HR用語の基礎知識
ホワイトカラーエグゼンプションは労働賃金を時間ではなく成果で評価して決める制度です。日本では高度プロフェッショナル制度として導入され、近年推進されている働き方改革の一貫として働き方改革関連法案でも提示されています。
本記事では、ホワイトカラーエグゼンプションが企業にどのような影響を及ぼし、どのように企業の生産性に寄与するかなどを詳しく説明します。ホワイトカラーエグゼンプションへの理解を深める参考としてご覧ください。
※本記事の参考元:「高度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説」厚生労働省
高度プロフェッショナル制度の対象となるのは、高度な専門知識を必要する業務です。「時間をかければかけるほど成果が上がる」とされるようなものとは異なる仕事を行う労働者にのみ、制度を適用できます。
たとえば次のような業務を行う人が該当します。
これらの業務は専門的な知識とスキルが求められ、直接的な時間労働による生産性が限定されるため、成果に基づいた評価と報酬が適用されます。
また、業務の労働時間の具体的な指示を受ける場合は、制度の適用対象から除外されることに注意しましょう。
対象業務と年収・労働条件などを満たしても、会社が一方的に労働者へ高度プロフェッショナル制度の適用を命じることはできません。対象労働者の同意や労使委員会の決議が前提となります。
実務上のプロセスは、次の流れで行うことになります。
まずは労使委員会の設置が求められます。労使委員会の設置要件は、次の条件で定められています。
制度の導入が労働者の利益に適合すると判断された場合、制度の導入プロセスを進められます。
労使委員会を設置したら、社内で導入する高度プロフェッショナル制度の内容について決議します。決議を取る対象は次のとおりです。
決議は所轄の労働基準監督署⻑に届出を行う必要があります。使用者である会社側が決議を届け出なければ、⾼度プロフェッショナル制度を導⼊できないため注意しましょう。
ホワイトカラーエグゼンプションを企業に導入することで、次の3つのメリットが期待できます。
日本での厳密な名称は高度プロフェッショナル制度となりますが、得られるメリットは共通しています。それぞれの詳細を見ていきましょう。
ホワイトカラーエグゼンプションの導入にはおもに次のデメリットがあげられます。
労働時間の規制がないため、自由に働くことができる一方、成果の達成に時間がかかる業務では、納期に追われたり評価が低下することを恐れて長時間労働に陥る可能性があります。
また、成果を基準とした評価基準は、業務の種類によっては難しいものになります。成果の定義を明確にし、公平な評価を行うために配慮が必要です。
さらに、自由な働き方や成果主義は、他の従業員にとって不公平に映る可能性があります。他の従業員が働いているのに制度適用者が自由な働き方をすることで、不満やモチベーションの低下が生じる恐れがあります。
ホワイトカラーエグゼンプションを導入する際は、これらのデメリットを事前に理解し、適切かつ公平な対策を講じることが重要となるでしょう。
ホワイトカラーエグゼンプションを導入をする場合は、次の3つのポイントをおさえておきましょう。
後から思わぬリスクを抱えたり、トラブルが起きることを防げます。それぞれの詳細を見ていきましょう。
ホワイトカラーエグゼンプションを導入する企業は、次の選択的措置の実施が求められています。
勤務時間のインターバルの確保では、始業から24時間を経過するまでに11時間以上の休息期間の確保が求められます。また、深夜業の回数制限(1カ月に4回以内)もあります。
健康管理時間(対象労働者が事業場内にいた時間と事業場外において労働した時間の合計)措置では、1週間当たり40時間を超えた時間について、1カ月について100時間以内、または3カ月について240時間以内とすることが求められます。
1年に1回以上の連続2週間の休日を与える場合には、本⼈が請求した場合は連続1週間を2回以上をあたえることもできます。
臨時の健康診断は、1週間当たり40時間を超えた健康管理時間が1カ月当たり80時間を超えた労働者、または申出があった労働者が対象となります。
これらのなかから必要なものを労使委員会で決議し、導入しなければなりません。対象候補の労働者の意⾒を聴き、どのような措置を選択するか決定しましょう。