大企業病は治らない?意味から症状や対策をわかりやすく解説
2023.08.28
業績が停滞している企業に良く見られるのが「大企業病」です。組織や従業員にネガティブな思考が蔓延し、企業の勢いが感じられない状態を指します。
本記事では、大企業病の概念と危険性、大企業病になる原因と対策を解説します。自社が「大企業病に当てはまっているのでは」と感じている企業の方は、本記事を参考にして対策を講じてみてください。
大企業病とは
大企業病という言葉には、とくに定義はありません。企業内において、組織や従業員にネガティブな意識や勤務態度が出ている状態を「大企業病にかかっている」と表現します。
大企業病となる企業の多くは「業績が安定している」「急激な成長を見せている」といった特徴が見られます。そのため、大企業病は大企業だけではなく、中小企業やベンチャー企業でも広く見られる状態です。
いったん大企業病に陥ると、自力で回復するには時間がかかるものです。そのため、少しでも大企業病の兆候が見られる際は、早期対策が求められます。
大企業病を放置する危険性
大企業病を放置することで、さまざまなリスクを負う危険性が高まります。
- 意思決定が遅いことで生産性が低下する
- 新しいことに挑戦したい従業員が離職する
- 現状維持を求めるためイノベーションが生まれない など
企業内にネガティブな空気が流れていると、新しいことに取り組もうとする気概が生まれにくくなります。また、従業員が安定志向の考え方を求めるため、斬新なアイディアを出しても認めてもらう雰囲気とはなりません。それらが積み重なると、やる気のある従業員のモチベーション低下を引き起こし、生産性の低下や離職へとつながってしまいます。
少しでも大企業病の兆候を感じた場合、すぐに対策を検討しないと取り返しのつかない状況となるかもしれません。
また、外部環境や経営目標に変化があった際、組織が現状のままだと成長を阻害する可能性も否めません。新しい環境や目標に合わせて、組織全体を見直して大企業病を防ぐことが求められるでしょう。
大企業病の症例
大企業病となった企業には、次の症状が見られるようになります。
- ルールやマニュアルに縛られすぎている
- 新しいことにチャレンジできない
- 意思決定に時間がかかる
- 社内で対立が生まれている
- 正当な評価がされていない
それぞれについて、詳しく説明します。
ルールやマニュアルに縛られすぎている
大企業病の企業は、社内ルールやマニュアルが多く、それにとらわれすぎて臨機応変な対応ができなくなっている状況が見られます。
組織が大きくなると、業務の円滑化を図るためにはルールやマニュアル作りは欠かせません。しかし、決められたルールを守ることが優先されすぎると、自由な発想や柔軟性が失われる可能性があります。
また、古くに作られたルールやマニュアルは、現在の社会情勢に合っていないことも考えられます。これまでのやり方に固執するあまり、社会や市場の変化について行けなくなっている可能性があるでしょう。
新しいことにチャレンジできない
大企業病に陥ると、仕事に安定を求めるようになります。新しい何かにチャレンジしようとしても、前例がないことを盾に否定・反対されます。なかには、新しい提案によって業務が増えることを嫌がる従業員も見られるようになるでしょう。
このように、既存業務の価値低下や失敗を恐れる思考が企業内に蔓延すると、チャレンジ精神の育たない風土となってしまいます。
意思決定に時間がかかる
大企業病では、意思決定に時間がかかる特徴も見られます。
日本企業では、縦割りのヒエラルキー型組織がまだ多く見られます。そのような組織では、小さな取り組みでも多くの従業員の決裁が必要となるため、実行までの時間がかかってしまうものです。
多くの意見を確認できるのは、取り組みに対するブラッシュアップが望めるという意味では有効です。しかし、スピード感の求められるプロジェクトの場合、意思決定が遅いとタイミングを逸してしまい、ビジネスチャンスを失ってしまう危険性が高くなります。
社内で対立が生まれている
会社全体の利益を求めるのではなく、部署やチーム内の利益を優先してしまうのも、大企業病の悪い面です。
自身の所属するチームの利益や権限を優先するあまり、ほかのチームや部署との協力がなされない状況となります。状況が悪化すると、チーム同士の対立や足の引っ張り合いを生む構造となってしまいます。
社内に対立構造が生まれた場合でも、競争による成長が生まれれば問題ありません。しかし、実際は顧客に向けた仕事につながらず、社内政治に力を注ぐことが優先されるようになりがちです。
正当な評価がされていない
人事評価が実力に見合っていない従業員が見られる場合、大企業病はかなり進行していると考えられるでしょう。
社内政治によって能力以上に出世している社員が、結果を出しているのに評価を得られない社員の上司となった場合、部下のモチベーションの低下は否めません。また、実力よりも年功序列が優先される昇進や昇給制度も、若い層からの反感を買うでしょう。
その結果、実力があっても評価されていない人材は社外へ流出してしまうことが考えられます。
大企業病にかかる4つの原因
大企業病に陥る要因として代表的なものは、次の4点です。
- 現状の経営が安定している
- 企業が巨大化・細分化している
- 新規取り組みへの評価基準がない
- ルール・マニュアルの見直しをしていない
自社がこれらの要因に当てはまっている場合、現在は問題ないとしても対策を講じないと大企業病となる可能性が高くなります。
それぞれの要因について、詳しく説明します。
現状の経営が安定している
業績が安定しており経営に問題のない状況は、危機感の欠如を生むために大企業病となる要因として考えられます。
経営の安定は、企業にとっては喜ばしいことです。しかし、現状の経営方法で成功しているため新たなチャレンジの必要がない状態だとも考えられるでしょう。
経営が安定しているところで、新しいチャレンジをすることは、新たなリスクとなるとの懸念を抱くかもしれません。しかし、現状のビジネスが成功し続けるとは限りません。いったん安定志向の経営になると、再度チャレンジ精神を持って挑戦していくことが難しくなるでしょう。
企業が巨大化・細分化している
会社の規模が大きくなると、業務の効率化のため組織が細分化され、担当する業務の幅が狭くなるものです。そうなると、担当する業務以外に目が行かなくなり、企業全体を見る視点が失われてしまいます。
また、組織が大きくなると経営陣と現場に距離ができ、意思の疎通が困難となりがちです。結果的に経営陣は現場の理解が進まず、従業員は企業理念や経営方針の理解が進まない状況が生まれることも考えられます。
また、組織が大きくなると決裁権限を持つ人間も増え、意思決定のスピードが遅くなります。
新規取り組みへの評価基準がない
新しい取り組みに対する評価基準が決められていない場合、従業員が個人的にリスクを取って取り組むとは考えにくいでしょう。
新しいことに挑戦しても評価されないとわかっていれば、リスクを取ってまでチャレンジしようとは思わなくなるものです。現状の業務で十分と考えて挑戦することがなくなり、組織の停滞感を生む原因となります。
ルール・マニュアルの見直しをしていない
ルールやマニュアルの作成自体は、必ずしも悪いことではありません。しかし、市場や社会情勢の変化があっても古いルールを捨てず、追記することで使い続けるのは、現状とあわなくなる可能性が高くなります。
また、現場からルールやマニュアルの改訂を申し出ても、経営側が対応しなければ古い体質は変えられません。現場にあっていない不合理なマニュアルを使い続けると、業務に支障が出るケースも考えられるでしょう。
大企業病に有効な対策6選
大企業病の兆候が少しでも見え始めたら、すぐに対策を打つ必要があります。症状が進行して軌道修正が難しくなる前に対策できると良いのですが、すでに進行し始めていても克服は可能です。
大企業病が疑われる場合は、次の6つの対策を講じてみると良いでしょう。
- 各視点からの現状の見直し
- 新たな挑戦の推奨
- 多様性の容認
- 企業の理念・ビジョンの周知
- 社内コミュニケーションの促進
- 外部への現状の分析・改善を依頼
それぞれについて、詳しく説明します。
1.各視点からの現状の見直し
まずは、現状の組織構造やルール・マニュアルを全体的に見直し、現場へのヒアリング・外部機関への依頼などを通して問題点を洗い出し、改善を進めます。
【見直し箇所のピックアップ例】
- 組織の再編、業務フローを見直し、作業を単純化する
- ルール・マニュアルを現在の状況に合わせてアップデートする
- 上層部の人員刷新を実行する
- 現場の裁量権を増やし、業務のスピード化を図る
- 人事評価制度を見直す など
多くの内容に手をつけると見直しが中途半端になる可能性もあるため、重要度の高いところから思い切って見直しすると良いでしょう。
2.新たな挑戦の推奨
新たな挑戦を推奨する風土の構築で、従業員のチャレンジを促すようにします。
安定を求める風土では、企業は停滞しイノベーションの生まれにくい雰囲気となります。新しいチャレンジやアイディアは積極的に取り入れ、スピード感を持って取り組めるような仕組み作りも合わせて行なうと良いでしょう。
ミスと失敗を切り分けて考え、失敗を責めない雰囲気作りも重要です。チャレンジに対して企業がバックアップする体制や、成功に対して正当な評価がされることも求められます。
3.多様性の容認
部署やチームだけの連携ではなく、企業全体で連携を取れる多様性の容認も、大企業病の克服には重要な対策です。職種・年齢・性別・国籍などが異なる多様な従業員を集めることで、イノベーションが起こりやすくなる効果も期待できます。
多様性を認める風土ができてくると、これまでの保守的な考え方が修正され、適応力の高い組織となります。従業員それぞれの能力を認めて発揮できる風土作りで、大企業病の克服が可能となるでしょう。
4.企業の理念・ビジョンの周知
企業が大きくなるにつれ、経営陣と現場従業員が直接関わる機会は減少していくでしょう。コミュニケーションが取りにくくなると、企業理念やビジョンの共有が難しくなるものです。経営陣が率先して、従業員に理念やビジョンの周知を徹底することが求められます。
企業にとって理念やビジョンは、どこへ向かって走って行くのか行動の指針となるものです。自社が社会においてどのように貢献できるか、明文化されたものが理念やビジョンとなります。
[ミッション・ビジョン・バリューとは][パーパスとは]
理念やビジョンを共有すれば従業員間のコミュニケーション促進が可能となり、市場の変化に対して柔軟な対応が取れるようになります。社内研修や社内報、SNSの利用など、従業員へ容易に周知できるシステム作りも大切となるでしょう。
当然ながら、企業理念やビジョンが明確になっていないと意味がありません。理念やビジョンに問題があり意識の共有が難しいと考えられる場合は、作成し直すことも検討しましょう。
5.社内コミュニケーションの促進
社内コミュニケーションが活性化すれば企業の風通しが良くなり、意見交換が活発になります。部署を超えたコミュニケーションの取りやすい環境作りや、業務の効率化が図れるような施策をとると良いでしょう。
具体的には次の施策をとると、コミュニケーションの活発化につながります。
- フリーアドレスの採用:自分の席を固定せず好きな席に座れるため、部署を超えたコミュニケーションが可能となる
- リフレッシュスペースの確保:リラックスした状態で、ほかの従業員とのコミュニケーションが図れる
- 社内報や社内SNSの活用:在宅勤務でほかの従業員と実際に会えなくても、気軽にコミュニケーションが取れる
- サークルや部活動の推進:同じ趣味を持つ従業員同士でのコミュニケーションができる
6.外部への現状の分析・改善を依頼
企業に長期間在籍していると、自社の問題点に気づかないケースがあります。とくに役員レベルの従業員では、現状が当たり前と感じており変化を求めていないことも考えられます。
そのような場合は、外部コンサルタントに依頼してアドバイスをもらうのも一つの方法です。自社の状況を知らないため、客観的な視点からチェックしてもらえます。
現場の従業員だけでは対策が難しいと感じられる際は、外部へ分析や改善を依頼するのが大企業病克服への近道となるでしょう。
大企業病に陥らないように日々の対策を心がけよう
大企業病は、企業全体にネガティブな雰囲気が蔓延している状態です。新しいことにチャレンジする風土がなく安定志向のため、企業の成長に大きく影響します。
大企業病になると元の状態に戻すには時間がかかるため、大企業病の兆候が見られた場合には早めの対策が必要です。現状維持にこだわって新しいことに挑戦していかないと、社会情勢の変化に企業がついて行けなくなることも考えられます。自社だけでは修正が難しいと考えられる場合は、外部機関に依頼するのも良い方法です。
本記事に記載している対策をぜひ参考にして大企業病を克服し、社会環境の変化に対応できる企業体制をつくっていきましょう。
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