中途採用の放置は早期退職の原因に?定着率を高める対策や事例を紹介
公開日:2025.11.20

「即戦力として採用したのに、なぜかすぐに辞めてしまう」といった悩みを抱えている企業は少なくありません。
その背景には、中途採用者を「放置」してしまうという深刻な問題が隠れています。
この記事では、中途採用の放置が引き起こすさまざまなリスクと、定着率を向上させるための具体的な対策を解説します。
放置が招く中途採用の失敗
中途採用者は社会人経験があるため、研修やサポートを怠ってしまいがちです。しかし、この「放置」が採用の失敗につながる可能性があります。
どのような失敗を招いてしまうのか、詳しく解説します。
早期離職につながる
厚生労働省が公表した「令和6年雇用動向調査結果」によると、令和6年の1月1日の常用労働者に占める離職者の割合(離職率)は、14.2%でした。
一方で、リクルートワークス研究所の調査では、入社3年以内の離職率が10%以上にのぼる企業が約3割に達しており、特に早期離職の多さが課題です。
その背景には、企業側の新入社員受け入れ体制が十分でない可能性も考えられます。
※参考:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結」
リクルートワークス研究所「企業調査による人材定着率の新卒・中途比較」
戦力化するまで時間がかかる
中途採用では、即戦力としての活躍を期待しがちですが、入社後すぐに最大のパフォーマンスを発揮するのは難しいものです。
どんなに優秀な人材でも、新しい会社の独自の業務プロセスや人間関係に適応するには時間がかかります。
そのため、入社後に中途採用者を放置すると、期待する成果が得られず、戦力化が遅れる可能性があります。
モチベーションが低下する
株式会社学情の調査によると、中途採用者が転職で最も実現したいことは「給与・年収が上がること(61.2%)」でした。
一方で、「スキルを身につけて成長できること(32.2%)」や「良好な人間関係を築けること(26.1%)」も高い割合を占めています。
中途採用者は高い向上心を持って新しい環境に挑戦する意欲とともに、社内の人間関係や成長機会にも強く期待していることがうかがえます。
このため、入社直後に放置されると、期待していた支援や人間関係構築の機会が得られず、モチベーションが低下しかねません。
モチベーション低下は、生産性の低下、チームワークの悪化を招き、最終的に早期離職という形で企業に大きな損失を与えるため、入社後のフォローが重要です。
※参考:株式会社学情「30代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(転職理由)2025年3月版」
孤立しやすくなる
中途採用者は新しい環境で人間関係をゼロから構築しなければなりません。
会社側の受け入れ体制が不十分だと、孤立しやすくなり、モチベーションの低下につながる可能性があります。
孤立した状態が続くと、業務に必要な情報共有が上手くできず、業務の停滞やミスを引き起こすリスクが高まるでしょう。
さらに、会社に居場所を見つけられない孤独感から、より良い環境を求めて短期間で転職を考えるかもしれません。
早期離職による採用コストの無駄
中途採用者を放置してしまうと、早期離職のリスクが高まり、結果としてそれまでにかかった採用コストがすべて無駄になってしまいます。
採用コストには求人サイトの掲載費や、人材紹介の手数料だけでなく、面接や内定者フォローにかかった人件費も含まれます。
もし早期退職が繰り返されれば、その都度、新たな採用コストが発生するため、企業にとって大きな損失となるでしょう。
企業イメージの悪化
中途採用者の早期離職が頻繁に起こると、「人が定着しない会社」というネガティブなイメージがSNSなどを通じて広まる可能性があります。
企業イメージの悪化は、その後の採用活動に大きな悪影響を及ぼします。
特に優秀な人材ほど、応募前に企業の評判を詳しく調べるため、ネガティブなイメージがあると敬遠されてしまうでしょう。
中途採用者を放置してしまう理由

どの企業も、中途採用者が活躍してくれることを期待して採用します。
意図的に仕事を振らなかったり、孤立させようとしたりすることはないでしょう。
では、なぜ彼らを放置してしまうのでしょうか。その理由を詳しく解説していきます。
即戦力への期待が高過ぎる
中途採用者には、社会人経験があることから、入社後すぐに高いパフォーマンスを発揮してくれるという期待を抱きがちです。
株式会社学情報の調査によると、93.7%の企業が「即戦力として採用した30代中途社員が期待通りに活躍できなかった経験がある」と回答しています。
どんなに優れた人材であっても、新しい環境で本来の力を発揮するには、業務への適応や人間関係の構築といった土台作りが不可欠であることを心に留めておきましょう。
※参考:株式会社学情「即戦力ギャップ(入社後ギャップ)はなぜ起きるのか?」
研修制度が整っていない
中小企業やスタートアップ企業では、中途採用向けの研修制度が整備されていないケースも多く見られます。
研修制度が不十分な理由は次のとおりです。
- 研修を計画・実施する担当者がいない
- 研修のノウハウが不足している
- 研修にコストを割けられない
コミュニケーション不足
人手不足の企業では、日々の業務に追われるあまり、新入社員のサポートがおろそかになりがちです。
悪意はなくても、時間的な余裕がないためにコミュニケーション不足となり、放置してしまう状況が生じることがあります。
中途採用者の放置を防ぐ対策

中途採用者の放置は、企業の損失に直結します。
即戦力への期待からつい見過ごされがちですが、早期に能力を発揮し、定着するには意図的なサポートが不可欠です。
どのような対策を講じるべきか詳しく解説します。
オンボーディングを導入する
オンボーディングとは、新入社員が新しい環境へスムーズに適応し、早期に戦力化を促すための包括的なプロセスです。
入社手続きや研修だけでなく、入社前から入社後の一定期間にわたるサポートやコミュニケーション全般を指します。
この施策により、新入社員は人間関係を円滑に築き、不安や孤独感を和らげることができるでしょう。
オンボーディングの詳しい導入方法については、こちらの記事を参考にしてください。
メンター制度を導入する
メンター制度とは、新入社員(メンティー)に先輩社員(メンター)をつけ、業務やキャリア形成、人間関係などについて幅広くサポートする制度です。
この制度によって、メンティーはより早く組織に適応し、自身の能力を最大限に発揮できるようになります。
メンター制度を成功させるには、メンターとメンティーの適切なマッチングや、メンターへの教育とサポートなどが重要です。
1on1ミーティングを実施する
1on1ミーティングとは、新入社員と人事担当者や直属の上司が一対一で話し合う機会です。
新しい職場での疑問、人間関係の悩み、業務に関する不明点などを気軽に相談できます。
また、会社が中途採用者に期待すること、そして中途採用者が会社に求めていることを定期的に確認することで、認識のズレが解消され、早期戦力化につながります。
フィードバック面談を実施する
フィードバック面談とは、上司が部下に対し、業務の評価や結果、現状の課題などを共有し、今後の成長や目標達成を促すために行う面談です。
定期的に実施することで、新入社員は自身の客観的な評価や現状の課題を把握し、目標達成に向けた軌道修正が可能になります。
フィードバック面談の詳しい実施方法については、こちらの記事を参考にしてください。
中小企業における中途採用者フォローの対策事例
中小企業では、中途採用者のフォローが特に重要です。
限られたリソースでも効果的な対策を講じることで、早期戦力化と定着率向上が実現できます。
教育担当者を配置
| 従業員数 | 100人規模 |
| 主な事業 | 建設・製造業 |
異分野や未経験からの入社が多いため、教育体制の強化に注力している企業です。
社内研修や勉強会に加え、教育担当者の配置も行っています。
新入社員のスキルに適した目標を設定し、定期的に面談を実施。
進捗と改善点を明確にすることで、自身の成長のために何が必要かを確認することができます。
配属先ごとに研修を設定
| 従業員数 | 200人規模 |
| 主な事業 | 建設・製造業 |
入社3カ月目までは研修期間としており、配属先ごとに研修を設定。
配属先で必要となる基礎演習や実務研修が細かく設けられており、業務に必要な知識や技術をじっくりと学べます。
さらに、研修期間中に取得すべき資格が設定されているため、必要な知識やスキルが明確です。
これにより、目指すべき目標がはっきりし、中途採用者も前向きに取り組めるでしょう。
継続的な教育機会の提供
| 従業員数 | 100人規模 |
| 主な事業 | 情報通信業 |
入社後はメンター制度に基づき、直属の上司とは別に、年齢の近い先輩社員がサポート役を務めます。
これにより、新しい環境に馴染みやすく、早期の活躍が期待できます。
加えて、定期的に1on1ミーティングを実施。
自身の課題や悩みを相談できるため、孤立することなく、安心して業務に集中できるでしょう。
20代の9割が入社研修を重視している
株式会社学情の調査によると、20代転職希望者の9割超が「入社研修の有無や充実度を意識する」と回答しました。
20代の転職ではキャリアチェンジを希望する人や、成長意欲の高い人が多いため、入社研修を重視する傾向が高いようです。
また、入社研修の充実度と志望度の関係性についての調査では、20代転職希望者の9割超が「入社研修が充実していると志望度が上がる」と回答しました。
研修制度の充実は、新入社員の早期戦力化や定着率向上に貢献するだけでなく、優秀な人材の獲得にも不可欠です。
※参考:株式会社学情「20代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(入社研修)2024年8月版」
中途採用者の放置は早期離職の原因に!対策を講じて定着率を高めよう
中途採用者の放置は、戦力化の遅れや早期離職といった企業の大きな損失に直結します。
こうした問題を防ぐためには、オンボーディングやメンター制度、1on1ミーティングといった手厚いサポートが大切です。
適切なフォローを通じて、中途採用者の潜在能力を最大限に引き出し、企業の成長へとつなげましょう。
中途採用にお悩みの方は、株式会社学情へご相談ください。企業の採用課題に沿った採用戦略をご提案します。
