HR用語の基礎知識

ギグワーク

人事の図書館 編集長 大西直樹
「ギグワーク」とはギグ(Gig)とワーク(Work)を組み合わせてできた言葉で、「短時間・単発でできる仕事」をする働き方のことを指す言葉です。2019年頃に米国で発祥した概念で、ギグ(Gig)という言葉は英語のスラングで、ライブハウス等で単発の契約で演奏を行うミュージシャンに使われたことから、単発で仕事を受ける働き方としてギグワークの言葉が生まれました。

仕事の発注者と受注者という関係で業務委託契約を結び、成果物や稼働内容に対して報酬を受け取るので、短時間の案件が多く、ノルマもありません。またこうしたギグワークをする人のことを「ギグワーカー」、ギグワークで成立する経済圏を「ギグエコノミー」といいます。

デジタル化、コロナ禍の影響で急速に拡大しているギグワーク。

ギグワーク普及の背景には、以下の2点が挙げられています。

◆デジタル化
ギグワーク普及の理由のひとつとして、デジタル化が挙げられます。デジタル化により、インターネット環境さえあればいつでもどこでも仕事ができるようになったことで、単発で受けられる仕事が増えたことが、ギグワーク普及の背景となっています。

◆コロナ禍
コロナ禍により、時短勤務やリモートワークで、スキマ時間や自由時間を有効に使おうとする動きが増えたことや、収入減を補いたいという動きが、ギグワークの普及に繋がりました。

ギグワークと聞くと、不安定な労働環境の中での一時的なつなぎの仕事だとイメージされがちですが、アメリカのギグワーカーの総収入は2018年で1兆4000億ドルに上り、CNNビジネスの記事によると、2017年5月の時点で、全労働人口の約34%がギグエコノミーに所属しています。アメリカではギグワーカーを守る法整備もなされており、ギグワークもひとつの働き方として認められています。さらに中国でもこの働き方が広がりを見せています。中国人的資源社会保証部の発表によると、国内でギグワークを行う人々は2億人以上に上っており、そのうち50%以上が若い世代だといいます。このように、世界では既にギグワークという働き方は主流になりつつあるのです。

日本でもUberEats等の配達員を目にする機会が増え、ギグワークが少しずつ知られるようになりました。しかし諸外国に比べて日本ではギグワークを本業として働く人も少なく、ギグワーカーを守る制度もありません。さらに日本ではギグワーカーの正確な統計も無いため、ギグワークに対する理解はまだされてないと言えるでしょう。

ギグワークと単発バイト・クラウドソーシング・業務委託との違い。

ギグワークは「単発・短時間で働けること」が大きな特徴であり、アルバイトと違って雇用契約がないことに加え、シフトの穴埋め要因のため、ギグワーカーの予定をもとにシフトを組む・調整するといった作業も必要ありません。また、ギグワーカーは個人事業主として扱われることから、アルバイトや派遣社員を受け入れる際に必要な福利厚生に関する手続きも不要です。

ギグワークと似ている働き方として、単発バイト、クラウドソーシング、業務委託等が挙げられます。組織に所属して働かない点は共通していますが、それぞれギグワークは異なる点があります。

◆単発バイト
ギグワークと単発バイトでは「拘束時間」と「契約」が異なります。単発バイトは、拘束時間が「1日」等の長時間であることが一般的です。一方、ギグワークは1日のうちの数時間というケースが多く、拘束時間が短い傾向があります。また多くの単発バイトは、派遣会社が労働者を雇用し、バイト先に派遣する形態をとっており、派遣会社が労働内容や時間を決めているので、なにかあったときには派遣会社に相談することができます。一方のギグワークは派遣会社などを通さず、かつ仕事の発注者に雇用されることもありませんので、トラブル等の際には発注者と直接交渉する必要があります。

◆クラウドソーシング
クラウドソーシングとギグワークの違いは「納品義務の有無」です。クラウドソーシングは、企業側は「この仕事をいつまでに」というようにプロジェクト単位の発注をすることが多く、これを受注者が完成させて納品するまでが仕事です。一方のギグワークは「この時間だけ働いて」という時間単位の発注です。成果物を納品できるまで働かなければならないという義務はありません。

◆業務委託
業務委託とギグワークの違いは「納品義務の有無」と「契約期間の長さ」です。業務委託で仕事を請け負う際は、クラウドソーシングと同じように納品義務が生じます。また長期契約となることも多く、パートナーとして深く関わり、貢献し続けなければならない場合もあります。また委託元の営業時間に合わせて仕事をする必要がある等、関係性によっては時間的な制約が生じることがあるという点も、ギグワークとの違いです。

ギグワークを導入する上で、企業側のメリット・デメリットとは?

まだ日本では周知され始めたばかりのギグワークですが、ギグワーカーとして仕事をしている人は増加傾向にあります。 そのため、今すぐではなくともこの先ギグワーカーに仕事を任せることを想定し、メリットやデメリットについて理解を深めておきましょう。

◆メリット
・一時的な人手不足にも対応できる。
・シフトを組む手間がない。
・必要な時間帯に必要なだけの人材を集められる。

ギグワークでは労働時間に対する報酬と、ギグワークの仲介サービスに対する手数料を支払えばよく、人件費のコストカットが期待できます。またアルバイトではシフトを組んだり、そこに配置する人員の人間関係といった様々な事情を考慮しなければなりませんし、クラウドソーシングのような業務委託の形態をとる場合も、どういった業務にどの程度の作業レベルを望むのか、それらは誰が管理するのかといった人的な問題も生じます。しかしギグワークの場合はそうした手間が生じません。さらに社会保険やオフィス整備等の福利厚生費も必要ないことから、結果として固定費の節約にも繋がるでしょう。

◆デメリット
・教育・育成をする時間は基本的に確保できない。
・誰が見てもわかるようなマニュアルを用意する必要がある。
・個人情報漏洩の危険性を考慮しておく。

アルバイトや業務委託の場合、継続的な雇用関係を前提としていることから、一定の業務研修を実施できます。しかしギグワークは継続した雇用を前提としていないことから、ギグワーカーに対して教育や育成をする時間を確保することができません。そのため、ある程度の知識が求められる業務にギグワーカーを雇う場合、誰が見てもわかるようなマニュアルをあらかじめ用意しておく必要があるでしょう。またギグワークは基本的に対面ではなくインターネットを介して仕事のやり取りを行うため、個人情報が漏洩してしまう危険性を考えておくことが大切です。発注者とギグワーカーが顔を合わせないまま業務がスタートし、場合によってはそのまま終了する恐れもあることから、今一度情報管理を徹底しておくように心がけましょう。

新しい働き方として認知を広げているギグワークですが、利用者のみならず企業側にとってもメリットがあり、今後も拡大していくものと考えられます。人材不足や突然の欠員で悩んだ際の選択肢の一つとして、準備を進めてみてはいかがでしょうか。

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