HR用語の基礎知識

キャリアチェンジとは?
採用をする上でのメリットとデメリットを解説

未経験の業界や職種に転職することを「キャリアチェンジ」と言います。

キャリアチェンジの転職者の採用はマイナスに捉えられがちですが、異なる業界や職種でも生かせる経験を持っている人は多く、これまでの自社になかったスキル獲得も叶います。

この記事では、キャリアチェンジを詳しく解説。キャリアチェンジ転職者を採用するメリットやデメリットに加え、転職者の年代(20代・30代・40代)ごとの評価・採用ポイントも紹介するため、ぜひ参考にしてください。

キャリアチェンジとは?

まずは、キャリアチェンジの意味を解説します。

経験のない業種や職種への転職

キャリアチェンジとは、これまでに経験のない業種や職種に転職することを指します。たとえば製造業からIT関係へ、営業職から技術職へといったケースです。

また、同じ職種でも別の業界に転職したり、同じ業界の別の職種に転職するケースも「キャリアチェンジ」にあてはまるため、まったく「無関係の仕事に転職する」とは限りません。

キャリアアップとの違い

キャリアチェンジと似た言葉にキャリアアップがあります。キャリアアップはこれまでと同じ職種や業種に転職し、給与面や待遇面の向上を目指すことです。

自分がいま持っているスキルを磨き、より専門性に特化したレベルの高い仕事に挑むことを目的としています。専門性を極める「キャリアアップ」と新しいスキル獲得を見込める「キャリアチェンジ」では、採用の目的とアプローチ方法が異なります。

キャリアチェンジ転職者の受け入れが多い業種・職種

キャリアチェンジ転職者が活躍しやすい業種をご紹介します。

キャリアチェンジ転職者を受け入れやすい業種

キャリアチェンジ転職者を受け入れやすいとされるのは、次のような業種です。

  • 小売
  • 医療・福祉
  • IT(情報通信)

小売業界は、もっとも人手の足りていない業界とも言われています。そのためキャリアチェンジ転職を受け入れやすい傾向にあります。対面販売の印象が強い業界ですが、最近ではEC事業に注力する会社も多いのが特徴です。

また、医療や福祉は、少子高齢化によって、これからの日本でますます求められる分野となっています。職種によっては専門的な知識が必要ですが、未経験でも始めやすい職種も多いため、キャリアチェンジの受け入れには積極的です。

IT業界も人手の補充が追いついていない傾向にあります。一定のスキルが認められれば未経験でも研修で能力を伸ばすことを前提に採用されることが多いです。

キャリアチェンジ転職者を受け入れやすい職種

キャリアチェンジ転職者を受け入れやすい、代表的なものは次のとおりです。

  • 営業職
  • 接客業
  • 運送業

商社であれば営業職、小売業界であれば接客業など、現場での活躍を求められる職種は未経験者の求人が多く、キャリアチェンジで採用されやすい傾向にあります。

また免許を取得しない若者が多いことから、運送業も受け入れやすいでしょう。

キャリアチェンジ転職者を採用するメリット

キャリアチェンジ転職者の採用で期待できるメリットは、次の4つです。

  • 欲しいスキルを有する人材を確保できる
  • 仕事への意欲が高い人を採用できる
  • 新しいアイディアが生まれる可能性がある
  • 既存従業員の士気が高まる可能性がある

それぞれのメリットを詳しく解説します。

欲しいスキルを有する人材を確保できる

キャリアチェンジ転職者は、他業種・職種の経歴を持っているため、これまで自社にはなかったスキルの獲得を期待できます。

欲しいスキルを持つ人材を会社に加えることができれば、新しい視点から業務の効率や業績の向上を見込めます。

また、新規事業を始める場合には、キャリアチェンジ転職者の経歴を活かせるとよりスムーズな立ち上げも実現できるでしょう。

異業種や異職種からの転職者のもたらす要素は、競合他社との差別化になります。キャリアチェンジ転職者の採用で多様な人材が活躍できれば、企業の競争力向上にもつながります。

仕事への意欲が高い人を採用できる

これまでと異なる業界・職種にチャレンジするキャリアチェンジ転職者には、仕事への高い意欲を期待できます。仕事に対して熱意があり意欲的な人材であれば、自社の業務内容を教育するだけで即戦力になります。

キャリアチェンジ転職者の採用面接などでは熱意を確かめ、会社にとって有益な人材かどうかを見極めましょう。

新しいアイディアが生まれる可能性がある

キャリアチェンジ転職者は異なる業種や職種での経験を持つため、これまで自社では考えられなかった新しいアイディアを生み出すことを期待できます。

今までにないアイディアを業務に取り入れられると、イノベーション(新たな価値の創造)にもつながるでしょう。

これからも企業が成長し続けるためには、新たな価値を創造するイノベーションが不可欠です。

既存従業員の士気が高まる可能性がある

仕事への熱意を持ったキャリアチェンジ転職者を採用すれば、その熱意に感化された既存従業員の士気が高まります。

既存従業員の士気が高まれば、職場のコミュニケーションや業務姿勢がさらに良い方向に進む可能性があります。

世代別キャリアチェンジ転職者の評価ポイント

キャリアチェンジ転職者採用では、どのような人材を、どのように評価し選考すればよいのでしょうか。

この項目では、転職者の年代(20代後半、30代、40代以上)を参考に、世代ごとに注目すべき評価ポイントを解説します。

20代後半|ポテンシャルを重視

Re就活が2022年に実施したアンケートでは、20代は「キャリアアップ」よりも、これまで経験していない業種・職種に挑戦する「キャリアチェンジ」を希望する声が多く確認されました。全体的な傾向として、新しいことに取り組みたいという熱意があると捉えられます。

20代後半の人材は、社会人経験があり基礎ができた状態であること、なおかつ将来的な活躍も大きく期待できる年齢です。採用後の育成に力を入れて即戦力化することもできます。

個人のポテンシャルと熱意を重視して評価し、会社での将来的な活躍が見込めるかどうかを検討することが大切です。

30代|スキルや経験の活用に期待

30代のキャリアチェンジ転職希望者に対しては、これまでの仕事で培ったスキルや実務経験が、自社でどのように活きるのかを重視して選考しましょう。

30代は、自分が取り組んできた仕事の全体像を把握している人が多い傾向にあります。採用においては、新たな業種や職種で今までの経験をどのように活かしたいかを聞き取ることが大切です。

40代以上|管理職やマネジメントを担える能力

40代以上のキャリアチェンジ希望者に対しては、実務能力よりも管理職や企業組織のマネジメントを担える能力があるかどうかを検討してみましょう。

40代以上の世代は社会経験を十分に積んでおり、優秀なスキルや経験値、マネジメント能力を持っていることも期待できます。

個々人の能力を確かめて採用を検討するようにしましょう。

キャリアチェンジ採用をする際のポイント

キャリアチェンジ採用を成功させるためには、次の3点をおさえておきましょう。

  • 採用条件は明確に提示する
  • 転職の経緯を詳しく把握する
  • 柔軟性の高さを見極める

採用条件は明確に提示する

採用後のミスマッチを避けるために、あらかじめ求職者には採用条件を明確に提示しましょう。

特に給与設定には注意が必要です。未経験の業種・職種だからといって給与を低く設定していると、早期の離職を招きかねません。給与設定では、前職の給与と比較し、これまでの経験や業績を考慮して算出するのがおすすめです。

給与や昇給の条件をしっかりと定め、転職希望者の希望も考慮しておくことで、優秀な人材の確保につながります。

転職の経緯を詳しく把握する

前職の退職理由が不透明だったり、短い期間に転職・退職を繰り返していたりする人材は、自社に定着してくれない可能性があるため注意が必要です。

そのため、「なぜキャリアチェンジを希望しているのか」といった理由はしっかりと把握しておきましょう。

柔軟性の高さを見極める

キャリアチェンジ転職者には、柔軟性も必要になります。新しい職場のやり方に馴染める人材であるかどうかを、見極めるようにしましょう。

優秀でスキルの高い人材でも、前職の環境ややり方にこだわり、新しい環境に適応できなければ、採用時に期待した効果を得られません。

また、キャリアチェンジ転職者が企業に馴染めるかどうかは、採用側の取り組みも重要です。研修制度や教育体制などのバックアップの用意も忘れないようにしましょう。

キャリアチェンジ転職者を採用する際の確認事項

キャリアチェンジ転職者の採用では、自社側にもしっかりとした受け入れ態勢を整えておくことも重要です。

採用後の教育体制が重要となる

キャリアチェンジ転職者を対象とした業務の訓練や学習の場を設け、能力を引き出しやすい環境をつくっておくことが重要です。OJT(業務中に行う教育)やOFF-JT(OJTに対し、特別に時間を取って行う教育)の体制を設置しましょう。

また、キャリアチェンジ転職者のスキルレベルや実績が想定よりも低く、期待していたような戦力にならない場合でも、教育によっては戦力化できるかもしれません。

厚生労働省の公開しているデータによると、キャリアチェンジをした人で、転職後の訓練を実施した人の職業生活全般と仕事内容・職種に対する満足度は、実施していない人よりも高い傾向が確認できます。

 

【満足またはやや満足している人の割合】

  OJT実施 入社時OFF-JT実施 継続的OFF-JT実施 転職後の訓練なし
職業生活全般 52.8% 51.7% 52.6% 46.2%
仕事内容・職種 67.9% 65.4%

65.4%

61.7%

※2020年データより

 

教育は能力を伸ばすだけでなく、従業員の満足度にも影響します。より長く職場に従事してもらうためにも、教育体制の構築は怠らないようにしましょう。

※出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/21/dl/21-1-2-4_03.pdf

短期間で離職する可能性がある

キャリアチェンジ転職者にとって、日常の変化がストレスの原因となる可能性は否定できません。新しい環境や経験のない仕事内容に対応できず、短期間で離職してしまう可能性があることも、あらかじめ想定しておきましょう。

想定していた社風・業務内容と違った、できると思ったことができなかった、努力が成果を結ばなかったなど、転職のミスマッチによる失意喪失が離職を招いてしまうことも考えられます。選考プロセスでは、可能な限りミスマッチを無くすことも大切です。

キャリアチェンジ採用には明確な採用条件と教育体制を

キャリアチェンジ転職者を採用するメリットは、これまでにない新しいスキルの確保やイノベーションの創造、生産性の向上などが期待できます。会社にとって新しい風を取り入れる手段として、有効な選択肢と言えるでしょう。

さらに採用後の受け入れ体制を整えておくことも、キャリアチェンジ採用を成功させるポイントです。

今回は、キャリアチェンジ採用を成功させるポイントについて詳しく解説しました。ぜひ自社での採用に取り入れることを検討してみてください。

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