中途採用で即戦力を採用するのは無理?
採用が難しい理由や対策を解説
2025.01.29


中途採用では、即戦力が求められるケースが多く、人材獲得競争が激化しています。採用担当者のなかには「即戦力の採用は無理だ」と感じている方も多いでしょう。
そこで本記事では、中途採用における即戦力採用が難しい理由や対策について解説します。即戦力採用に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
即戦力とは?
中途採用における即戦力とは、募集ポジションと同じ業務経験を持っており、すぐに活躍できる人材を指す場合が多いです。
企業や求人によって求めるスキルや経験、資格が異なるため、特定のスキルや経験を持っているからといって、必ずしも即戦力になるわけではありません。
企業側は「即戦力」として採用していても、求めていたスキルと求職者の能力がマッチしていないと、即戦力としての活躍が期待できない可能性があります。
中途採用で即戦力の採用が無理といわれる理由

採用難が続くなか、中途採用で即戦力を採用するのは無理という風潮があります。
中途採用で即戦力の採用が無理といわれる理由は次の通りです。
- 売り手市場が続いている
- 即戦力となる人材が少ない
- 採用要件が明確でない
- 採用コストが高い
それぞれの理由について、詳しく解説していきます。
売り手市場が続いている
近年、有効求人倍率は上昇傾向にあり、即戦力の採用に限らず、採用自体が難しくなっています。
令和6年8月の有効求人倍率は1.23倍で、新規有効求人倍率は2.32倍でした。依然として売り手市場が続いており、人材獲得競争が激化しています。
少子化によって労働人口が減少していくと考えられており、今後も採用が難しくなると予想されます。
※参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和6年8月分)」
即戦力となる人材が少ない
中途採用市場では、即戦力を求める企業が多く、数少ない即戦力となる人材を取り合っているのが現状です。
即戦力となる人材は、現在の職場で好待遇を受けており、転職を必要としていないケースがあります。また、転職の意思があっても、複数の企業から好条件を提示されている可能性が高いでしょう。
即戦力となる人材を採用するには、高い年収や待遇を提示するといった、他社との差別化を図らなければなりません。
採用要件が明確でない
採用要件が明確でないと、求める人材に効果的なアプローチができていない可能性があります。
即戦力を採用するには、求める人物像や経験、スキルなどの採用要件を明確にすることが重要です。採用要件が決まっていないと、面接官や採用担当者によって、即戦力である基準や条件にバラつきが出てしまいます。また不明確な採用要件だと、優秀な即戦力人材の目に止まらない可能性も高まります。
選考の属人化を防ぐには、採用要件を明確化し、評価基準を統一しましょう。
採用コストが高い
即戦力採用を目指す企業は、人材紹介を利用することが多く、採用コストが高くなる傾向にあります。人材紹介の成功報酬額は、求職者の年収が高いほど高額になるため、採用にかかるコストが上昇しやすいのです。
また、即戦力となる人材は、多くの企業からオファーを受けており、採用までに時間がかかる傾向があります。採用活動が長引くほど、求人サイト掲載費や採用に携わる社員の人件費がかさんでしまうため、注意が必要です。
即戦力人材を見極める5つのポイント
即戦力かどうかを判断する際は、肩書きや在籍年数だけでなく「どのような課題をどれだけ短期間で解決し、どんな成果を生み出したか」を多面的に確認する必要があります。
具体的な成果数値、プロジェクト規模、再現可能なスキルを精査し、自社ポジションの要件と照らし合わせることで入社後の活躍度を高い精度で予測できます。
豊富な実務経験と成果実績
職務経験年数だけを見ても真の実力は計れません。売上○%向上やコスト○円削減など、達成した成果を数値で示してもらい、その背景にある施策や工夫を深掘りすることで再現性を見極めましょう。
環境適応力と学習意欲
業務フローや社内ルールが変わっても短期間でキャッチアップできるかどうかは、即戦力人材かどうかを見極める重要なポイントです。
新ツール導入時の対応事例や、最近自主的に取得した資格・オンライン講座などをヒアリングし、継続学習の姿勢を確認します。
高いコミュニケーション&チームワーク
部門横断プロジェクトで成果を上げた経験や、リモート環境下での情報共有の工夫を語ってもらうと、協働力や調整力が具体的に把握できます。周囲からの360度評価も参考材料になります。
主体性と課題解決力
指示待ちではなく自ら課題を発見し、解決に向けて動いた経験を確認しましょう。予算制約下で成果を出した事例や、失敗から学んだ改善プロセスを聞くと、変化の激しい環境での自走力を測れます。
自社カルチャーとのフィット感
企業理念や働き方への共感度が低いと早期離職のリスクが高まります。面接で価値観が分かれる場面を提示し反応を確かめるほか、現場社員とのカジュアル面談を通じて相互理解を深めることが重要です。
即戦力採用は無理じゃない!採用を成功させるポイント
即戦力となる人材を採用するのは難しいですが、必ずしも無理なことではありません。即戦力採用を成功させるポイントを押さえ、即戦力採用を成功させましょう。
採用要件を明確にする
即戦力となる人材を採用するには、求職者に求めるスキルや実績、資格などを明確にすることが大切です。
経験年数や具体的な業務経験などを明確にしておかないと、選考の際にミスマッチを誘発する可能性があります。また、スキルや実績、資格以外にも、求職者の人間性や人柄、仕事に関する価値観なども明確に設定することがポイントです。
即戦力人材のなかには、経験があるがゆえに価値観が固まっていて、新しい環境になじみにくい人もいます。企業文化や既存社員との相性が合う人物像を想定しておきましょう。
採用市場を調査する
自社が求める人材が、採用市場においてどの程度の価値があると位置づけられているのかを調査します。求める人材の市場価値を正しく理解していないと、同業他社に年収や待遇面で競り負け、求職者に選ばれない可能性があります。
求める人材の市場価値を調査するには、求人サイトに掲載されている情報を比較したり、人材紹介会社に相談したりする方法が有効です。年収の相場や同業他社が提示している条件などをリサーチすることで、求職者の正しい市場価値を把握し、効果的なアプローチができます。
カジュアル面談を実施して相互理解を深める
即戦力人材は市場価値が高く、選考につながりにくい傾向にあります。企業への志望度を高め、選考に進んでもらうには、カジュアル面談を実施し、相互理解を深めるのが効果的です。
カジュアル面談とは、選考前に企業と求職者がリラックスしながら対話し、お互いの知りたい情報を交換する機会のことです。選考の合否は出さないので、お互いに本音で話し合えます。
企業の魅力や強みをアピールして、求職者に働くイメージを持ってもらうだけでなく、求職者の人柄や仕事に関する価値観を知れる機会でもあります。
即戦力採用に向いている採用手法を選ぶ
即戦力採用を成功させるには、即戦力採用に適した採用手法を選びましょう。
即戦力採用に適した採用手法には、ダイレクトリクルーティングや人材紹介、ヘッドハンティングなどがあります。
採用手法の特徴は、次の通りです。
ダイレクトリクルーティング |
企業から求職者に直接アプローチする採用手法。料金体系は定額型と成功報酬型があり、サービスによって異なる。 |
人材紹介 |
人材紹介会社が採用要件に適した人材を紹介してくれるサービス。成功報酬型の場合が多く、年収の30〜35%が相場。 |
ヘッドハンティング |
企業の採用要件に適した人材をスカウトする方法。外部企業に依頼する場合の費用は、年収の40〜60%が相場。 |
選考プロセスの迅速化と可視化
優秀層は複数社の選考が並行しているため、書類選考から内定までを最短2週間程度で組むと成功率が上がります。
ATS(採用管理システム)で進捗を共有し、面接結果は翌営業日までにフィードバックすることで辞退を防ぎましょう。
専門性の高い面接官の配置
技術・業務知見を持つ現場リーダーを一次面接に同席させると、スキル判定のブレが減ります。人事はカルチャーフィットを確認し、評価基準を統一することで面接官ごとの判断差を抑えられます。
中途採用で即戦力を採用する際の注意点

優秀な人材を採用できれば、企業にとって心強い戦力となってくれますが、一方で、即戦力採用ならではの注意点もあります。
中途採用で即戦力を採用する際の注意点について詳しく解説していきます。
フォローやサポート体制を整える
即戦力採用では、すぐに活躍してくれるだろうと、フォローやサポート体制を疎かにしてしまいやすいため、事前に体制を整えておくことが重要です。
十分な経験を持った人材であっても、会社が変われば業務内容や仕事の進め方が異なるため、適切なフォローやサポートは欠かせません。
サポート体制が整っていないと、孤独感や不安を感じさせてしまい、早期離職につながる可能性があるため注意しましょう。
採用者が社風や経営方針になじめない場合がある
即戦力採用では、優れた経験を持っているがゆえに新しい環境になじみにくい場合があります。
採用者が社風や経営方針になじめず、周囲から孤立してしまうと、早期離職につながる可能性があるため注意が必要です。
選考段階で企業理解を深めてもらったり、候補者が自社の雰囲気に適しているか見極めたりすることで、候補者と企業とのミスマッチが防げます。
即戦力採用に固執しすぎない
即戦力採用に固執しすぎると、採用につながらず、コストや時間ばかりがかかってしまう場合があります。
即戦力採用が上手くいかないときは、本当に即戦力でなければならないのかを再考してみましょう。
たとえば、即戦力採用の目的が教育や研修にかかるリソースの削減である場合、即戦力採用ができたとしても最低限の教育や研修は必要なため、採用ターゲットを見直してみてください。
採用要件や募集背景によっては、即戦力採用にこだわる必要がない場合もあります。
経歴・資格だけで判断しない
華やかな職歴や資格は魅力的ですが、実務で再現できるかは別問題です。ケース面接や課題提出で思考プロセスとアウトプットをチェックし、リファレンスチェックで第三者の評価を取ると見極めの精度が高まります。
前職の成功体験への固執を見抜く
「前職ではこうだった」が口癖になると新しいやり方を拒む恐れがあります。過去の成功が通用しなかった事例や、そこから得た学びを質問し、柔軟性とアンラーニング力を確かめるとよいでしょう。
採用コストと既存社員のバランス
即戦力人材には高い報酬を提示しがちですが、既存社員との待遇差で不満を生まないよう、評価制度の透明性が重要です。採用ROIを半年ごとに検証し、処遇の妥当性を定期的に見直しましょう。
即戦力人材の活躍と定着を実現する受け入れ体制
採用後のフォローが不十分だと、せっかくの即戦力も力を発揮できません。体系的オンボーディングやメンター制度を整備し、早期離職リスクを最小化することが重要です。
体系的オンボーディングと初期研修
入社初日から30・60・90日の目標を設定し、業務フロー研修と実務シャドーイングを組み合わせると、学習コストを抑えつつ立ち上がりを加速できます。
メンター/バディ制度の導入
同職種の先輩をメンターに、異部門社員をバディに設定し、週1回の面談で悩みを吸い上げる体制を構築します。メンターへのインセンティブを設けると制度が形骸化しにくくなります。
定期1on1と目標設定・フィードバック
入社直後に3カ月目標を共有し、定期的な1on1で進捗確認と障害の早期解消を行います。成果だけでなく感情面をヒアリングすることでエンゲージメント向上につながります。
公平な評価・報酬体系の運用
等級ごとの評価項目と配点を開示し、成果と報酬を連動させると納得感が高まります。長期インセンティブも組み合わせ、継続的な活躍を促しましょう。
ポテンシャル採用で将来の幹部候補を育成しよう
即戦力採用が上手くいかない場合は、考え方を変えて、ポテンシャル採用で将来の幹部候補を育てることを検討してみてはいかがでしょう。新人や若手社員を早期戦力化することで、企業全体の戦力強化につながります。
将来の幹部候補を育てるには、研修やOJTなどの教育を強化したり、フォロー面談を実施して若手社員の価値観や考え方を共有したりすることが大切です。
中途採用をあきらめたくないなら「Re就活」へ
中途採用では、売り手市場が続いている影響によって、人材獲得競争が激しくなっています。即戦力人材を求める企業が多く、即戦力採用は無理だと悩んでいる方も少なくありません。
即戦力採用を目指すなら「Re就活30」がおすすめです。「Re就活30」は30代のキャリア採用に特化した採用サイトで、企業から求職者へ直接ヘッドハンティングが行えます。
また、株式会社学情では、即戦力採用だけに注力するのではなく、幹部候補となり得る若手層の採用をご提案しています。20代のキャリア採用に強い「Re就活」を活用することで、ポテンシャルの高い若手層の採用が狙えます。
20〜30代の採用をご検討されている方は、株式会社学情へお問い合わせください。

株式会社学情 エグゼクティブアドバイザー(元・朝日新聞社 あさがくナビ(現在のRe就活キャンパス)編集長)
1986年早稲田大学政治経済学部卒、朝日新聞社入社。政治部記者や採用担当部長などを経て、「あさがくナビ(現在のRe就活キャンパス)」編集長を10年間務める。「就活ニュースペーパーby朝日新聞」で発信したニュース解説や就活コラムは1000本超、「人事のホンネ」などでインタビューした人気企業はのべ130社にのぼる。2023年6月から現職。大学などでの講義・講演多数。YouTube「あさがくナビ就活チャンネル」にも多数出演。国家資格・キャリアコンサルタント。著書に『最強の業界・企業研究ナビ』(朝日新聞出版)。