新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、エッセンシャルワーカーという言葉が注目を浴びるようになりました。2020年の新語・流行語大賞にノミネートされたことで耳にした方も多いのではないでしょうか。
エッセンシャルワーカーとは、必要不可欠な仕事をする人たちの総称です。多くの人々の生活を支える医療や福祉、ライフライン関連で働く人のことを指しています。
本記事では、エッセンシャルワーカーの意味とおもな職種、そう呼ばれるようになった背景などを詳しく解説します。また、現在エッセンシャルワーカーが抱えている問題や支援の取り組みについても紹介するので、エッセンシャルワーカーに関わる人はぜひ参考にしてください。
エッセンシャルワーカーとは
エッセンシャルワーカーという言葉は耳にしたことがあるけれど、詳しくはどのような意味なのかよくわからないという人もいるのではないでしょうか。
ここでは、エッセンシャルワーカーの意味と、注目を浴びるようになった背景を解説します。
エッセンシャル(必要不可欠)な職種に携わる人々のこと
エッセンシャルワーカーとは、生活の根幹を支える医療や福祉、介護、保育、第一次産業、行政、物流、小売業、ライフライン関連で働く人々のことを指す言葉です。公共交通機関や自治体といった公共のサービス、ドラッグストアやスーパー、コンビニで働く人々も含まれます。
「エッセンシャル(Essential)」の語源は、「必要不可欠な」「非常に重要な」という意味があります。エッセンシャルワーカーを直訳すると、「必要不可欠な労働者」「非常に重要な労働者」となります。これは、人々が生活を送るために欠かせない職務内容であることに由来しています。
新型コロナを背景に注目されるようになった
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、医療従事者をはじめ「感染リスクがあっても、人々の生活を維持するために現場で働き続ける人々」への感謝と敬意を込めて「エッセンシャルワーカー」という名称が広く使われるようになりました。
2021年4月15日、新型コロナウイルス感染症拡大に関する記者会見で、東京都の小池都知事が「都外に住む皆さんは、エッセンシャルワーカーなどどうしても出勤が必要な人以外は、可能な限り東京に来ないでください」と呼びかけたのをきっかけに、日本国内で「エッセンシャルワーカー」という言葉が大きく注目されるようになりました。
また、2020年は新型コロナウイルス感染症拡大によって各国の首相や大統領がロックダウンなどの会見を行う際、「エッセンシャルワーカー」という言葉を使っていたことも、広く知れ渡るようになった背景の一つです。2020年の新語・流行語大賞は、「3密」でしたが、このとき「エッセンシャルワーカー」もノミネートされていました。
エッセンシャルワーカーの職種
エッセンシャルワーカーと呼ばれるのは、具体的にはどのような職種の人々なのか見ていきましょう。おもな職種は次の通りです。
- 医療関連
- 介護・福祉や教育関連
- 警察・消防・その他の公務員
- 生活インフラ関連
- 小売・販売関連
- 運送・物流
- その他
それぞれの職種について詳しく解説します。
医療関連
医師や看護師、薬剤師、作業療法士、検査技師などの医療従事者のほか、医療機器メーカーの輸入・製造、患者の治療に必要な物資の製造やサービスに関わる職種です。
新型コロナウイルス感染症拡大にともない、現場でリスクにさらされる中でも必要不可欠である代表的なエッセンシャルワーカーです。
求職者は海外や遠方に住んでいるケースもあるため、オンライン採用の導入で多くの応募者を集められる可能性が高まります。
介護・福祉や教育関連
ホームヘルパーや介護福祉士などの介護関連職種、保育士や幼稚園・学校教諭、学童保育職員、学習塾の講師など、高齢者や障害者、園児・児童・教育に必要な物資の製造やサービスに関わる職種です。
コロナ禍のような緊急事態であっても、介護や福祉、保育などは在宅勤務ができない仕事です。
警察・消防・その他の公務員
市区町村役所職員や警察官、自衛官、消防士など国家の安全や維持に関わる職種です。
いずれも多くの人々の暮らしを守るために必要不可欠であり、リスクがあっても常に現場で働くことを求められます。
生活インフラ関連
配管工や電気技師といった、電力、ガス、水道、通信などの生活インフラに関わる職種、ゴミ収集員やガソリンスタンドスタッフ、公共工事関連の職員などです。
人々の暮らしを維持するためには、なくすことができません。
小売・販売関連
スーパーやドラッグストア、コンビニ、ホームセンターなど、生活必需品を扱う店舗のスタッフ、衣食住に関わる生活必需品の輸入や製造、加工などの職種に携わる人々です。
コロナ禍でステイホームや在宅勤務、自宅療養が増えた際には、食料や医薬品、生活必需品を手に入れられるスーパーやドラッグストアの存在が一層大きくなりました。
運送・物流
電車やバス・地下鉄などの公共交通機関の職員、トラック運転手、荷物の運送スタッフ、郵便物の配送員などです。
スーパーやドラッグストアで買い物をしようにも、店舗まで商品を運ぶ輸送関連がストップしていては生活必需品も入手できません。そのため、運送・物流もエッセンシャルワーカーに含まれます。
その他の職種
銀行員や保険・金融関係も、人々の生活や企業存続のために不可欠です。そのため、エッセンシャルワーカーに含まれます。
ほかには冠婚葬祭事業、宿泊事業、農林・水産業、飲食料品の製造・加工・流通に関わる職種、ビルメンテナンスやセキュリティ関連の職種などです。
エッセンシャルワーカーが抱える問題点
多くの人々の暮らしを守るために必要不可欠なエッセンシャルワーカーですが、その待遇面や現場の状況にはさまざまな問題があります。感染症リスクやメンタルヘルス、賃金や人員不足など、エッセンシャルワーカーが抱える問題について解説します。
感染症リスクやメンタルヘルスケア
医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーは、感染症リスクがあっても休むことができません。たとえ緊急事態宣言下や感染症が蔓延している現場であっても、在宅勤務が困難な職務です。
そのため、感染症リスクや不安、ストレスやプレッシャーにさらされ続けるという現状があります。
また、エッセンシャルワーカーは責任の重い仕事内容である場合も多く、長時間勤務を余儀なくされるケースもあります。
加えてコロナ禍では、感染症患者と接する医療従事者に対する差別や偏見がインターネットやSNS上で蔓延したこともあり、エッセンシャルワーカーのメンタルヘルスの問題は大きな課題となっています。
賃金・待遇面
エッセンシャルワーカーの責任の重さや業務の負荷に対して、賃金の低さと待遇の悪さも問題となっています。
エッセンシャルワーカーの多くは現場での肉体労働や長時間勤務、夜間勤務など過酷な状況で働いています。加えて責任が重い仕事が多く、精神的にも大きな負担を抱えているでしょう。
それにも関わらず、エッセンシャルワーカーの賃金は低い傾向にあります。人手不足で休みも取りづらく、業務の負荷と賃金・待遇が釣り合っていないのが現状です。
このような問題を解決するためには、エッセンシャルワーカーの労働環境改善が求められています。
人員不足
エッセンシャルワーカーは責任の重い仕事でありながら、低賃金であったり待遇が悪かったりすることにより、人員が流出しています。慢性的な人員不足となり、現場の従業員にさらなる負担がかかっていることも大きな問題です。
人手が足りないと、現場で働く一人あたりの業務負担が大きくなります。業務過多、長時間労働、休みが取れないといった問題も人員不足によるものです。
そのため、エッセンシャルワーカーの労働力を確保することが必要とされています。離職を防止し、採用人数を増やして現場の労働力を確保するためには、エッセンシャルワーカーの賃金や待遇、労働環境の改善が大切です。
エッセンシャルワーカーへの支援
多くの問題を抱えるエッセンシャルワーカーは、私たちの生活になくてはならない存在です。そのため現在では、さまざまな支援も行われるようになってきています。
厚生労働省が行った「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」事業では、エッセンシャルワーカーの人員不足を解消するべく、離職防止や有資格者の復職促進、人材の配置転換などの方針が具体的に発表されました。支援交付金によってこれらの施策が行われ、医療従事者の支援が広がっています。
また「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業」では、医療機関などで働く医療従事者や職員に対し、最大20万円の慰労金を給付しました。
参考:厚労省「慰労金パンフレット」
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000655159.pdf
そのほかにもスーパーマーケットやドラッグストア、家電量販店やタクシー会社で「特別手当」を支給するなど、エッセンシャルワーカーに対する支援は広がっています。しかしその一方で、依然として労働力の確保が十分ではなく、現場の人材不足が懸念されているのも現状です。
このため、エッセンシャルワーカーを雇用する企業や組織では、待遇面や労働環境面などの改善によって、離職防止や人員確保をすることが求められています。
エッセンシャルワーカーの人員確保にはよりよい労働環境や人事制度が必要
エッセンシャルワーカーは、多くの人々の生活を守るうえで重要な職務を担っています。たとえ緊急事態であっても、決して欠かせない存在です。
しかし、その責任の重さや心身の負荷に対して賃金が低く、待遇も悪いことが懸念されています。職務内容に見合った賃金や環境が整っていないため、慢性的に人員不足なのが現状です。
このような事態を受けて、現在ではエッセンシャルワーカーに対する支援が広がっています。しかしまだ十分とは言えず、人員不足により長時間労働の発生や休みが取りづらいといった問題は続いています。
そのため、エッセンシャルワーカーを雇用する企業や組織は、よりよい労働環境や人事制度を整えていく必要があるでしょう。エッセンシャルワーカーの離職を防止し、採用人員を増やして現場の人員を確保するための工夫が必要です。
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