HR用語の基礎知識
厚生労働省の「平成14年雇用管理調査結果の概要」によると、自社に人事考課制度を取り入れている企業は51.0%、これから導入予定の企業は11.0%であることがわかります。
まずは人事考課とは何か、人事評価制度との違いは何かについて理解を深めましょう。
※厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/kanri/kanri02/3-3.html)
人事考課は、企業と従業員の方向性を合わせるきっかけの一つになります。人事考課の評価基準は、企業ごとに決められます。よって自社のビジョンや経営計画に基づいた基準を策定すれば、従業員に方針を示すことが可能です。
また、求職者の中には、企業の風土や考え方が合わずに離職した人も少なくありません。
「20代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(転職理由)2022年7月版」では、風土や考え方が合う企業を求めて離職した人が20%以上だったことがわかっています。
人事考課は、従業員一人ひとりの能力を企業が正しく判断するためのものさしになります。正当な評価が叶うので、従業員に適切な給与と役職を与えることでモチベーションアップが期待できます。
また、「20代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(転職理由)2022年7月版」では、「もっと頑張りが評価される環境で働きたい」といった企業に対する評価への不満によって離職した人が6.2~14.2%だったことがわかっています。
人事考課によって正しく評価をされれば、従業員のロイヤリティを高められるでしょう。人事評価エラーとは、評価者の主観や感情が影響して偏った評価が行われることです。たとえば、公私ともに交流がある従業員は高く評価する、性格が合わない従業員は通常よりも厳しい評価をするなどのケースがあげられます。
人事評価エラーには、さまざまな種類があります。代表的なエラーの種類は、次のとおりです。
人事評価エラーの種類 | 内容 |
ハロー効果によるエラー | 特定項目が高く評価された場合に、ほかの項目も同じように評価してしまうこと |
先入観によるエラー | 年齢・性別・学歴などの先入観で評価してしまうこと |
帰属によるエラー | 外的要因から過大評価、過小評価してしまうこと |
近時点効果によるエラー | 対象期間外の成果や業績を評価に結びつけてしまうこと |
厳格化傾向によるエラー | どの従業員に対しても通常よりも厳しく評価してしまうこと |
寛大化傾向によるエラー | どの従業員に対しても通常よりも甘い評価をしてしまうこと |
人事評価エラーが起きると、公平性のある評価ができません。そのため、評価者は人事評価エラーが起きるリスクを把握し、公平性を担保するよう心がける必要があります。
情意考課とは、業務に対する姿勢や協調性、責任感などに関する評価です。おもな評価基準は、次のとおりです。
情意考課は、企業への貢献度や利益貢献度が直接影響しないため、経験や知識が未熟な従業員でも、仕事への取り組み次第で高い評価を得られるケースもあります。
また、上記項目に対する評価は、上司や同僚、部下などのさまざまな立場からの評価を加味して算出されるのが一般的です。
業務考課のように目に見える基準がないため、評価者の主観や感情に左右しないよう留意しながら、人事評価エラーが起きにくい体制を整備することが大切です。
人事考課の評価基準は、企業ごとに策定します。厚生労働省の公式サイトに人事考課表の例が掲載されているため、そちらを参考にしてみましょう。
ただし、企業の評価基準は、事業内容や戦略などによって異なるため、モデルケースをそのまま使用しても効果は期待できません。
自社に適した評価基準を策定するには、企業理念やビジョンなど、さまざまな項目を考慮することが必要です。人事考課は、従業員を評価して終わりではありません。人事考課を実施する目的を達成するには、評価した内容を従業員にフィードバックすることが重要です。フィードバックでは評価結果のほかに、次の項目も伝えるようにしましょう。
納得性の高い人事考課を行うには、公平に評価できる手法を用いることが大切です。おもな人事考課の手法は、次のとおりです。
コンピテンシーとは、優れた成果を発揮する行動特性を指します。コンピテンシー評価は、コンピテンシー能力が高い従業員を対象にした手法です。安定した成果を維持する技術や基礎能力などの行動特性を具体的に分析するため、人事評価エラーが起きにくくなります。
360度評価は一人の従業員に対し、上司や同僚などのさまざまな立場の方が評価を行う手法です。取引先の担当者を評価者とし、アンケート結果を評価に用いることもあります。
上司以外の方が評価に関わるため、公平性を担保しつつ、多角的に評価できる点がメリットだと言えます。
ただし、人事考課の仕組みをきちんと理解できていない評価者の場合、人事評価エラーにつながるおそれがあります。