近年は対面ではなく、オンライン採用を導入する企業が増えました。背景には新型コロナウイルス感染症拡大や企業の人材不足、転職者の意識変化などが理由として挙げられます。
これからオンライン採用の導入を検討している企業や、または導入したものの対面に戻すか検討している企業も多いのではないでしょうか。この記事ではオンライン採用とは何か、導入するメリットは何かなどを解説します。
オンライン採用には、対面にはない課題やデメリットもあるため、導入前に確認しておくことが大切です。オンライン採用の課題やデメリットも併せて解説するので、導入する際に役立ててください。
オンライン採用とは
まずは、オンライン採用がどのような採用方法なのかを把握しておきましょう。
採用活動をオンラインで行う手法のこと
採用活動では会社説明会や適性検査、筆記試験、面接などを実施するのが一般的です。オンライン採用とは、これらの採用活動をオンラインで行う手法です。近年、オンライン採用を導入する企業が増えています。
2022年2月に実施した「2023年卒の採用活動における『オンライン』の導入状況」に関する企業調査では、70%以上の企業がオンライン採用を実施していることがわかっています。
※出典:株式会社学情「「2023年卒の採用活動における『オンライン』の導入状況」に関する企業調査(2022年2月)」
特にここ数年は新型コロナウイルス感染症拡大により、対面での採用活動が難しくなったため、オンライン採用を導入せざるを得なくなった企業も少なくありませんでした。
また、多くの業界で人材不足が深刻化している現在では、売り手市場が続いている状況です。生産年齢人口にZ世代(1990年代半ばから2000年代に生まれた世代)の割合が増えつつある中で、オンライン採用を希望する求職者も多い傾向にあります。
Z世代には、その特性に適した採用活動が必要です。こちらの記事では、Z世代の特性や求める働き方などを解説しています。Z世代の採用活動を効率的に進めたい場合は、ぜひこちらの記事をチェックしてみてください。
オンライン採用の全体の流れ
オンライン採用の基本的な流れは、次のとおりです。
- 会社説明会
- 書類選考
- Web面接
- 選考
- 採用
オンラインの範囲は、企業によって異なります。採用活動のすべてをオンラインで行う企業もあれば、会社説明会や面接などの一部に限定している企業もあります。どの範囲までをオンラインにするかは、社内で事前に話し合っておくことが大切です。
オンライン採用を導入する5つのメリット
オンライン採用は時間や交通費などを削減できるため、求職者にもメリットがあります。一方で企業側にも採用コストを抑えられる、面接官のスキル向上に役立つなどのメリットがあります。
遠い地域の人材を獲得できる
対面の場合、地方に住んでいる求職者は、筆記試験や面接のために指定された場所まで出向く必要があります。遠隔地に出向くには交通費もかかるため、それが原因で優秀な人材が応募を断念するかもしれません。
しかし、オンライン採用は時間や場所にとらわれないため、地方に住んでいても選考を受けやすくなります。
「2023年卒の採用活動における『オンライン』の導入状況」に関する企業調査(2022年2月)では、オンライン採用で遠方学生のエントリーが増えたと回答した企業が74.3%だったことがわかっています。
遠方の学生のエントリーが増加した |
割合 |
当てはまる |
35.1% |
やや当てはまる |
39.2% |
どちらともいえない | 19.0% |
あまり当てはまらない | 3.3% |
当てはまらない | 3.4% |
導入していない競合他社との差別化ができる
自社にオンライン採用を導入すれば、まだ導入していない競合他社との差別化が図れるため、応募者が増える可能性があります。コロナの影響は緩和されましたが、地方在住者の面接希望やテレワークでの勤務を望む求職者の数は依然増加している傾向にあるため、採用の幅は広がるに違いありません。
また、採用活動に関わらず、仕事に関わる業務内容のオンライン化は求職者にポジティブなイメージを与えることができます。オンライン採用を導入している企業は、社内でもテレワークやフレックスタイム制度を導入しているケースが多い傾向にあります。
オンライン採用によって、柔軟性が高い企業であることを印象づけられれば、働きやすい労働環境が整備されていることをアピールできます。
採用コストを抑えられる
社外で会社説明会を開くには、会場費や担当者の交通費が必要になります。新幹線や飛行機の利用が必要な地方では、交通費が高額になるケースも珍しくありません。
しかし、オンライン採用は、会場や担当者の交通費が不要です。会場設営に必要だった人件費も削減できるため、採用コストを抑えられます。
選考にかかる時間を短縮できる
対面の場合、選考に必要な場所の選定や確保、担当者の配置が必要になるため、スケジュール調整に時間がかかりがちです。一方のオンライン採用は、選考に必要な環境が整備されていれば、時間や場所に左右されることなく対応できます。
たとえば、面接担当者が出張中でも、移動時間を利用して面接をすることも可能です。求職者と面接担当者の都合で面接を設定できるため、スケジュール調整しやすい点が魅力のひとつです。
また、オンライン採用はスケジュールを調整しやすいため、選考スピードを短縮できます。選考に時間がかかれば、途中辞退を招くかもしれません。しかし、オンライン採用で内定までのスピードが早ければ、求職者からの印象アップも期待できます。
面接官のスキル向上に役立つ
オンライン採用に使用するツールによっては、面接を録画することが可能です。採用担当チーム内で面接の様子を振り返り、担当した面接官に対してアドバイスができるため、面接の改善や面接官のスキル向上に役立ちます。
また、録画した映像は、ノウハウを共有できる教材として使用することも可能です。
応募者の資質を的確に判断するため、面接官のスキル向上は重要になります。
オンライン採用の導入における4つの課題・デメリット
オンライン採用には採用コストを削減できる、選考スピードを短縮できるなどのメリットがある一方で、いくつか課題もあります。課題やデメリットを把握しておけば、導入前に適切な対策を講じることが可能です。
集団面接には向かない
選考過程の中で、集団面接を取り入れている企業もあります。しかし、オンライン採用ではタイムラグの影響により、集団面接が上手く進められない可能性があるので注意しましょう。
また、求職者の中には、オンラインでのコミュニケーションに慣れていない人もおり、本来のコミュニケーション能力を十分に発揮できないケースも考えられます。他者とのコミュニケーション能力を把握しにくい点から、オンライン採用では集団面接を行わないという企業もあります。
通信トラブルのリスクがある
オンラインである限り、選考中に通信トラブルに見舞われるリスクがあります。通信が不安定になり音声や画像が途切れれば、選考を上手く進められない可能性があるので注意しましょう。
通信の良し悪しは企業側だけでなく、求職者側の環境も大きく影響します。通信機器の過不足によっては、求職者の不公平が生まれることもあります。企業側は通信トラブルのリスクを想定し、不安定になったときの対処法を求職者に伝えておくようにしましょう。
対面と比べると得られる情報量が少ない
オンライン採用では求職者の顔がモニターを通じて表示されるため、対面に比べて表情や声の変化を把握しにくい側面があります。そのため、緊張度や質問に回答しているときの態度も読みづらいのが現状です。
また、オンラインの環境では、聞き間違いやコミュニケーションミスが発生しやすくなります。画面越しでは求職者から得られる情報が限られるため、面接は対面と組み合わせるといった工夫も必要です。
社内を見学してもらうことができない
オンライン採用で伝わりにくいのは、求職者の表情や声の変化だけではありません。採用活動のすべてをオンライン化する場合、職場見学の機会がないため、社内の雰囲気や人間関係の様子を味わってもらえません。
職場見学は、入社後のミスマッチを防ぐためにも重要なイベントです。株式会社学情の「20代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(選考で実施して欲しいこと・知りたいこと)2022年7月版」では、ヤングキャリアの求職者が選考過程で実施して欲しいことの1位が職場見学だったことがわかっています。
選考の過程で実施して欲しいこと | 割合 |
職場見学 | 54.6% |
カジュアルな面談 | 54.1% |
会社説明会・TPOセミナー | 36.2% |
社員との座談会 | 24.8% |
インターン・ワークショップ | 18.8% |
その他 | 0.5% |
あてはまるものはない | 6.0% |
静止画や動画だけでは、情報量が限られてしまいます。社内の雰囲気を感じてもらうには、オフラインの職場見学を実施し、ミスマッチを防ぐ工夫が必要です。
【準備編】オンライン採用を成功させるためのポイント
ここからは、オンライン採用を成功させるためのポイントを状況別に解説します。オンライン採用ではオンラインならではの課題があるため、万が一のトラブルに備えておくことが大切です。
オンライン化に必要なツールを導入する
会社説明会をオンライン化したい場合、Web会議ツールを導入しましょう。個人のSNSではプライベートが切り離せず、トラブルに発展するリスクがあるため、使用は避けることをおすすめします。
Web会議ツールは数多くあるため、次の項目を比較して自社に適したものを選びましょう。
- 機能
- 料金体系
- セキュリティレベル
- 他ツールとの連携
- サポート体制 など
Web会議ツールは求職者にも操作してもらう必要があるため、使いやすさも確認しておくことも大切です。
また、求職者と採用担当者がコミュニケーションを取るための、ビジネスチャットツールも必要です。Web会議ツールやビジネスチャットツールの多くは、トライアル期間が設けられています。トライアル期間中に採用担当者が実際に試し、自社で使いやすいかを確認しておきましょう。
企業側の面接環境を万全にする
オンライン採用では、音声や動画が乱れる通信トラブルが起きる可能性があるため、面接に適した環境を整備する必要があります。面接担当者の声が届き、求職者の声をきちんと拾うためにも、静かな場所を準備することをおすすめします。
ワークスペースの一角では周囲の雑音が入るため、できれば個室を準備しましょう。また、面接をスムーズに進めるためにも、面接担当者はWeb会議ツールを使いこなせるようにしておく必要があります。
面接できなかった場合の対策を用意しておく
オンライン採用に向けて万全な準備を整備していても、通信トラブルが起きるリスクがあります。通信トラブルはすぐに復旧するとは限らないため、面接できなかった場合に備えておくことが大切です。
万が一求職者側の通信トラブルで面接できないときでも、別日程で調整することを伝え、安心してもらうようにしましょう。通信トラブルによって企業からの連絡が途絶えると、途中辞退につながる可能性もあります。
【面接編】オンライン採用を成功させるためのポイント
オンライン採用は対面とは異なる環境になるため、質問内容や伝え方に工夫が必要です。
アイスブレイクを用意する
オンライン採用ではいきなり面接がスタートするため、最初は緊張が高まる求職者もいるかもしれません。高い緊張感のまま面接が始まると、質問しにくかったりアピールしにくかったりする可能性があります。
面接担当者は求職者の本来の実力を発揮できるよう、アイスブレイクを用意しておきましょう。アイスブレイクの話題例は、次のとおりです。
- 面接当日の天気に関する話題
- 休日の過ごし方に関する話題
- ツールの使い方に関する質問
- 面接担当者の自己紹介 など
本格的に面接がスタートする前に雑談をはさむと、緊張が和らぎ、求職者の考えを引き出しやすくなります。
できるだけ多方面から質問する
対面の場合、応募者はメモを見て受け答えできないため、緊張が高まりやすい傾向にあります。一方のオンライン採用はメモを見ながら受け答えできるため、緊張が和らぎます。
ただし、メモを見ながらの面接では、事前に用意した考えしか得られません。オンライン採用ではその場で考えた答えを引き出せるよう、多方面からの質問を心がけましょう。
大きめのアクションを心がける
オンラインの面接では、対面に比べて相手に理解度が伝わりにくい側面があります。求職者と上手くコミュニケーションを取るには、大きめのアクションを意識するのも手段のひとつです。
たとえばはっきりとした笑顔を作る、相槌を大きめに打つなどです。画面越しではわかりにくかった表情や雰囲気でも、アクションを大きくすることで伝わりやすくなります。
【採用編】オンライン採用を成功させるためのポイント
オンライン採用では、求職者に企業の魅力が十分に伝わらない可能性があります。そのため、一部を対面にしたり内定後のフォローを十分にしたりするなどの工夫が必要です。
すべてをオンラインにしない
オンライン採用では、求職者に実際に社内を見学してもらえないため、自社の魅力が十分に伝わらない可能性があります。採用活動はすべてオンラインに切り替えるのではなく、必要に応じて対面も取り入れましょう。
たとえば、会社説明会や面接だけをオンラインにするのも選択肢のひとつです。オンラインと対面を組み合わせると、選考スピードや準備すべきものが変動します。どの部分をオンラインにするかは、最初の段階で社内で話し合っておきましょう。
企業主催のイベントを開催する
採用活動をオンライン化する際には、通常の会社説明会とは別に、求職者に自社を知ってもらうためのイベントを開催しましょう。対面で会えないからこそ、接する機会を増やすことが大切です。説明会では伝えきれない自社の魅力を感じてもらうことができます。
たとえば、社員も参加するディスカッションや座談会などです。社員と交流できる場を設けると対面でコミュニケーションが取れるため、自社の魅力を理解してもらうきっかけになります。
内定後は定期的にフォローする
オンライン採用を導入する際には、内定後も内定者をフォローできる環境を整備しておきましょう。オンラインで定期的にフォローできる体制を敷いておくことで、内定者の入社までの不安を軽減できます。
内定者インタビューや社内ニュースなどは内定者にとって有益な情報になるため、入社への意欲を高めることが可能です。また、内定者同士のオンライン交流会を開催すると、入社前に親睦を深められます。
オンライン採用は対面とのバランスが重要
オンライン採用を導入すると、企業側には遠い地域の優秀な人材を確保できる、採用コストを抑えられるなどのメリットがあります。時間や交通費を削減できるといった求職者側のメリットもあるため、オンライン採用を導入すると、応募者が増える可能性があります。
しかし、通信トラブルや得られる情報量が少ないなど、オンラインならではの課題もあります。必要に応じて対面を取り入れたり、説明会以外のオンラインイベントを開催したりするなど工夫してみましょう。
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