PM理論とは?各機能を高める方法と効果的なリーダーの育成方法をわかりやすく解説
2023.10.23
企業の目標を達成するには、チームを一つにまとめて部下を牽引するリーダーが欠かせません。そこでリーダシップを発揮できる人材育成の指針となるのが、リーダー向け行動理論のPM理論です。
汎用性の高いPM理論は、リーダー自身はもちろん、メンバー個々の成長にも応用可能です。
ここでは、企業の経営者層を対象に、PM理論の定義やリーダーに必要な能力の高め方、また、PM理論を活用したリーダー育成法やPM理論を実践する前に知っておきたい注意点などをわかりやすく紹介します。
PM理論とは
PM理論の定義や、PM理論に基づいた4つのリーダーシップ像を紹介します。
リーダー向けの行動理論
PM理論とは、1966年に社会心理学者の三隅二不二が提唱したリーダー向けの行動理論です。P(Performance)は目標達成機能、M(Maintenance)は集団維持機能を意味し、リーダーシップはこの2軸で構成されると考えられています。
P機能は、目標達成のためのゴール設定や計画立案など、成果の向上にむけて発揮されるリーダーシップのことです。たとえば、納期を厳守するための進捗管理や、生産性の向上、業務の効率化に向けた指導などがあげられます。
M機能は、人間関係を良好に保ちチームをまとめるために発揮されるリーダーシップのことです。具体的には、メンバーとの円滑なコミュニケーションや小まめな声がけのほか、メンバー間のトラブル、個々の悩み解消のための積極的なサポートなどがあります。
リーダーシップ像は4パターンに分類される
PM理論では、P機能、M機能の高低によってリーダーシップ像を、PM型、Pm型、pM型、pm型の4パターンに分類しています。
理想的な「PM型」
P機能とM機能がどちらも強い理想的なリーダータイプです。目標達成力や集団の維持、管理能力に優れたチームビルディング向きのリーダーといえます。
目標を達成するための計画立案や的確な指示のみならず、組織の人間関係を良好にしてチームワークを保つ能力に長けているのが特徴です。
PM型のリーダーのもとで働くメンバーは、働きやすさややりがいを実感しやすく、仕事のパフォーマンスも向上する傾向にあります。
短期成果に期待の「Pm型」
P機能が強くM機能が弱い成果重視型のリーダータイプです。目標達成のための綿密な計画や徹底した指導などに長けているため、短期的には成果が期待できる傾向にあります。
一方、メンバーへの声掛けや悩み解消のためのサポートなど、集団維持に関する機能は低いことから、長期的に集団を管理させた場合、メンバーのパフォーマンスやモチベーションの低下につながる可能性があります。
メンバーとの関係は良好な「pM型」
P機能が弱くM機能が強いチームワーク重視型のリーダータイプです。集団を維持する行動に長けており、メンバーとコミュニケーションを取って良好な職場環境をつくることが得意です。
その反面、目標達成に向けた計画立案や成果を上げるための指導力に不安があります。そのため、メンバーのパフォーマンスが十分に発揮できず、生産性が思うように上がらないケースも少なくありません。
リーダーに向かない「pm型」
P機能もM機能も弱い未熟なリーダータイプです。成果を上げる目標達成行動とメンバーをまとめ上げる集団維持行動の両方に不安を抱えているため、リーダーとしての役割を果たすのが難しいタイプと言えるでしょう。
リーダーとして機能させるためには、目標達成能力、集団維持能力の双方を強化する取り組みが必要です。
P機能を高める方法
リーダーにとって目標達成能力は欠かせない要素の一つです。目標達成機能を表すP機能を高める取り組みを確認しておきましょう。
チームの目標を提示させる
まず、リーダーは組織の方針を理解した上で、目標達成までのゴールを明確にしメンバーに提示することが必要です。
リーダーの発信によって、社員は指示の意味を理解し自分の仕事が会社に果たす役割を把握できます。
目標は業務に対するモチベーションが低下しないよう、達成が可能なレベルに設定しましょう。達成困難な目標は社員の意欲を低下させる恐れがあります。また、目標達成のために必要な行動や役割は、メンバーがイメージしやすいよう具体的に提示することがポイントです。
各メンバーの進捗管理をさせる
目標達成のための具体的な行動をメンバーに提示し、各社員の進捗状況を把握します。進捗具合を確認するには、ミーティングや進捗管理ツールなどを活用するのが一般的です。
定期的にミーティングを開くと、仕事の進み具合をチーム全体で共有できるほか、メンバー同士がお互いの進捗状況を確認し合うことができます。仕事の重要性や業務に対する責任感が生まれ目標達成のための行動が促されるでしょう。
常にチームで情報を共有し合い、業務の遅れがある場合は軌道修正を図ります。この一連の行動を継続することで目標達成能力の向上が期待できます。
M機能を高める方法
リーダーは、上司と部下の縦の関係だけではなくメンバー同士の横のつながりにも目を向けるのがポイントです。集団維持能力であるM機能を高める取り組みを紹介します。
リーダーとメンバーのコミュニケーションを増やす
上司と部下の人間関係を良好にするために、日頃からメンバーと小まめにコミュニケーションを取るよう心掛けます。
一人ひとりに目を配って気さくに声掛けするほか、質問や相談を持ち掛けられた際は、積極的に話を聞き一緒に解決策を探しましょう。また、週に1度、少なくとも月に1度は1on1ミーティングを行う機会を設けるのも方法の一つです。
1on1ミーティングとは、リーダーが個々のメンバーと1対1で対話する方法を指します。一方的に指示や指摘をする評価面談と異なり、業務の困りごとやプライベートの悩みなど、部下の現状に寄り添いながら対話するのが特徴です。
メンバー同士のつながり強化に配慮させる
メンバー同士のつながりを強化して結束力を高めるには、お互いを知る必要があります。上司と部下の縦の人間関係だけではなく、メンバー同士の横のつながりを深め、風通しの良い職場づくりを意識するのがポイントです。
ミーティングや社員同士が交流できる場を定期的に設け、メンバー全員で話し合い意見交換ができる機会を増やしましょう。相互交流が増えればコミュニケーションが活発化しチームの結びつきも強くなります。
また、メンバー間でトラブルが発生した場合は、リーダーが率先して仲裁に入り解決策を積極的に模索することが大切です。
PM理論を活用したリーダーの育成方法
ここでは、PM型のリーダーを育成するための効果的な育成方法をいくつか紹介します。
リーダーの任命前に適性診断を行う
リーダーの任命前に、インターネット上の診断ツールなどを利用して適性診断を行うのも方法の一つです。候補者がどのリーダータイプなのかを客観的に把握できます。
自己採点することで普段の行動を見直せるほか、リーダーとして強化すべき機能も明確になります。また、より客観的な評価を把握したい場合は、部下などの第三者による採点も有効です。
PM理論に関する研修を開催する
リーダー育成には、PM理論に関する研修の実施も効果的です。研修によって効率的にPM理論を習得できる上、従業員の自主的な研鑽が期待できます。
研修は役職や年代別に行うのがポイントです。それぞれに必要な能力や成熟度に合ったプログラムを組むことで、スキルの習得や底上げを行います。
必要に応じて、プロの講師を招いた研修を開催するのもよいでしょう。目標達成や集団維持など、リーダーシップを発揮するための能力や高める方法を体系的に学ぶことが可能です。
メンター制度を導入する
PM型リーダーの育成には、メンター制度の導入も有効です。メンター制度とは、社歴や年齢が近い先輩社員が後輩社員をサポートをする制度を指します。サポートする側はメンター、サポートを受ける側はメンティーと呼ばれるのが特徴です。
新入社員にとっては直属の上司よりも親しみやすさがあり、仕事や人間関係の悩みなどを気軽に相談できる上、仕事の向き合い方や人間関係の構築につながる点が大きなメリットと言えるでしょう。
また、メンティーだった後輩社員が、メンターとして新入社員のサポート側にまわることで、リーダーに必要な能力を伸ばし社員一人ひとりの成長にもつながります。
PM理論を実践する際に知っておきたいこと
最後に、PM理論を実践する前に知っておきたい注意点を確認しておきましょう。
PM理論はリーダーの成長を保証するものではない
PM理論はリーダー育成における指針になり得ますが、必ずしも個々の成長を保証するものではありません。しかし、採用時にPM型の資質を備えた人材を厳選できれば、将来リーダーになりうる社員を増やすことが期待できます。
新人を採用する際、リーダーの能力や適性の有無を見極める指針としてPM理論は有効です。それでも見極めが難しい場合や、自社の希望に合う人材が思うように集まらない場合は、人材情報会社を活用するのも一つの方法でしょう。
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メンバーの指導にはSL理論も考慮する
PM理論を実践する場合は、SL理論も考慮すると効果的です。SL理論(Situational Leadership)とは、状況対応型リーダーシップの略で、メンバーの状況や成熟度に合わせてリーダーの指導法を変える理論です。
SL理論では、メンバーに具体的な指示を出す「指示的行動」と、話し合いで意思疎通を図り援助する「援助的行動」の2つの軸の度合いで捉えます。
この2つの軸を組み合わせて、成熟度の低いメンバーには教示型、やや未熟な場合は説得型、また、やや成熟したメンバーには参加型、そして成熟したメンバーには委任型の4つの指導法に分けることができます。
メンバーのタイプ | 指導法 |
成熟度が低い | (教示型リーダーシップ) ・目的やロードマップを的確に指示 ・細かく監督する |
やや未成熟 | (説得型リーダーシップ) ・コミュニケーションを小まめに取る ・質問したり自分の考えを伝えたりする |
やや成熟 | (参加型リーダーシップ) ・自律性を促すよう激励する ・意思決定や問題解決できるよう促す |
成熟 | (委任型リーダーシップ) ・基本的に権限や責任を委ねる ・相談を受けた場合のみアドバイスする |
PM理論を活用してリーダーを育成しよう
PM理論は、リーダーに必要なP機能(目標達成機能)と、M機能(集団維持機能)の2軸から構成されるリーダーシップ理論です。メンバーを一つにまとめて目標を達成するには、P機能とM機能の強さがカギとなります。
PM理論を活用したリーダー育成には、客観的な評価が把握できる適性診断や、PM理論に関する研修の開催などが有効です。
各メンバーの現状を把握し、足りない機能を高める取り組みを継続して、自社にふさわしいリーダーを育成しましょう。
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