1on1ミーティングとは?意味と重要視される背景、実施する流れを詳しく解説
2023.09.19
ミーティングが注目を集めています。1on1ミーティングは難しい仕組みを必要とせず、個人経営の小さな店から大企業まで幅広く取り入れられる人材育成のための手法です。
本記事では1on1ミーティングの概要やメリットに加え、具体的な実践方法や注意点を解説します。1on1ミーティングの導入を検討している人事担当の方はぜひご一読ください。
1on1ミーティングとは
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行う面談を指します。人事評価の面談とは異なり、1on1ミーティングでは部下の評価を目的としません。1on1ミーティングの主役は部下であり、上司は評価者ではなくあくまで部下の話を受け止める立場にあります。
通常は月に1回ほど、多くても週に1回を目安として、部署やチーム内で定期的に実施するのが特徴です。もともとはアメリカを中心に行われていた手法で、日本国内でも大企業の導入をきっかけに広まりつつあります。
1on1ミーティングを定期的に実施すれば部下の信頼や自発的な成長につながります。上司や部下本人だけでなく、企業にとっても多くのメリットが得られる人材育成法です。
多くの企業が1on1ミーティングを取り入れるようになった背景
1on1ミーティングは、海外企業はもとより国内企業でも導入するケースが増えています。いったいなぜ近年注目が高まっているのか、理由を解説します。
少子高齢化・終身雇用制度の崩壊による人材不足
国内で1on1ミーティングが広まった背景の一つとして、優秀な働き手の確保が企業の急務になっていることがあげられます。
少子高齢化の影響で若い働き手が不足しており、優秀な人材はあらゆる企業が常に欲している状態です。また、終身雇用制度の崩壊によって転職や再就職も当たり前の時代になりました。社員がもし給与や待遇、人間関係など職場になんらかの不満を抱けば、より良い環境を求めて自社から離れてしまう恐れがあります。
人材を安定して確保することが難しいなか、自社の優秀な人材が流出しないような対策が必要です。1on1ミーティングは人材育成促進はもちろん、部下の離職率を下げる手法としても知られているため、近年特に国内で注目を集めていると言えます。
VUCAの時代による人材育成の必要性
終身雇用と年功序列が当然だった時代と異なり、現代は予測不能なVUCAの時代と言われています。企業は時代に合わせて柔軟に変化できる人材を育成しなければなりません。VUCAは「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧さ)」の頭文字をとった略語です。
現代社会は市場や人々の環境、価値観が変動しやすく不安定です。また、グローバル化により人々が多様な価値観に触れる機会が増え、新たな手法やこれまでは通用しなかった手法を使用したビジネスも次々登場して複雑になっています。新しい物事に対応できず、前例のみに頼る人は、今後の曖昧な未来を生き抜くのが難しくなっていくでしょう。
そこで、あらゆる新しい要素にスムーズに対応して成長や変化をしていける人材育成の方法や、本人の成長意欲を高める手段として、1on1ミーティングが注目されています。
1on1ミーティングの4つのメリット
1on1ミーティングの導入により、おもに4つのメリットが期待できます。それぞれ解説します。
上司・部下の信頼関係の構築に役立つ
1on1ミーティングにより上司と部下のコミュニケーション機会が増えるため、信頼関係を構築しやすくなります。1on1ミーティングでは業務内容に留まらず、プライベートな会話や日常の雑談も自由に話すのが特徴です。お互いに私的な会話が増えれば、相手の考え方や好み、長所や短所をより深く理解する一助になります。
部下は上司からの信頼を感じ、自らもまた上司を理解することでよりスムーズに業務ができます。たとえば何かのアイディアを得たとき、上司の考え方が分かっていれば躊躇せず提案できるようになります。ときに上司から指導を受けることがあっても素直に受け止められるでしょう。
一方、上司側も、部下の特性を知れば先回りしてフォローし、より部下の特性が活かせる仕事を任せやすくなります。
部下の成長促進につながる
定期的に1on1ミーティングを行えば、部下が一人だけで考え努力するケースに比べて効率的な成長が見込めます。たとえば部下がなんらかの悩みを抱えていても早期のフォローができます。また、業務内容を上司と一緒に振り返りフィードバックをもらうことを繰り返すと、ほかの業務でも自主的な振り返りができるようになります。
一人で業務に取り組む状態では、業務でなんらかの失敗や成功があったとしても、それを共有できる相手がいません。1on1ミーティングで上司が積極的に話を聞けば、部下は上司に認められている、あるいは失敗しても相談できるという安心感のなか意欲的に仕事に取り組めます。不安を都度解消しながら業務を進められるため、自分だけでの作業より効率的にステップアップできるでしょう。
エンゲージメントやモチベーションの向上が期待できる
1on1ミーティングには、愛社精神や仕事への意欲を高める効果も期待できます。部下にとって、上司から自分のした仕事内容が正しく評価され、詳しく「見て」もらえることで仕事にやりがいを感じられるでしょう。
また、新たなことに挑戦してみたい場合も上司との関係が良好なら提案しやすくなります。自分のスキルやアイディアを活かして職場で活躍する機会が増えれば、「働き続けたい」という気持ちも育てられるため、人材の流出を防ぐことにもつながるでしょう。
1on1ミーティングで上司と部下の人間関係を良好に保つことは、離職率低下につながります。人間関係を理由に離職する人は多くいます。上司からパワハラを受けるケースや、同僚との仲が悪化したまま相談できずに離職に踏み切るケースもあります。1on1ミーティングなら上司との関係が良くなり、もし人間関係の悩みがあっても上司に直接相談が可能です。離職を決断する前にコミュニケーション改善のサポートができるため、部下は快適に働きつづけられます。
適切な人事評価がしやすくなる
より実態に即した人事評価ができるのも1on1ミーティングのメリットです。
上司は常日頃から自分の仕事に加えてチーム全体の仕事も管理するため、部下の個々の仕事ぶりは把握しきれていないケースもあります。しかし、1on1ミーティングにより個々の業務内容の話を積極的に聞けば、上司は部下の仕事ぶりを正確に確認できるでしょう。
また、仕事の成果だけに留まらず、悩みや工夫など成果を得るための過程まで把握できます。仕事ぶりを詳細に理解した上で評価すれば部下も評価に納得しやすくなるでしょう。「頑張ったのに評価されない」という不満からの離職やストレスも防げます。
さらに、複数の部下との1on1ミーティングにより現場の課題も浮き彫りになり、現場や人心に異変があれば察知しやすくなるのもメリットです。
1on1ミーティングを実施する流れ
実際に1on1ミーティングを実施するにはいくつかポイントがあり、準備も必要です。準備段階から実施までの流れを紹介します。
【人事】1on1ミーティングの目的を周知する
実際に面談を行う前に、人事部から社内に向けて1on1ミーティングを導入することや目的を周知しましょう。特に目的は社内全体に認知されるよう徹底が必要です。
目的の認識が曖昧なまま1on1ミーティングを実施すると、部下はなんのために上司と話すのかがわからず不安になってしまいます。人事評価の面談や指導だと思い込み萎縮する部下が出てくる可能性も考えられます。
また1on1ミーティングは業務時間内に実施するので、仕事を多く抱えている人にとって、目的が不明な面談は不満の原因になりやすいです。1on1ミーティングの実施に消極的な社員が出ないよう、導入する理由と併せて目的をしっかり周知しましょう。
【上司】部下とスケジュールを調整する
周知を徹底したらスケジュールを調整し、定期的に実施する日程を決めます。スケジュールは上司側から積極的に働きかけて決定するとよいでしょう。一般的に1on1ミーティングは1回30~60分を目安に行いますが、最初は10分、15分と短い時間で実施し、社員の意見を聞いて調整しても構いません。
業務が忙しい曜日や時間帯に入れると定期的な実施が難しく形骸化も考えられるので、できるだけ上司と部下双方に余裕のある日程を選ぶのがコツです。たとえば「毎週水曜日の13時」「毎月第二月曜日の15時」というように正確な日時をすり合わせましょう。
もしも当日に予定が折り合わず実施ができなかった場合は代替の日程を必ず設定します。定期的に実施し、習慣化させることで結果が出るため、キャンセルや中止をしたまま次回の定期開催日に持ち越すのは良くありません。
【上司】話す内容を事前に検討しておく
上司側は1on1ミーティングの実施前に、話す内容をいくつか用意しておくとスムーズです。話す内容は業務の悩みや今後のキャリア形成など仕事上の話だけでなく、私的な雑談、日常会話でも問題ありません。あまりに雑談ばかりになってしまう場合は、内容を事前に決めておけば業務に役立つ会話も盛りこみやすくなります。たとえば、次のような話題はどうでしょうか。
- 業務で難しかったこと
- 今後の業務でやってみたいこと
- 業務でストレスを感じる部分
- 人間関係の悩み
- 部下から見た現場の様子や人間関係
- 今後のキャリア計画
- 職場での成功体験
- 学生時代の思い出話
- 休日の過ごし方
- おすすめの店
- 最近見たおもしろい映画
- ペットの話題
ただし、1on1ミーティングは部下のために行うので、話す内容を一方的に上司が決定するのは避けるべきです。部下と相談し、部下の話したい内容を中心に話題の候補を持っておきます。
【上司・部下】1on1ミーティングを実施
予定が決まったら、1on1ミーティングを実施します。場所は部下がリラックスでき、かつほかの社員に話が聞こえない個室が理想的です。部下が話したいことを上司が聞くスタンスで、軽い雑談から始めてみましょう。上司側の自己開示もコミュニケーションには有効ですが、あくまで部下のためのミーティングであることを意識し、上司ばかり話さないようにすることが大切です。
すべての上司が必ずしも聞き上手とは限りません。口下手で話がなかなかはずまない、部下が萎縮してしまうなど、懸念があるなら、事前に人の話の聞き方を勉強しておくと良いかもしれません。あるいは、社内で1on1ミーティングに参加する上司に対し、コミュニケーションに関する研修を行うのも良い方法です。
上司は複数の部下とミーティングを行うため、時間的にも心理的にも部下側とは異なる負担があります。上司側の負担が少なくなるよう、社内でサポートできる仕組み作りも併せて検討してみましょう。
【上司】部下に具体的なフィードバックを行う
上司は部下の話を聞くことが大切ですが、聞くだけでなく最後にはフィードバックも行いましょう。部下の話を聞いて具体的なアドバイスやフォローを繰り返すことで、信頼関係の構築や部下の成長につながります。
ただし、一方的な指導や指示はしないように注意が必要です。上司はあくまで部下の意見を聞き、共感を示して相槌を打ち、あるいは一緒に頭を悩ませて問題解決をサポートします。上司が問題解決への明確な指針や手段を示すのではなく、部下が自分で考えて行動できるよう促すようなフィードバックが理想的です。
また、1on1ミーティングは複数の部下と定期的に開催するため、個々の成長や悩みなどを把握できるよう、毎回話した内容をメモしておくと役立ちます。
1on1ミーティングを実施する際の注意点
最後に、1on1ミーティングを成功させるためのコツや注意点を解説します。
無理のない頻度で実施する
1on1ミーティングは継続が大切です。無理なスケジュールは組まず、実現可能な開催頻度を探りましょう。
週に1回が無理なら月に1回でも問題ありません。特に、上司は部下の人数だけミーティングの時間が必要になるため、部下が多いと大きな負担になります。
業務に支障をきたさない頻度を見積もり、そこから逆算して一人当たりのミーティング時間や日時を決めるのも良いでしょう。
なお、定期的な開催を重視するあまりミーティングの消化が目的にならないように注意が必要です。1on1ミーティングは、あくまで上司と部下の信頼関係構築や、部下の成長促進の手段に過ぎません。ミーティングに時間を浪費するだけでは、本来の目的が達成できなくなります。
時間や頻度は少なくても、内容が充実している方が部下の成長によい影響をあたえます。適切な頻度がわからない場合は、最初は少ない時間や回数から始めて徐々に増やし、ちょうど良いミーティング頻度を擦り合わせていきましょう。
短期的な効果は期待しない
1on1ミーティングは実施してすぐ効果が出る施策ではありません。特に、部下の成長スピードは一人ひとり異なります。フィードバックをうまくかみ砕き自分のものにできる人材もいれば、時間がかかっても着実に成果を出す大器晩成型の人材もいます。
1on1ミーティングの効果が出るのは早くても3ヶ月、長いと数年単位の時間が必要といわれています。長期継続を前提に、じっくりと取り組むことが大切です。
また、長期的に続けていくと1on1ミーティングの必要性や目的を新入社員へ再周知する必要も出てきます。再周知と継続した取り組みを繰り返し、社内に1on1ミーティングを当たり前の業務として根付かせましょう。
相性によっては逆効果となる場合も
1on1ミーティングの効果は人間関係によるところが大きいため、上司と部下の相性が悪いと逆効果になるリスクもあります
極端な例をあげれば、普段パワハラ紛いの言動をしている上司と1on1ミーティングを実施しても、部下は心を開くどころかストレスを感じるでしょう。
1on1ミーティングは信頼関係構築やモチベーション向上の手段に過ぎないため、もし上司と部下の相性が悪いのならほかの手法の検討をおすすめします。
たとえば上司ではなく職場外の先輩社員が担当するメンター制度や、部下が上司に助言を行うリバースメンター制度、先輩と後輩で兄弟に見立ててフォローをするブラザー・シスター制度などがあります。いずれも若手社員のモチベーション向上や成長促進に役立つ施策です。
大切なのは若手社員の離職防止やキャリア形成など企業の目的達成です。1on1ミーティングだけにこだわらず、併用や別の手段の検討も行いつつ優秀な人材を育成しましょう。
1on1ミーティングなら多様な状況に対応できる社員を育成できる
1on1ミーティングは上司と部下が1対1で個別に面談する手法です。上司と部下が定期的にコミュニケーションを取ることで信頼関係の構築や人間関係の改善につながります。
また、部下のモチベーション向上やキャリア形成がしやすくなるなど成長促進の効果もあるため、予測不可能なVUCAの時代を生き抜く人材や、企業に貢献する人材の育成に役立つでしょう。人事評価もしやすくなるなど、上司と部下双方にメリットがあります。
1on1ミーティングは業務上の悩みや成功体験の共有に留まらず、雑談や私的な会話も含めて行います。短期的な効果は見込めませんが、長期的かつ定期的に開催を続ければゆっくりと変化が現れるでしょう。
1on1ミーティングは多くの人材育成手段の一つなので、ほかの方法と併用も可能です。自社に1on1ミーティングの導入が適切かどうかあらためて考えた上で、最初は月に1回、10~15分の短い時間から始め、徐々に社内へ浸透させていきましょう。
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