オープン・カンパニーとは?インターンシップとの違いや特徴、内容、実施事例を紹介
2023.12.22
近年、採用活動の一環でオープン・カンパニーを導入する企業が増えています。オープン・カンパニーとは、企業が学生向けに実施するイベントの一つです。企業の認知度向上や将来的な自社への応募者の獲得などのメリットが見込まれることから実施する企業が増えています。
この記事では、オープン・カンパニーの概要や企業が導入するメリットなどをわかりやすく解説します。
オープン・カンパニーとは
「オープン・カンパニー」とは、学生に対して自社や業界の情報を提供するプログラムのことです。オープン・カンパニーを主催するのは企業をはじめ、就職情報会社や大学のキャリアセンターなどです。イメージとしては、大学が学生や保護者を対象として実施するオープン・キャンパスの企業版とも言えるでしょう。
これまでおもに「1dayインターンシップ」と呼ばれていたプログラムが2023(令和5)年度から「オープン・カンパニー」に変わりました。これは、文部科学省、厚生労働省及び経済産業省による方針変更により、キャリア形成支援のためのプログラムが4種類に分類されたことが理由です。オープン・カンパニーもそのうちの一つとなる「タイプ1」として新たに定義されました。
ルール改正について詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。
オープン・カンパニーとインターンシップとの違い
2025年卒の採用活動からは、インターンシップの形態が職業体験の必要性の有無に基づき、タイプ1からタイプ4に細分化されました。
職業体験を伴うのはタイプ3とタイプ4で、従来どおりインターンシップと呼ばれます。
一方、タイプ1のオープン・カンパニーやタイプ2は職業体験が必須ではなくインターンシップとは呼ばないものの、学生のキャリア形成支援に役立つプログラムを行うのが特徴です。
インターンシップについて詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。
タイプ1.オープン・カンパニー
オープン・カンパニーは、4類型のうち、タイプ1に分類されます。タイプ1はインターンシップのような職業体験を必須とせず、おもに企業や就職情報会社、大学のキャリアセンターなどが主催するイベントや説明会を想定しています。
オープン・カンパニーの目的は、あくまでも学生に対する企業や業界の情報提供、および教育です。そのため、イベントを通じて取得した学生情報は、採用活動に利用してはいけないとされています。
タイプ2.キャリア教育
タイプ2に分類された「キャリア教育」は、オープン・カンパニーと同様に職業体験を必須としないプログラムです。職業体験は任意で、プログラムのなかに含めても差し支えないとされています。
タイプ2の代表的な取り組み例は、企業が環境問題や社会問題などに対しCSR(企業の社会的責任)として実施するプログラムや大学の授業、講義などです。
学士・修士・博士課程すべての学年が対象です。
実施期間に定めはなくプログラムによって異なります。イベントを通じて取得した学生情報は、タイプ1と同様に採用活動に活用してはならないとされています。
タイプ3.汎用的能力・専門活用型インターンシップ
タイプ3に分類された「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」には、タイプ1や2と異なり就業体験が含まれます。おもに企業が地域の企業や機関などと連携し、学生に適性や進路を考えてもらうためのプログラムを実施します。
プログラムは「汎用的能力活用型」と「専門活用型」に分けられています。分野を問わずあらゆる学生が参加可能なのが汎用的能力活用型です。一方、専門活用型は特定の分野に対し専門性を有する学生向けの内容になっています。
実施期間は汎用能力活用型が5日間以上の短期間、専門活用型が2週間以上の長期間です。また、対象者は学部3年生と4年生、修士1年生と2年生に限られます。イベントを通じて取得した学生情報は、採用活動開始以降に限って活用できます。
タイプ4.高度専門型インターンシップ
タイプ4に分類された「高度専門型インターンシップ」は、特に高度な専門性を要求される実務を学生が就業体験するプログラムです。対象者はおもに大学院生です。
代表的な取り組み例には、学生が自身の学ぶ専門分野に基づき企業で研究を行い、研究の評価によって大学の単位を取得する「ジョブ型研究インターンシップ」があります。また、内容は検討中の段階ですが「高度な専門性を重視した修士課程学生向けのインターンシップ」もあります。
実施期間はジョブ型研究インターンシップが2カ月以上、高度な専門性を重視した博士課程学生向けのインターンシップは「検討中」であり、まだ所要日数は定められていません。イベントを通じて取得した学生情報は、採用活動開始以降に限って活用できます。
オープン・カンパニーの特徴
オープン・カンパニーは、タイプ2〜4と目的や対象者などが異なります。それぞれ見てみましょう。
【目的】企業や業界の情報提供
オープン・カンパニーの企業側の目的は、学生に対して自社や業界の情報を提供することです。目的は会社説明会と類似していますが、オープン・カンパニーは採用に関する情報提供や応募を促すイベントではありません。そのため、オープン・カンパニーを実施する際には、応募や人材の獲得ではなく、あくまで学生への支援を念頭に別の目的を設定するべきでしょう。
一方、学生側には、企業や業界の情報を詳しく認識することで、卒業後に自身が歩むキャリアについて考えるといった目的があります。
【対象者】すべての学年
対象者は、タイプによって異なります。オープン・カンパニーの場合、学生や修士、博士課程などに関わらずすべての学年が対象です。
オープン・カンパニーは年次を問わず参加者を募集できるため、企業側は早い段階から学生と接点をもつことが可能です。学生側は低学年時から計画的に参加しておけば、予備知識を得た状態で本格的な就職活動を始められるため、自分に合う企業を見つけやすくなります。
【実施時期】全期間
実施時期は、タイプによってさまざまです。オープン・カンパニーの場合、実施時期に決まりはありません。時間帯やオンラインの活用等、学業両立に配慮したうえで、1年のうちいつでも開催できます。
あさがくナビの企業アンケート調査では、約半数の企業がインターンシップも含め7~8月に開催していることがわかっています。
※出典:「「2025年卒対象のインターンシップ/オープン・カンパニー」に 関する企業調査(2023年5月)」(あさがくナビ)(https://service.gakujo.ne.jp/wp-content/uploads/2023/10/230522-comenq.pdf)
学生が学業と両立できるよう、学生が夏休みの時期に実施する企業が多いようです。
また、オープン・カンパニーの参加希望者のなかには、遠方に居住している学生が含まれている可能性もあります。遠方で参加しづらい学生がいることも考慮し、オンラインで開催する企業も増えています。
【実施内容・方法】講演会や交流会など
オープン・カンパニーの実施内容は、学生に向けた企業や業界の情報提供です。学生が企業や業界への理解を深められるよう、たとえば次のようなイベントが実施されています。
- 座学
- 現場従業員の講演会
- 現場従業員との座談会
- 交流会
- 職場見学
- グループワーク など
学生のなかには企業で働くに当たり、実際に現場で働く従業員の様子や社内の雰囲気を知りたい方もいます。オープン・カンパニーでは学生に職場の雰囲気を知ってもらうために、採用担当者だけでなく現場従業員との交流の場を設けたり、職場見学を実施したりすることも多いです。
オープン・カンパニーを開催する際には、自社のホームページや大学のキャリアセンターを通じて告知し、参加者を募集します。
オープン・カンパニーの開催方法でお悩みの人事担当者の方は、学情が提供する「就職博」の活用をご検討ください。就職博は、会員数40万人を超える「あさがくナビ」と連携した合同企業セミナーであり、合同企業セミナー来場者数No.1を誇る日本最大級の就職イベントです。
9月~12月開催の「就職博 インターンシップ&キャリア編」では、とくにオープン・カンパニーやインターンシップ先を探すことを目的とした学生も多く参加しています。開催日程など、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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【実施期間】短期間
オープン・カンパニーの実施期間は、半日や1日などの短期間です。短期間とは言え、学生の本分である学業の負担にならないよう、企業側は休日や長期休暇を利用して開催する配慮が必要です。
また、授業や就職活動により、平日の日中の参加が難しい学生もいます。オープン・カンパニーを開催する際には学生が無理なく参加できるよう、夕方以降に実施する、午前と午後の部に分けて実施するなど、時間帯も考慮するのが望ましいです。
オンラインで開催すると、忙しい学生も参加しやすくなります。実際に、オンデマンドによる動画配信やオンラインで開催した企業もあります。
【企業側】オープン・カンパニーを実施するメリット
オープン・カンパニーを通じて取得した学生情報は、採用活動に活用してはならないとされています。開催しても必ずしも学生からの応募につながるとは限りません。
しかし、オープン・カンパニーの開催により、企業には次のようにさまざまなメリットがあります。
1・2年生から接点をもてる
企業がオープン・カンパニーを開催するメリットの一つは、低学年の学生とも接点をもてることです。
インターンシップを細分化した4分類のなかには、対象者の年次が限られるタイプもあります。オープン・カンパニーの対象者は学年を問わないため、1年生や2年生などの早い時期から自社に興味を持ってもらえる可能性があります。
早い段階から自社や業界に触れてもらい、自社の名前を知ってもらえれば、いざ就職活動を始めた際に思い出してもらえる可能性も高まります。
若手従業員の育成が期待できる
オープン・カンパニーの実施を通じて、自社の従業員のモチベーション向上や成長を促せます。たとえば現場従業員による講演会や座談会などで従業員が積極的に関われば、学生との接触により新たな観点を得られ、自身の仕事を見つめなおすきっかけになるでしょう。
特に、学生と年齢が近い若手従業員は、学生にとって親近感を抱きやすい相手であり、企業を身近に感じられる存在のため担当者として適しています。新卒採用では学生が入社後の姿をイメージするのにも役立つでしょう。
このように、従業員の育成というメリット面から、オープン・カンパニーでは積極的に若手従業員に関与してもらうことも有用です。
【学生側】オープン・カンパニーを活用するメリット
企業がオープン・カンパニーを開催すると、学生側にも次のようにさまざまなメリットがあります。
企業や業界への理解を深められる
学生はオープン・カンパニーを通じて企業から情報提供を受けることで、企業や業界への理解をより深めることが可能です。特に業種を横断して複数のオープン・カンパニーに参加すると、自身のやりたいことや適性を把握しやすくなります。
また、テキストや動画だけでは把握しきれない情報を知れるため、ミスマッチ防止にも効果的です。
対象者の幅が広い
オープン・カンパニーは一般の学生や博士、博士課程のすべての学生を対象にしているため、学生なら誰でも参加できる点がメリットの一つです。
タイプ3やタイプ4のように対象者が限られないため、将来を見据えて低学年時から参加することもできます。早い段階から計画的にオープン・カンパニーに参加すれば、就職活動を始めた際に自分に合う業界や企業を見つけやすくなります。
短期間で参加しやすい
オープン・カンパニーの実施期間は半日や1日などの短期型です。数週間や数カ月など長期間の参加が必要なタイプと異なり学業との両立がしやすく、気軽に参加できます。
また、オンラインで開催される場合は移動時間を削減でき、時間を有効活用できるのも魅力です。
オープン・カンパニーを実施する際の注意点
企業がオープン・カンパニーを開催すると、学生にもさまざまなメリットをもたらします。一方で、いくつかの課題もあるため、事前に対策を把握しておきましょう。
取得した学生情報は採用活動に活用できない
オープン・カンパニーの目的は、あくまで企業や業界の情報提供にあります。採用活動は目的から外れてしまうため、取得した学生情報を採用目的で使用することはできません。
取得した学生情報を採用活動で使用する場合は、タイプ3またはタイプ4での実施を検討する必要があります。
一人ひとりとのコミュニケーションが取りづらい
オープン・カンパニーは、基本的に多くの参加者を対象にした取り組みです。一人ひとりの学生と十分なコミュニケーションを取りづらいため、自社の魅力や業務内容を伝えきれない可能性があります。
学生と十分なコミュニケーションを取るためには、座談会や交流会など少人数を対象にした形式を取り入れるのも一つの方法です。開催時に学生からの質疑応答の時間を設けると、参加者一人ひとりが抱える不安や疑問を解消しやすくなります。
少人数・ターン制で、参加学生一人ひとりと密なコミュニケーションをとれる。短時間で効率的に母集団形成を実現するダイレクトリクルーティング型イベント「就活サポートmeeting」がおすすめ。
【業界別】オープン・カンパニーの実施事例
最後に、オープン・カンパニーの実施事例を業界別に紹介します。
【テレビ業界】対面とオンラインに対応
テレビ業界の企業のなかには、学生に業界知識を増やしてもらうため、オープン・カンパニーとして自社の仕事紹介イベントを開催した企業があります。イベントには学生の年齢に近い若手従業員を登場させ、仕事の内容を詳しく、リアルな言葉で紹介する工夫が施されました。
「具体的にどのような仕事があるのか」「この業界は忙しそう」など、学生の疑問や不安に直接回答する時間も設けられています。より多くの学生が参加できるよう、対面とオンラインで同時開催されました。
【建設業界】職業体験を実施
オープン・カンパニーは、インターンシップのような職業体験を必須としていませんが、より業界や仕事内容への理解を深めることを目的に、職業体験をプログラムに含めた企業もあります。
プログラムの参加者は、最先端の研修施設の見学や、入社後に従業員が受ける教育を実際に体験できる内容が含まれていました。その後、実際の業務まで体験することで、働くイメージを持てる工夫が施されています。学生が参加しやすいよう、午前と午後の2回に分けて開催されました。
【金融業界】業務内容に応じて複数のコースを提供
金融業界のなかには、「銀行業務を体験してみたい」「地方銀行で働く意義を知りたい」学生向けに、オープン・カンパニーを開催した企業もあります。銀行の業務は多岐にわたるため、業務内容に応じてスタンダードコースとデータサイエンスコースの2種類が設けられました。
データサイエンスコースのプログラムには、最終日に成果の発表会や本部所属行員との座談会が含まれています。希望者は、両方のコースに参加することも可能です。より多くの学生が参加できるよう、オンライン形式で開催されました。
オープン・カンパニーを通じて学生により多くの情報を提供しよう
オープン・カンパニーの目的は、あくまでも企業や業界の情報提供です。イベントを通じて取得した学生情報は採用活動に活用できないため、一般的な採用活動とは目的を明確に分けておく必要があります。
オープン・カンパニーは、学生と早期から接触できる機会の一つです。学生とのコミュニケーションを通じてニーズを把握できるため、今後の採用活動に活かせる可能性もあります。長期的な視点で開催を検討し、判断していきたいところです。
オープン・カンパニーの開催方法でお悩みの人事担当者の方がいれば、これを機に、学情が提供する「就職博」の活用をご検討ください。就職博は、会員数40万人を超える「あさがくナビ」と連携した合同企業セミナーであり、合同企業セミナー来場者数No.1を誇る日本最大級の就職イベントです。9月~12月開催の「就職博 インターンシップ&オープン・カンパニー編」では、とくにオープン・カンパニーやインターンシップ先を探すことを目的とした学生も多く参加しています。開催日程など、ぜひお気軽にお問い合わせください。
株式会社学情 エグゼクティブアドバイザー(元・朝日新聞社 あさがくナビ編集長)
1986年早稲田大学政治経済学部卒、朝日新聞社入社。政治部記者や採用担当部長などを経て、「あさがくナビ」編集長を10年間務める。「就活ニュースペーパーby朝日新聞」で発信したニュース解説や就活コラムは1000本超、「人事のホンネ」などでインタビューした人気企業はのべ130社にのぼる。2023年6月から現職。大学などでの講義・講演多数。YouTube「あさがくナビ就活チャンネル」にも多数出演。国家資格・キャリアコンサルタント。著書に『最強の業界・企業研究ナビ』(朝日新聞出版)。