採用活動では、企業側から応募者に不採用を通知しなければならない場面があります。特に面接まで進んだ応募者に不採用を伝えるのは、採用担当者にとっても辛い仕事です。不採用を通知する際は、応募者の気持ちに配慮して丁寧かつ真摯な態度で伝える必要があります。
本記事では「不採用をどのような手段で伝えたらよいのかわからない」「具体的に、何を伝えたらよいのか」と悩む採用担当者に向けて、企業側から面接を断る際の基本的な内容やポイントについて解説します。手段別の例文や注意点も紹介しているので、採用面接の合否結果を通知する採用担当者はぜひ参考にしてください。
企業側から面接を断る際は伝え方が重要
面接を断る際は、企業側から応募者に不採用を伝えなければなりません。
不採用の通知は応募者にとってネガティブな内容です。伝え方によっては、応募者に不快感を与えてしまい、企業イメージの低下につながる恐れがあります。
不採用の通知は丁寧かつ慎重に対応しましょう。応募者の心情に配慮した対応をすれば、不採用だった場合でも、その企業に対してのマイナスイメージを払拭できる可能性が高まります。
企業側からの面接の断り方
企業側から応募者への面接の断り方は、おもに3つの方法があります。
- メール
- 電話
- 書面
基本的に、書面よりもメールもしくは電話で通知するケースがほとんどです。最近では、求人媒体に付いているメッセージ機能やチャット機能の利用も増えています。これらの連絡手段を使用することで、より迅速に採用結果を通知できます。
電話であれば、応募者との直接的なコミュニケーションを取れるため、より真摯に向き合っていることを示すことができます。
もし紙ベースでの応募書類を返却する必要がある場合は、不採用通知を同梱して郵送できる書面での通知が望ましいと言えるでしょう。
企業側から面接を断る際のポイント
面接の断りを入れる際は通知のタイミングや内容に配慮する必要があります。具体的にどのようにできるのか見ていきましょう。
速やかに通知する
不採用の結果は、速やかに通知することを心がけます。応募者は、面接の結果がわかるまで不安な気持ちで過ごしているケースがほとんどです。なかには、結果がわかるまで次の企業への応募を控えている人もいるでしょう。
そのため不採用の結果は、面接から1週間以内を目安に通知することが望ましいとされます。企業側の事情で通知が遅れるときには、その旨をあらかじめ伝えておくようにしましょう。
感謝の気持ちを伝える
企業側から面接を断る場合、感謝の気持ちを伝えることは重要です。感謝の気持ちを伝えることで、応募者に対する敬意や礼儀を示すことにつながります。
応募者は数ある企業の中から自分に合った求人を探し出し、必要書類を綿密に準備した上でエントリーしています。たとえ採用に至らなかった場合でも、貴重な時間を割いて応募してもらったことや、応募者と将来的に関わる可能性があることを示すことで感謝の気持ちを伝えることができます。
真摯な対応を心がける
不採用の結果を通知する際には、受け取る応募者の気持ちを考慮することが大切です。どの応募者に対しても対等に真摯な対応を心がけましょう。
面接を受けた応募者の中には、現時点では採用には至らなくても、将来的に優秀な人材として採用される可能性があります。また真摯な対応を通じて、応募者は企業の評判やブランドに対して、良いイメージを持つ可能性が高まるでしょう。
そのため、すべての応募者と今後何らかの形でかかわることを意識して、真摯な対応をとるように心がけることは重要だと言えます。
具体的な手法としては、「【手段別】面接を断る際の例文」の章で詳しく解説します。
面接を断る際に伝える基本的な内容
不採用を通知する際は、どの手段でも伝える内容は基本的に同じです。次の項目を伝えましょう。
- 応募者の氏名
- 自社に応募してくれたことへの感謝
- 面接会場に足を運んでくれたことへのお礼
- 選考結果
- 応募書類の処理方法
- 担当者の氏名
最近では、就職活動に関する情報収集や企業との連絡手段は、メールが主流になっています。
メールで不採用を通知する際は、ほかの受信メールに埋もれて応募者が見逃してしまう可能性があるため、件名を一目見ただけで内容がわかるようにしましょう。
【手段別】面接を断る際の例文
ここからはメール・電話・書面の例文を紹介するので、通知文を作成する際の参考にしてください。
メール
メールでは、件名を見ただけで「どこからどのような内容が送付されたのか」がわかるように工夫することが大切です。
例文1
本文:
【姓名】様
こんにちは。【社名】 採用担当です。
この度は弊社の選考にご参加いただきまして誠にありがとうございます。
慎重に選考いたしましたが、誠に残念ながら、
ご期待に添えない結果となりましたので、ご通知申し上げます。
残念ながら弊社とはご縁がございませんでしたが、
【姓名】様にとって素敵な会社に出会える事を願うとともに
今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。
また何かの形で弊社とのご縁がございましたら、その際はよろしくお願いいたします。
この度は多数の企業のなかから弊社に関心を持って
採用選考にご応募いただき本当にありがとうございました。
署名
例文2
本文:
【姓名】様
【社名】の採用担当です。
この度は、弊社の選考会にご参加いただきありがとうございました。
厳正なる審査の結果、誠に残念ではございますが、【姓名】様の採用を見送らせていただくこととなりました。
ご期待に添いかねることとなり大変恐縮ですが、何卒ご理解くださいますようお願い申し上げます。
今後ご縁のあった企業様でお仕事をされる【姓名】様と、いつお会いしても恥ずかしくないように、我々もさらに成長できるように精進して参ります。
末筆ではございますが、これからの【姓名】様のご活躍を心から応援しております。
署名
例文3【新卒向け】
本文:
【姓名】様
こんにちは。【社名】の【担当名】です。
先日は選考へご参加いただき、ありがとうございました。
お待たせしておりました選考の結果をご連絡させていただきます。
厳正なる審査の結果、残念ながら貴意に沿いかねることとなりました。
大変申し訳ございません。心苦しい限りですが、何卒ご理解くださいますよう、よろしくお願いいたします。
多数の企業のなかから弊社を選び、ご応募いただきましたことを深謝致しますとともに、今後の就職活動、および学生生活が有意義なものになりますよう、祈念しております。
弊社との出会いが、【姓名】様の今後の就職活動の糧となりましたら幸いです。
お身体にはくれぐれもお気をつけいただき、頑張ってください。
選考へのご参加、誠にありがとうございました。
署名
電話
電話で不採用を通知する場合は、応募者と連絡が取りやすい時間帯を選ぶようにしましょう。留守番電話に接続されてもメッセージを残すのではなく、あらためて電話をかけなおして、直接伝えることが大切です。
【社名】の【担当名】です。【姓名】様のお電話でお間違いないでしょうか。
ただいまお時間よろしいでしょうか。
先日は選考へご参加いただき、ありがとうございました。
厳正なる審査の結果、残念ながらご希望に沿いかねることとなりました。
大変申し訳ございません。心苦しい限りですが、何卒ご理解くださいますよう、よろしくお願いいたします。
これからの【姓名】様のご活躍を心からお祈りしております。
書面
応募書類を返却する場合は、採用通知の書面と同梱すると良いでしょう。例文としては、次のとおりです。
【姓名】様
令和〇年〇月〇日
選考結果のご連絡
拝啓
先日は選考へご参加いただき、ありがとうございました。
厳正なる審査の結果、誠に残念ではございますが、【姓名】様の採用を見送らせていただくこととなりました。
ご期待に添えかねることとなり大変恐縮ですが、何卒ご理解くださいますようお願い申し上げます。
お送りいただいた応募書類を同封致しましたので、ご査収ください。
末筆ではございますが、これからの【姓名】様のご活躍を心から応援しております。
敬具
【社名】【担当名】
企業側から面接を断る際の注意点
不採用通知は、応募者に結果さえ伝えればよいというわけではありません。応募者に対して真摯な対応を心がけるとともに、内容に失礼がないかを確認することも大切です。
応募者情報に誤りがないか確認する
不採用結果を通知する前に、相手の氏名や連絡先などの応募者情報に誤りがないかを確認しましょう。不採用の結果を通知する相手だからこそ、最後まで失礼のないようにすることが重要です。
どの手段を利用する場合でも事前にダブルチェックし、ミスが起きない対策をしておくことが大切です。
否定的な表現は避ける
選考結果の通知には「不採用」や「不合格」のようなネガティブな表現を使用しないようにしましょう。応募者にとって、不採用の通知を受けることはただでさえ精神的な負担になります。
ネガティブな表現で自信を失わせてしまい、今後の就職活動に影響を与えるかもしれません。内容によってはトラブルに発展するリスクもあります。
例文でも取り上げたとおり、不採用通知には「採用を見送らせていただくこととなりました」「貴意に沿いかねることとなりました」と、伝え方の配慮を欠かさないようにしましょう。
将来的に関わる可能性を考慮する
不採用結果を通知する際には応募者と将来的に関わる可能性を考慮し、丁寧な対応を心がけましょう。今回はご縁がなかったとしても、今後もしかしたら自社の顧客や取引先になるケースもあります。
また優秀な人材として、数年後に採用する可能性も少なからずあるでしょう。そのため、将来を見越した真摯な対応が求められるのです。
企業側から面接を断る際によくある質問
不採用の理由は伝えるべきか
法律上、応募者に不採用の理由を伝える義務はありません。理由を伝えることでトラブルに発展するリスクもあるため、伝えないという選択も可能です。ただし、応募者から理由を聞かれるケースがあります。
もし応募者から理由を聞かれた場合は、「選考結果の詳細に関しましては、自社の方針で開示できかねます」「ほかの応募者との相対評価で、今回の選考結果に至りました」など、具体的な理由は言及せずに対応するようにしましょう。
しかし、面接結果をフィードバックする企業に多くの学生は好印象を持つようです。不採用結果の通知であっても、「ここは良かった。今後は〇〇を改善するとよい結果につながるかもしれません」といったアドバイスを書き添えると、学生の役に立ちますし、今後を応援する気持ちがより伝わるかもしれません。
応募書類はどのように処分するべきか
応募書類は、応募者から提出された時点で所有権が企業側に移転します。そのため企業には応募書類の返却義務はありません。
ただし個人情報の保護を目的に、応募書類の処理方法を不採用通知に明記したほうが良いとされています。通知を送付したあとは、返却または破棄のいずれかで対応する企業がほとんどです。
また、今回は採用に至らなくても、自社も求める条件に近い応募者なら、タレントプールにデータを蓄積しておくのも一つの方法です。
不採用結果を通知する際には応募者の気持ちに配慮しよう
応募者にとって、不採用の結果が通知されることは精神的なダメージになります。伝え方次第では企業にネガティブな印象を与え、トラブルに発展するかもしれません。
特に近年はSNSの利用者が増えているため、企業の不誠実な対応がネット上に拡散されるリスクもあります。応募者の心情や企業のイメージなどを考慮し、丁寧かつ真摯に対応することが大切です。
不採用通知の作成・送付は企業担当者にとっても手間のかかる作業です。応募者が多いと、その分、不採用通知の数も増えます。こうした作業の負担軽減をお考えであれば、自社が求める人材を効率的に見つけられる転職サイトの利用をおすすめします。
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株式会社学情 エグゼクティブアドバイザー(元・朝日新聞社 あさがくナビ編集長)
1986年早稲田大学政治経済学部卒、朝日新聞社入社。政治部記者や採用担当部長などを経て、「あさがくナビ」編集長を10年間務める。「就活ニュースペーパーby朝日新聞」で発信したニュース解説や就活コラムは1000本超、「人事のホンネ」などでインタビューした人気企業はのべ130社にのぼる。2023年6月から現職。大学などでの講義・講演多数。YouTube「あさがくナビ就活チャンネル」にも多数出演。国家資格・キャリアコンサルタント。著書に『最強の業界・企業研究ナビ』(朝日新聞出版)。