅広い知識と多様なスキルを習得し、問題解決能力やコミュニケーションスキル、倫理的な判断力などを養うことを目的とします。
リベラルアーツが注目されている背景
リベラルアーツは、さまざまなシーンで注目が集まっています。その背景には、グローバル化や社会構造の変化などが関係しています。
グローバル化に対応するため
近年、企業の海外進出や外国人従業員の雇用など、グローバル化が急速に進んでいます。現代のグローバル社会では、多様性への理解が必要不可欠です。企業がグローバル化に対応するには、現地の宗教や文化、価値観などを理解しなければなりません。
たとえば宗教色の強い国に進出する際は、その国の宗教や価値観を理解していなければ、ビジネスに支障が生じる可能性があります。自身が生まれ育った国での文化に基づいた行動が現地では失礼と受け取られるケースもあるでしょう。
他国の文化や価値観を理解するために、幅広い知識を習得できるリベラルアーツに注目が集まっています。
柔軟な発想力や創造力が求められているため
現代のビジネスシーンでは、新たな科学的発見や技術進化を取り込んだイノベーションが求められています。
イノベーションを実現するには柔軟な発想力や創造力が重要です。
企業が成長するためにも、固定観念にとらわれず、積極的に新しい物事に取り組もうとする人材が求められています。
社会や事業構造が変化しているため
リベラルアーツが注目されている背景には、社会や事業構造の変化も関係しています。
日本は生産年齢人口の減少により、労働者不足に陥る業界が増えています。同時に、AIなどの技術革新によって社会や事業の構造も変化しているのが現状です。
このような変化のなかで、ビジネスを成功させるには基礎的な物事を判断できる能力や知識が求められています。
リベラルアーツを学ぶことで期待できる効果
リベラルアーツを学ぶと固定観念にとらわれなくなる、総合的な判断ができるようになるといった効果を期待できます。
固定観念の払拭
固定観念とは「凝り固まった考え方」を指します。状況に応じて物事を適切に判断するには、自身の固定観念を捨て、新しい考えを取り入れることが大切です。
リベラルアーツを学ぶと、幅広い教養や知識を身に付けられ、視野が広がるため、固定観念や常識を払拭することができます。
判断力の強化
日常生活においては、これまでの経験や知識だけで自信を持って判断するのが難しいケースがあります。
しかし、リベラルアーツを学んで幅広い知識や視野を持つと、物事の本質を把握し、問題を多面的に考える力を身に付けることができます。
人間力の向上
内閣府の人間力戦略研究会の資料によると、人間力とは「社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」と定義されています。
近年はAI分野が急速に発展しており、「将来的にAIが人間の仕事を代替する可能性があるのでは?」と予想されることがあります。
AIはデータを解析すれば正確に実行できる一方で、データが存在しない状態では機能しません。そのため、ゼロから新しいものを創り出すことや、パターン化できないコミュニケーションは困難です。
これからの社会に適応するには、創造力やコミュニケーション能力などの人間力が必要になります。
リベラルアーツはさまざまな分野の知識やスキルを学び、創造力やコミュニケーション能力、論理的思考力などの人間力を高めるのに役立ちます。
リベラルアーツを学ぶ方法
リベラルアーツは、社会人として働きながらでも学べます。専門知識だけでなく、専門外の知識も学び、教養を身に付けましょう。
専門知識を学ぶ
リベラルアーツでは、さまざまな分野の知識を網羅的に学び、深く理解します。
まずは自分自身で考えるための基準を築くために、専門的な知識に対する理解を深めましょう。
リベラルアーツでは、次のような精度の高い情報を学ぶことが大切です。
- 物事の本質や事実
- 現象や状態
- 経過や成り立ち など
高い精度の知識を身に付けると、物事の本質がより明確に見えて、最終的な判断に役立ちます。
リベラルアーツにおける専門的な知識の例としては「歴史学」や「文学」「経済学」「政治学」「哲学」などがあげられます。どの専門知識を学ぶべきか迷った場合は、自身が興味を持っている分野から始めてみましょう。
専門知識を学ぶ方法には、専門書を読む、講座を受講するなどがあります。
専門外知識を学ぶ
リベラルアーツ教育では、特定の専門分野に限らず、幅広い知識やスキルを学びましょう。専門外の知識を取り入れると、視点が広がり、問題を多角的にとらえる能力が養われます。
専門外の知識を深めるには、新しいコミュニティや環境に参加することが重要です。専門分野以外のセミナーやイベント、他部署と交流できるプロジェクトに参加するのもよいでしょう。
専門知識と専門外知識の両方を身に付けることで、基準や軸を持ちつつ、さまざまな角度から物事を捉えられるようになります。
教養を身に付ける
専門知識と専門外知識にプラスして、明確な根拠の軸を持つことも大切です。
日常生活では、専門知識と専門外知識だけでは対応しきれない場面もあるでしょう。さまざまな事象に対して、つながりを読み取る能力が求められることもあり、幅広い教養を身に付けると、物事を多角的に見て判断できるようになります。
教養を身につける手段としては、さまざまな分野の本を読む、多様なメディアから情報を吸収するといった方法があげられます。
リベラルアーツに関するよくある質問
最後に、リベラルアーツに関するよくある質問を紹介します。
「一般教養」と違いはあるのか?
リベラルアーツは日本語に直訳すると「教養教育」となります。しかし「一般教養」とは異なります。
一般教養とは、基本的な知識や情報を身に付けることを指し、専門教育の前段階とされています。日本の教育制度には、一般教養という教科や講座は存在しません。
リベラルアーツは、明確な答えがない問題や課題を解決するための実践的な学習です。大学の教育課程においては「人文科学」「社会科学」「自然科学」の基礎的な分野を学ぶプログラムとして取り入れられています。
効率的に学ぶ方法はあるのか?
リベラルアーツを効率的に学ぶためのポイントを紹介します。
- 関心のある分野を選ぶ
- 仮説と検証を繰り返す
- 論理的思考力を鍛える
まずは自身が関心のある分野を選びましょう。その分野に特化した題材を学ぶことで学習意欲が高まります。一部の大学では、学生が自分の興味のある分野を見つけられるように、幅広い分野の科目を提供しつつ、興味のある分野を絞り込むシステムを導入しているところもあります。
学習の過程では、仮説を立てて検証するサイクルを繰り返すことが大切です。物事を多面的に考える力が養われます。
また、リベラルアーツを学ぶことで育まれる論理的思考力は、哲学や歴史の本を読んだり、人とコミュニケーションをとることで向上します。インターネットや書籍から得た最新情報を整理し、論理的に考える習慣も重要です。
独学以外に学ぶ方法はあるのか?
一部の大学では、社会人向けに講座を提供しています。たとえばマネジメント・プログラムからデータサイエンススクール、くらしに関するセミナーまで、ビジネスパーソンだけでなく広い年齢層に向けたプラットフォームを提供している大学もあります。
ほかにも、リベラルアーツ講座を提供するオンラインサービスに申し込むのもひとつの方法です。
リベラルアーツを学ぶ方法は独学以外にも多数あります。自身のライフスタイルに合った学び方を選択し、継続することが大切です。
リベラルアーツを学んで新たな価値を創造しよう
グローバル化や社会構造の変化により、今後もリベラルアーツの重要性が高まると考えられます。
近年では技術革新により、高度な判断もAIで行える時代が訪れるかもしれません。しかし、AIにはできない人間特有の判断力が必要とされる場面もあります。
リベラルアーツを学ぶことで幅広い知識が身に付くため、固定観念から解放され、ビジネスに新たなアイディアをもたらす可能性があります。
個人だけでなく、企業の成長にも寄与するスキルと視点を養えるため、人材育成の一環として検討してみてはいかがでしょうか。
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