HR用語の基礎知識
「母集団が集まらない」「ほしい人材が応募してくれない」という悩みは、人事によくみられます。特に地方では、少子高齢化の影響で人材確保が困難になっている企業もあります。
地方で人材が集まらないときには、都会から地方への転職を考えているUIJターン希望者の採用を検討するのも一つの方法です。UIJターンとは、Uターン、Iターン、Jターンを合わせた人事用語です。
本記事ではUターン、Iターン、Jターンそれぞれの意味や採用のポイントなどを解説します。ぜひUIJターン希望者にアプローチする際の参考にしてください。
UIJターンとは、Uターン、Iターン、Jターンの3つの概念をまとめた言葉です。いずれも今住んでいる場所から移住するという特徴があります。ここでは3つの概念を解説します。
進学や就職などで都会に移り住んでいた人が、地元に戻ってくることをUターンといいます。
たとえば、「都会の大学に入学し、就職を機に地元に戻る」ケースや「結婚、子育てをきっかけに」「介護のため」「愛着のある地元で生活したい」など都会から地元に戻る理由は人によってさまざまです。
Iターンは、生まれた地元を離れる人を指します。
代表的な例は、都会出身者が地方へ移住するケースです。たとえば、都会で生まれ育った人が地方の企業に転職するケースがあります。
UIJターン人材を対象にした採用には、さまざまな利点があります。ここではメリットについて解説します。
UIJターン人材の採用は地方の企業にとって、新しい知識や経験を取り入れるチャンスになります。
ほかの地域で生活した経験を持つUIJターン人材は、同じ地域で育った人とは異なる経験・感性を持っているため、新しいノウハウや多様な視点を取り入れられる可能性があるでしょう。
UIJターン人材は、都会に住んでいたり、働いていたりする経験を持ちます。そのため、地方での生活や魅力を客観的に捉えているのがメリットです。
UIJターン人材を採用すれば、企業がこれまで把握していなかった地域の新しい魅力の発見にもつながります。
UIJターン希望者を採用するには、移住への悩みを知っておくと対応しやすくなります。
一般的に、地方企業の賃金は都会よりも低い傾向にあります。厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」によると、賃金の高い5都市は、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県であり、いずれも都会と言える地域でした。
また最も賃金が高い東京都は37万5,500円で、最も低い青森の24万7,600円と都道府県によって大きな開きがあります。
UIJターン希望者は地方に移住することで「収入が下がるのでは?」「生活に困ったらどうしよう」と収入面での不安を覚えやすいようです。
応募者の不安を解消するためには「都会との物価の違いを紹介する」「社内に移住支援制度を設ける」「自治体の支援制度の理解を深める」などの対策が必要です。
特に自治体の支援制度に関しては、企業側に求められる条件もあります。UIJ希望者を安心させられるように、自治体に問い合わせて不明点を解消するなど、企業側が応募者へ積極的に情報提供できるようにすることが大切です。
※出典:「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/)
UIJターン希望者は就職・転職先の企業から離れた地域に住んでいます。そのため、「面接や下見のたびに交通費や宿泊費がかさむのでは?」「引越しにどれぐらいの費用がかかるのだろう?」と悩む人もいるでしょう。
面接での交通費の負担を軽減するには「二次面接や最終選考にかかる費用を企業負担とする」「面接はオンラインで行う」といった方法があげられます。
さらに採用が決定し、移住する場合は「企業が支度金を支給する」ほか、条件が合えば「国や自治体の移住制度を利用する」ことも可能です。
たとえば、宅地を無償で貸付・譲渡したり、引越し費用・当面の生活資金に使える助成金を用意する自治体もあります。
UIJターン希望者の多くは、地方へ移住することで「家族とゆっくり過ごしたい」「趣味を充実させたい」とワーク・ライフ・バランスの両立を重視する傾向にあります。
そのため、採用にあたっては、リモートワークやフレックス制度、短時間勤務を導入するなど柔軟な働き方を検討してみるのもよいでしょう。
またワーク・ライフ・バランスの推進は、UIJターン希望者に限らず全社員対象で行うと、既存社員の長期安定も図れます。
UIJターン希望者へ効果的にアプローチするためには、ポイントをおさえて採用を行わなければなりません。ここでは5つのポイントを解説します。
採用を成功させるには、UIJターンの採用を積極的に行っている企業であることをアピールするのがポイントです。
たとえば求人サイトや自社ホームページの採用情報に「UIJターン」「地方移住」「地方就職」といったキーワードを記載する、自社ホームページに地方移住者向けの採用コンテンツを増やすといった方法があります。
また採用に、UIJターン限定枠を設けるのもよいでしょう。企業が求める人材要件に自分が当てはまっていると感じられると応募してもらいやすくなります。
採用方法には「求人広告を出す」「求人サイトを活用する」などさまざまな方法があります。
遠方に住むUIJターン希望者の採用には、オンライン合同企業セミナーの利用がおすすめです。会場を確保する必要がない、遠方の求職者にも気軽に参加してもらえるといったメリットがあります。
あさがくナビでは、過去にUIJターン就職応援のWeb就職博を開催しています。また、地方での就活イベントも随時開催しています。就職活動をしている求職者にアプローチが可能なため、企業の採用担当の方はぜひ検討してください。
地方でのリアルイベントもハイブリッドで開催しております。出展にご興味がありましたらぜひお問い合わせください。
選考では、オンライン面接の導入を検討しましょう。面接のために移動や宿泊の必要がないので、遠方に住む求職者の金銭的、身体的な負担を軽減できます。
オンライン面接ではSkypeやZoomといったツールを利用する方法があります。社内で使い方や評価方法を共有しておきましょう。
また、求職者には事前に操作方法や手順のマニュアルを作成して送付する、トラブル時の対処法を決めておくといった配慮が必要です。
UIJターン希望者の悩みとして、金銭的な問題があります。
たとえば年功序列を採用している企業では、成果を出しても長期間勤めている人や年齢を重ねている人のほうが優遇される傾向にあります。
UIJターン転職者は「成果を出しても昇給・昇進につながらない」と思い、モチベーションが下がる可能性も否めません。そのため、給与はなるべく実力に見合った額を提示しましょう。
学情では地方に住む20代を対象に「20代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(住む場所の希望)2023年4月版」を行いました。
「コロナ禍で、住む場所についてどのような変化がありましたか?」という質問では、地方に住む20代の23.3%が「地方に住みたいと思うようになった」と答えています。
首都圏に住みたいと考えている人のほうが多いものの、地方に住みたいと考える若者も一定数いることが分かっています。
また、2023年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象に「就職活動に関するインターネットアンケート」を実施したところ、地方での就職について「新型コロナウイルスの流行により、地方での就職を希望するようになった」と回答した学生が82.9%に上りました。
厚生労働省では東京圏からの移住者を雇い入れた事業主に対し、その採用活動に要した経費の一部を助成しています。(=中途採用等支援助成金(UIJターンコース))
助成を受けるためには、厚生労働省が要求する要件を満たしていなければなりません。また、制度への登録や採用計画書の提出を行い、対象労働者を雇い入れる必要があります。
厚生労働省の「中途採用等支援助成金(UIJターンコース)」で要件を確認し、手続きを行いましょう。
本記事では、雇用に関する法律として「男女雇用機会均等法」「職業安定法」「労働施策総合推進法」を、労働条件・労働環境に関する法律に「労働三法」「労働安全衛生法」を、さらに多様な働き方に関する法律として「労働者派遣法」「パートタイム・有期雇用労働法」「育児・介護休業法」などを解説しました。
人事はこれらの法律を事前に把握し、法や制度の施行・改正時には正確に対処できるようにしましょう。厚生労働省のサイトをチェックしたり、メールマガジンに登録したりして、常に最新情報の入手を心がけることがポイントです。
また、法や制度の施行・改正の際は、原則だけでなく特例や例外も正確に把握しましょう。情報を見落とすことがないよう、細部まできちんと確認することが重要です。