アルムナイとは?アルムナイ制度を導入するメリット・デメリットを詳しく紹介
2023.06.27
「アルムナイ」という言葉を初めて聞いたという人もいるのではないでしょうか。企業におけるアルムナイとは、定年退職者を除く「一度自社で働いたことのある退職者」「元従業員」を指します。
アルムナイ制度とは、一度自社で働いたことのある退職者と関係性を構築し、再雇用につなげる制度です。
本記事では、アルムナイの意味や注目されるようになった背景、企業がアルムナイ制度を活用するメリット・デメリットについて詳しく解説します。
また、アルムナイ制度を導入するときの手順や活用するためのポイントも紹介するので、導入を検討している場合はぜひ参考にしてください。
アルムナイとは?
「アルムナイ」の語源は、「卒業生」や「同窓生」を意味する英語「alumnus」の複数形「alumni」です。
人事の分野では、自社を離職した「退職者」や「元従業員」、「OB・OG」を指す言葉として使われています。定年退職した退職者は含まず、「現役世代で中途退社した退職者」のことを指します。
現役世代で、出産や育児、介護や配偶者の転勤といった家庭の事情や、転職・起業などを理由とした退職者が「アルムナイ」に該当します。
アルムナイ制度とは?
アルムナイ制度とは、「自社退職者と関係性を構築し、再度社員として雇用する制度」のことです。「アルムナイ採用」や「アルムナイ・カムバック制度」、「出戻り制度」などと呼ばれることもあります。
自社退職者の再雇用だけでなく、退職者と継続的な関係性を構築するためのアルムナイネットワークなど、アルムナイに関する取り組みすべてをまとめて「アルムナイ制度」と表現する場合もありますが、採用活動や人事の現場においては、自社退職者とのつながりを構築し、再雇用につなげる制度として考えられています。
アルムナイ制度が注目されている理由
少子高齢化や人口減少の影響で人材確保が難しくなっている現代において、アルムナイ制度が注目を集め始めています。アルムナイ制度では、一度自社で働いたことのある人材を再雇用するため、即戦力となる人材を確保できる点が魅力です。
特に優秀な正社員採用が難しくなるにつれて、アルムナイ制度の必要性が高まってきました。アルムナイ制度は誰でも利用できるわけではなく、再雇用には「在職中に自社への貢献度が高かった」「一定水準以上の評価を得ていた」などの条件を満たしていなければなりません。そのため、即戦力となる優秀な人材の確保につながります。
また、再雇用につながらない場合でも、自社を退職した元従業員とのつながりを持つことは企業にとってプラスの効果があります。アルムナイとの情報交換や、ときには客観的な視点からの助言を仰いだり、有益な仕事のアイディアを話し合ったりすることもできます。
採用活動においては、アルムナイ制度がある企業は好印象を持たれやすく、企業ブランディングにもつながります。「退職者が戻りたいと思う企業」「退職者とも良好な関係を築ける企業」といったイメージを与えることになり、求職者からの志望度の向上にもつながるでしょう。
アルムナイ制度を活用する4つのメリット
アルムナイ制度のメリットは次の4つです。
- 即戦力を確保できる
- 自社の問題点を改善できる
- 採用ミスマッチのリスクが下がる
- 企業のイメージアップが期待できる
それぞれのメリットを詳しく解説します。
即戦力を確保できる
アルムナイ制度を活用すると、即戦力となる優秀な人材を時間をかけずに確保できます。自社で一度仕事をしていた人材であるため、業務内容や自社の方針を理解しており、スムーズに業務をこなしてもらえることがメリットです。
新たに雇用した人の場合、業務をこなせるようになるまで時間がかかります。新人を受け入れる部署には教育体制や指導者も必要となり、教育担当者の業務負担も増えるでしょう。
しかし、一度自社で働いたことのある人材であれば、即戦力として業務に就いてもらえます。加えて、自社を退職後に社外で得た知識によって、今まで以上にスキルを発揮するケースもあります。
自社の問題点や魅力を把握できる
アルムナイ制度を活用する求職者がいる場合、適切なヒアリングを行うことで、自社の問題点と魅力ポイントを把握することができます。
アルムナイとされる人材は、自社で働いたあと退職しています。そのときの退職理由は、現在働いている従業員も同様に抱えている不満が要因となっているケースが考えられます。またその反対に、率直に戻りたいとも思える企業の魅力や良い点があることも意味しています。
そのため、これまで把握できていなかった離職率における問題点と市場から客観的に見た自社の魅力を明確にでき、効果的な改善策を導き出すことができるでしょう。
採用ミスマッチのリスクが下がる
アルムナイ人材は、採用ミスマッチが起きづらく、早期退職されるリスクは新規採用と比べて相対的に低いと言えます。
新規採用の場合、コストをかけて採用しても入社後に「こんなはずではなかった」「想定していた活躍をしてもらえない」といったミスマッチが原因で早期離職するケースが少なくありません。
一方、アルムナイ人材は既に実際の現場で企業風土や経営方針などを理解しています。そのため、入社後のミスマッチが起こりにくく、即戦力として効率的な採用ができます。
企業のイメージアップが期待できる
一度退職した人が戻りたいと思える企業として、イメージアップを期待できることもアルムナイ制度のメリットです。
アルムナイの再雇用では、「また戻ってここで働きたい」と希望しなければ実現しません。つまり退職しても戻りたいと思うほど企業に魅力がなければ成立しないということです。
そのため、アルムナイ制度の再雇用を取り入れていることを企業が発信すれば、求職者から見れば「魅力的な企業なのではないか」と好意的な印象を受けることもあります。
また、退職者を応援しポジティブに捉える姿勢を評価され、「退職後も良好な関係が築ける企業なのだから、在職中も働きやすいのだろう」と好印象に捉えられる可能性が高まります。
アルムナイ制度を活用する4つのデメリット
さまざまなメリットのあるアルムナイ制度ですが、デメリットも存在します。
アルムナイ制度のデメリットは次の4つがあげられます。
- 社内体制の見直しや環境づくりが必要になる
- 既存従業員のモチベーションを下げてしまう可能性がある
- 離職率が高まる恐れがある
- 情報漏洩のリスクがある
社内体制の見直しや環境づくりが必要になる
アルムナイ制度で一度退職した人材を再雇用する際には、「社内でどのように思われるのだろうか」「現在のメンバーとうまくやっていけるのだろうか」といった不安や後ろめたさを感じさせてしまう可能性があります。
必要に応じてアルムナイと面談する機会を設け、温かく迎え入れる社内体制や環境を整えるようにしましょう。また、社内でアルムナイ制度の担当者を決め、Webサイトやメールでの情報発信、懇親会の企画をするなど、アルムナイ人材とのつながりを構築することも必要です。
既存従業員のモチベーションを下げてしまう可能性がある
アルムナイ採用の待遇によっては、既存従業員の不満につながる可能性があります。
特定のアルムナイ人材が退職する前に優秀な成果を残していたり、役職経験があったりする場合、再雇用の際に好待遇で採用するケースがあるでしょう。
しかし、既存従業員よりもアルムナイ人材のほうが好待遇である場合、そこに相違が生まれる可能性が十分にあります。既存従業員は「自分は離職せずに長年頑張っているのに、評価されていない」と感じ、モチベーションが低下につながる恐れもあります。
そのため、アルムナイ採用を取り入れる際は、既存従業員との間に不公平な格差が生まれないように注意しましょう。待遇面のバランスを考えることや再雇用の条件を設けるなど、既存従業員にとって不満が発生しない制度づくりが求められます。
離職率が高まる恐れがある
再雇用の機会があることは「転職を失敗した場合の保険になる」と考えることもできます。
アルムナイ制度を「転職に失敗したら再雇用してもらえば良い」と捉えてしまうと、転職へのチャレンジを後押しすることにもつながりかねません。そのため、結果として離職率を高める恐れがあります。
離職のハードルを下げないためには、社内でのアルムナイ制度のルールを明確にして周知することが重要です。「アルムナイとして再雇用されるには在職中に一定の成績を残している必要がある」という認識を従業員に持ってもらうことが、離職の助長を防ぐ対策となるでしょう。
情報漏洩のリスクがある
アルムナイ人材は、自社の元従業員であっても「外部の人間」として認識しておく必要があります。対外的なリスク管理を考え、情報開示の程度をあらかじめ決めておくことも大切です。
アルムナイ人材と交流する際、ほかの企業や業界の情報交換ができたり、自社サービスへの客観的な意見をもらえたりするなど、自社にとって有益に働くことも多い一方で、気を許して自社の情報を伝え過ぎてしまうと、情報漏洩などのトラブルに発展する恐れもあります。
そのため、アルムナイ人材は、元従業員という安心感から社外秘の情報が漏洩するリスクが高まることを覚えておきましょう。
アルムナイ制度を導入する手順
アルムナイ制度を導入する手順は、次のとおりです。
- 明確なルールを決める
- 社内の受け入れ体制を整える
- アルムナイ向けのサービスを利用する
それぞれの手順について詳しく解説していきます。
1.明確なルールを決める
アルムナイ制度を導入するときは、まず明確なルールを設定しましょう。優秀な人材を確保するために、再雇用には一定の能力を求める条件に盛り込む必要があります。条件の例は次のとおりです。
- 自社の勤続年数が一定以上であること
- 社内の評価基準で一定水準以上に達していること
- 自社に対する貢献度合いが高いこと
- 専門的な資格や能力・経験を持っていること
例のような条件を社内にも周知し「アルムナイ制度は誰でも再雇用するものではない」と既存従業員にも示し、理解を得ることが大切です。
「規定水準を超える評価を得て、条件を満たした人でなければ適用されない」と明確化すれば、アルムナイ制度によって従業員のモチベーション低下や離職防止につなげられるでしょう。
2.社内の受け入れ体制を整える
アルムナイ制度を導入する際は、既存従業員に導入の目的や重要性を説明し、社内の理解を得られるようにすることが重要です。
また、アルムナイ制度を活かすには退職者を快く送り出すこともポイントです。そのため、人事担当者だけでなく、退職者の上司に当たる管理職にもアルムナイ制度についてしっかりと理解してもらうようにしましょう。
退職者が辞めるときの企業の対応は、退職者にとって、その企業の印象を大きく左右するものです。人事担当者や退職者の上司は「退職者=裏切者」という認識ではなく、「新たなチャレンジを応援して送り出す」という姿勢が大切です。
従業員が退職するときには、アルムナイ制度やアルムナイ人材の交流の機会があることを紹介し、Webサイトやメールなどで接点を持っておくことが大切です。そのためには、アルムナイとの関係性を構築していく社内の担当者やシステムの準備も必要になります。
3.アルムナイ制度で役立つサービスを利用する
ゼロから自社だけで体制を整えるのは手間がかかるため、アルムナイ向けの専用サービスを利用するのもひとつの方法です。
専用サービスでは、アルムナイ向けのコンテンツ配信や管理システムを利用できます。またサービスによっては、名簿機能や個別チャット機能、アンケート発信機能などが活用できるだけでなく、コンサルタントによるアドバイスももらえます。
アルムナイ人材との関係性を維持し、お互いに意見や情報を交換してプラスに働かせるためには、交流の機会を維持させる必要があります。単に制度として形骸化させないためにも、外部サービスの利用を検討してみるのも良いでしょう。
アルムナイ制度を運用する際のポイント
アルムナイ制度を活かすためには、自社をあとにした優秀な人材に「またここで働きたい」と思ってもらえるよう、日頃から従業員と良好な関係を築いておくことが大切です。
たとえば退職理由が介護や育児、配偶者の転勤などやむを得ない理由であった場合、「状況が変わったらまた戻ってここで働きたい」と思ってもらえれば、アルムナイ人材が再び働ける状況になったとき、即戦力としてスムーズに再雇用できるでしょう。
そのため、普段から従業員の帰属意識を高めるとともに、前向きな理由による退職の申し出があった際は快く送り出し、いつでも待っている姿勢を伝えるようにしましょう。
また、従業員の退職後もアルムナイ人材との関係性を維持し、有益な意見交換を行うなどアルムナイとの交流ネットワークを維持しておくこともポイントです。
アルムナイ制度で優秀な人材を確保しよう
一度自社で働いたことがあり、一定水準以上の評価を得ていた人材を再雇用するアルムナイ制度では、企業にとっては即戦力かつ優秀な人材を確保できます。加えてアルムナイ人材が退職後に得た知識や情報、客観的な意見も取り入れられるため、新たなイノベーションが生まれる可能性もあります。
少子高齢化が進む中、人材確保は企業にとって大きな課題です。特に優秀な人材や即戦力となる人材を確保したいときに活用したいのがアルムナイ制度です。導入の際はルールを明確にして、再雇用には一定の条件がある制度であることを社内に周知させましょう。
アルムナイ制度をうまく活用すれば、現在問題となっている自社の人材不足を解消する糸口になるかもしれません。
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