中途採用のインターンシップとは?導入手順やポイント、事例を紹介
公開日:2025.12.02

近年、中途採用において、インターンシップを導入する企業が増えています。これは、従来の書類選考や面接だけでは見えにくい候補者のスキルやカルチャーフィットを、実際に働いてもらうことで見極めるためです。
本記事では、中途採用におけるインターンシップの導入手順や実施のポイント、具体的な事例まで、幅広く解説します。
中途採用のインターンシップとは?
中途採用におけるインターンシップは、正社員採用を前提として、求職者に実際の業務を体験してもらう制度です。多くの場合、実践的な短期プログラムが組まれます。
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目的 |
企業側:求職者のスキルや経験、カルチャーフィットを見極める 求職者側:実際の業務内容や職場の雰囲気、働き方などを見極める |
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期間 |
数日から数週間、長いもので数カ月程度 |
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賃金の有無 |
一般的に支払われることが多い |
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形式 |
トライアル雇用、有給インターン |
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メリット |
企業側:早期退職のリスクの低減、求職者の潜在能力や適性を見極めやすい 求職者側:入社後のミスマッチを防げる、企業理解が深まる |
※参考:株式会社学情「社会人インターンとは?未経験でも参加可能?給与、休日についても詳細解説」
新卒インターンとの違い
中途採用と新卒採用のインターンシップの違いは次のとおりです。
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新卒採用 |
中途採用 |
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対象 |
大学3年生や大学院1年生などの学生 |
社会人経験のある人材 |
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内容 |
体験・学習要素が強い |
実践的な業務が多い |
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期間 |
1日から数日程度 |
数日から数カ月程度 |
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賃金の有無 |
支払われないことが多い |
支払われることが多い |
社会人インターンを導入する手順

社会人インターンを成功させるには、事前の準備が重要です。その準備をどのような手順で進めるべきか、順を追って解説します。
- 導入目的を明確化する
- インターンシップの内容を設計する
- 法的な準備を整える
- 参加者を募集する
- インターンシップの実施
- 評価と改善を行う
導入目的を明確化する
導入目的が曖昧だと、プログラム設計やその後の評価がブレてしまい、期待する効果を得られない可能性があります。
まずは、なぜ社会人インターンを実施するのか、次のポイントを参考に深掘りしていきましょう。
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採用課題の特定 |
どのような課題を解決したいのか |
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目標設定 |
インターンシップを通じて、何を達成したいのか |
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対象者の設定 |
どのような層を採用ターゲットにするのか |
インターンシップの内容を設計する
設定した目的に基づき、具体的なインターンシップのプログラム内容を設計します。
プログラム内容を設計する際に、押さえておくポイントは次のとおりです。
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業務内容の選定 |
インターン生に任せる業務内容を具体的に決める |
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目標設定 |
達成してほしい目標や、身につけてほしいスキルを明確にする |
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受け入れ体制の構築 |
指導担当者を決定し、業務の進め方やフィードバックの方法を共有する |
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業務環境の準備 |
すぐに業務を開始できるよう、必要な環境を事前に準備しておく |
体験する業務内容だけでなく、インターン生がスムーズに業務を開始できるよう、サポート体制や業務環境を整えておくことも大切です。どのようなサポートが必要か、計画段階で把握しておきましょう。
法的な準備を整える
社会人インターンは労働とみなされる可能性が高いため、法的な面も考慮した準備が必要です。
求職者とのトラブルを回避するためにも、次の点に注意しましょう。
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契約形態の確認 |
賃金を支払う場合、雇用契約を結ぶ必要がある |
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労働条件の明示 |
労働時間、賃金、社会保険の加入の有無など、労働条件を明示する |
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保険の加入 |
必要に応じて保険の加入手続きを行う |
参加者を募集する
ターゲット層へ効率的にリーチできる募集チャネルを選定します。
募集チャネルには、次のようなものがあります。
- 求人サイト
- 人材紹介会社
- SNS
- 採用サイト
質の高い候補者を集めるには、ダイレクトリクルーティングがおすすめです。
企業が求職者に直接アプローチできるため、スカウトメールを使って社会人インターンの具体的な業務内容や得られる経験、企業の魅力などを伝えられます。
特に、20代転職に特化した「Re就活」なら、仕事に意欲的な若手層が数多く登録しているため、効率的な採用活動が可能です。
インターンシップの実施
インターンシップ期間は、インターン生が有意義な体験ができるよう、指導者を中心に手厚くフォローしましょう。
単に業務を体験させるだけではなく、定期的なミーティングや業務の進捗確認を通して、インターン生にとって学びや気づきの多い環境を整えることが重要です。
インターンシップ終了後には、事前に定めた評価基準に基づき、インターン生のスキルや業務への貢献度、カルチャーフィットなどを総合的に評価します。
評価と改善を行う
インターンシップ終了後は、設定した目標に対してどの程度達成できたか評価することが大切です。
インターン生や関係者からフィードバックをもらうことで、具体的な課題が把握でき、次回のインターンシップに活かせます。こうしたPDCAサイクルを回すことで、採用活動の質を継続的に高められるでしょう。
社会人インターンを実施する時期
社会人インターンの実施時期は、学生向けのように決まっているわけではありません。そのため、どの時期に実施するべきか悩むこともあるでしょう。
社会人インターンを実施する時期について詳しく解説します。
インターンシップの実施時期
多くの企業は、優秀な人材が見つかり次第採用できるよう、インターンシップを通年で募集しています。この募集方法は、即戦力を確保したいときや多様な人材にアプローチしたいときに有効です。
また、企業の新規事業や期間限定のプロジェクトといった、特定のニーズに合わせて募集するケースもあります。この場合、業務内容が明確であるため、求職者は入社後の働き方を具体的にイメージしやすく、企業側も求めるスキルを持つ人材を見極めやすいでしょう。
インターンシップの実施時間
インターンシップの目的や期間によって、最適な実施時間や曜日が異なります。特に、社会人インターンは、本業と両立する求職者が多いため、実施時間や曜日の設定が重要です。
短期インターンであれば、平日の昼間に実施することも可能です。一方、数カ月以上にわたる長期インターンの場合は、土日や平日の夕方に設定すると良いでしょう。
中小企業が社会人インターンを行う際のポイント

社会人インターンは、リソースが限られている中小企業にとっても有効な採用手法です。中小企業ならではの強みを最大限に活かすことで、より魅力的なインターンシップを実施できるでしょう。
少人数制で手厚くフォロー
中小企業には、少人数制のインターンシップが向いています。人数を絞ることで、担当者の負担を軽減でき、個々の対応に集中できます。
また、一人ひとりのインターン生に割ける時間が増えるため、よりきめ細やかな指導やフィードバックが可能です。これにより、インターン生の企業理解が深まり、質の高い採用につなげられます。
事業の全体像が見える業務を任せる
中小企業では、自分の仕事が事業全体に与える影響を感じやすいため、全体像を理解できる業務を任せるのが効果的です。
可能であれば、ある程度の裁量を与え、自身の働きやアイデアが企業に影響を与えるプログラムを導入しましょう。これは、成長意欲の高い若手にとって非常に魅力的であり、中小企業ならではの強みとなります。
社長や役員との交流機会を設ける
中小企業だからこそできる大きな強みとして、社長や役員との交流機会を設けることが挙げられます。
企業のビジョンや事業への熱い想いを直接伝えられるため、インターン生にとって単なる情報収集にとどまらず、働くことへのモチベーションを高められる機会となるでしょう。
また、質疑応答の時間を設けることで、インターン生の疑問や不安を解消し、入社後の活躍を具体的にイメージしてもらうことができます。
中小企業の社会人インターン導入事例
中小企業が社会人インターンを成功させるには、独自の強みを最大限に活かすことが重要です。内閣府がまとめた「社会人インターンシップ事例集」から、実際の導入事例をいくつかご紹介します。
株式会社フィッツ
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設立 |
2015年2月 |
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業種 |
情報通信業 |
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従業員数 |
6名(2021年10月時点) |
1Dayインターンでは、実際の従業員の1日の流れを体験できるプログラムを実施。
午前中にIT業界理解とキャリア形成を促し、午後はプログラム開発を疑似体験します。
これにより、応募者は社内の雰囲気を、企業は応募者の人柄やIT業界への意欲、システムエンジニアとしてのセンスなどを多角的に評価できます。
※出典:内閣府「社会人インターンシップ事例集」
大橋運輸 株式会社
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設立 |
1954年3月 |
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業種 |
運輸業、郵便業 |
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従業員数 |
99人(2023年6月時点) |
現場での業務サポートを通じて、会社の文化や多様な取り組みを体験できるプログラムを実施。
特別なプログラムは設けず、参加者の特性に応じて柔軟に対応しています。
また、多くの従業員が応募者と関わり、「チーム」としての採用を重視することで、面接では見えにくい本来の姿や人柄、自主性などを多角的に評価でき、高い採用実績へとつながっています。
※出典:内閣府「社会人インターンシップ事例集」
株式会社 新潟電装
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設立 |
1961年8月 |
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業種 |
卸売業、小売業 |
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従業員数 |
54人 |
朝礼から現場作業体験まで、先輩社員とコミュニケーションを取りながら1日の仕事の流れが体験できるプログラムを実施。その内容は、参加者の適性や志向の変化に応じて柔軟に調整しています。
社会人インターンは面接前後で実施しており、これにより応募者の人柄や仕事への姿勢、適性など多角的な評価が可能です。その結果、採用ミスマッチを防ぎ、お互いに納得のいく入社につながっています。
※出典:内閣府「社会人インターンシップ事例集」
中途採用でもインターンシップを活用して、質の高い採用を目指そう!
社会人インターンシップは、企業と求職者双方のミスマッチを防ぐ有効な手段です。特に中小企業は、少人数制でのきめ細かいフォローや経営層との直接的な交流など、独自の強みを活かしたプログラムを展開することで、より魅力的なインターンシップを実施できます。
このように、企業と求職者双方にとって有意義なインターンシップは、相互理解を深め、納得のいく採用・入社へとつながり、結果として高い定着率も期待できるでしょう。
社会人インターンの導入を検討されている方は、株式会社学情へご相談ください。計画の立案から求職者の募集、実施、評価まで幅広くサポートいたします。

株式会社学情 エグゼクティブアドバイザー(元・朝日新聞社 あさがくナビ(現在のRe就活キャンパス)編集長)
1986年早稲田大学政治経済学部卒、朝日新聞社入社。政治部記者や採用担当部長などを経て、「あさがくナビ(現在のRe就活キャンパス)」編集長を10年間務める。「就活ニュースペーパーby朝日新聞」で発信したニュース解説や就活コラムは1000本超、「人事のホンネ」などでインタビューした人気企業はのべ130社にのぼる。2023年6月から現職。大学などでの講義・講演多数。YouTube「あさがくナビ就活チャンネル」にも多数出演。国家資格・キャリアコンサルタント。著書に『最強の業界・企業研究ナビ』(朝日新聞出版)。
