HR用語の基礎知識

ワークライフインテグレーション

人事の図書館 編集長 大西直樹
ワークライフインテグレーションとは、「ワーク(職業生活)」と「ライフ(個人生活)」を別のものではなく、人生の構成要素として「インテグレーション(統合的)」に捉え、「仕事」と「生活」両方の充実を求める考え方のことです。いつどこにいても、インターネットに接続することができる現代では、仕事とプライベートの時間を明確に区別しづらくなっており、2020年の新型コロナウイルス感染拡大によってテレワークが推進され、さらに職場と個人の生活が切り離せなくなりました。今や自宅にいても、スマホやパソコンで仕事関係の情報を集めたり処理できるため、たとえ残業をしなかったとしても、自宅でもオフィスと変わらない環境を構築し、プライベートな時間に仕事をすることも可能です。その背景を踏まえ、一部の企業では「職場と生活を前向きに融合させること」を目的とした「ワークライフインテグレーション」の活用事例が増えており、今後さらに広まっていくと考えられています。

ワークライフバランスとの違いは?

ワークライフインテグレーションとよく似た概念としてワークライフバランスがあります。すでに多くの企業がワークライフバランスを意識した改革に取り組んでいるため、その意味を知っている人は多いでしょう。一見すると、ワークライフバランスとワークライフインテグレーションはよく似たものと思えるかもしれませんが、両者は異なる概念です。ワークライフバランスとは、仕事と生活を相反するものとして捉え、両者のバランスを取ることを重視するという考え方ですが、ワークライフインテグレーションは仕事と生活の2つを統合して捉えるという考え方です。ワークライフバランスの場合は、仕事が忙しいと生活が侵食されるという考え方ですが、ワークライフインテグレーションは、生活と仕事は相互にプラスの影響を与え合うものであり、仕事の充実が生活の充実につながり、また生活の充実が仕事の充実につながると考えます。どちらも人生の一部であり、反発するものとは見做さないという新しい考え方なのです。

ワークライフインテグレーションを導入するメリットとは?

ワークライフインテグレーションには企業側、従業員側それぞれに、様々なメリットがあります。

【企業側のメリット】

1.優秀人材の確保
従業員個人が抱える介護や育児や治療等の諸問題に柔軟に対応すると、新たな労働力の創出が期待でき、優秀な人材の確保につながります。家庭の事情でフルタイムの勤務が難しい場合でも、時短勤務やテレワークを導入している企業なら働けるという人も想定できますし、居住地を問わないので、地方の優秀な人材を採用する等、採用の幅も広がります。

2.経費削減
ワークライフインテグレーションを実現するためには、無駄な業務の見直しや情報共有に便利なITツールの導入等を行い、従業員が働きやすい環境を整える必要があります。また、無駄な業務の見直しは、人員の適材適所につながり、労働環境のムダ、ムラ、ムリを洗い出す作業にもなるため、結果的に経費削減にもなります。

3.生産性の向上
従業員が働きやすい環境を整えることは、従業員が心身ともにフレッシュな状態で仕事に取り組んでもらえるので、その結果が業務効率化や生産性の向上、ひいては業績向上につながります。満足度の高い企業で働く人と、不満を抱えながら働く人では、前者のほうが個人のパフォーマンスを発揮でき、企業への貢献度も高くなるのは必然です。

【従業員側のメリット】

1.仕事と家庭の両立
既婚者の場合「仕事が忙しいので、家族と過ごす時間が取れない」、独身者であれば「出会いのチャンスを拡げられない」というようにプライベートが犠牲になることがなくなり、仕事と家庭が両立しやすくなります。家庭での時間を増やしたければ、テレワークを活用して自宅で仕事に専念することもできますし、育児中や介護中の方、療養中の方といった、働きたいけど働けない人も自分の生活レベルにあった働き方を選択できます。

2.ストレス軽減
フレックスタイム制やテレワークを活用することで、満員電車の通勤ストレスや、人によっては煩わしい人間関係のコミュニケーションの負荷を避けることができます。また、時間の使い方にメリハリがつくだけでなく、時短勤務や隔日勤務といったフレキシブルな働き方ができれば、長時間労働から解放されます。

3.プライベートな時間を柔軟に確保
仕事とプライベートに境界線がないため、無理やり残業して仕事を終わらせることがなくなり、逆に早めに集中して仕事を終わらせることもできるため、まとまったプライベートな時間を確保しやすいメリットがあります。やり方によっては時間や場所を問わず仕事ができるため、イベントや行事の参加日程を避けて仕事の日程を組むことが可能ですし、仕事が終わらない場合も柔軟に追加日程を調整できます。

ワークライフインテグレーションを取り入れるために重要なこと。

様々なプラスの効果を期待できるワークライフインテグレーションですが、従業員の意識を変えるだけで実現できるものではありません。企業と従業員の双方が意識や考え方を変えて、職場環境づくりを進める必要があります。以下では、ワークライフインテグレーションを推進するうえで、従業員(個人)と企業、両方が変えてゆくべきポイントについてご紹介します。

◆従業員(個人)として変えてゆくべきポイント

ワークライフインテグレーションを取り入れるために重要なことは、「生産性」を意識することです。

・自主性や主体性が不足している
・長時間労働・残業が当たり前の感覚になっている
・生産性を向上させる意識が低い

と感じているならば、今持っている考え方を変える必要があります。短時間でいかに効率よく結果を出すかが重要であることを、意識づけるようにしましょう。

仕事も生活も垣根なく双方で刺激し合い、充実している環境が、ワークライフインテグレーションを実践している状態と言えます。そのため、プライベートの場でも「これは仕事に活かせるかもしれない」と感じたら積極的に知識を吸収するよう心がけてみましょう。仕事と生活の間の壁をなくす発想の転換が、求められています。

◆企業として変えてゆくべきポイント

リモートワークの制度が整備されていなかったり、業務用のパソコンを持ち帰ることを禁じたりしている企業は、まだまだ多いと思われます。しかし、こうした制限が「働く場所と時間の柔軟性を制限している」とも言えるのです。また、クラウドサービスの利用制限も課題になります。いつでも業務メールを確認できたり、会社のデータにアクセスできたりしなければ、ワークライフインテグレーションは実現できません。働く人が、好きな場所で好きな時間に仕事ができる環境作りが、企業側には求められています。

また、人事評価制度そのものを見直す必要も出てくるでしょう。仮に、評価基準が「労働時間」を重視しているのであれば、「生産性」や「成果」による評価に見直さなければなりません。もちろん、評価をする立場である経営者や管理者の意識改革も大切ですし、「プライベートの時間も働かされるのか」と従業員が誤った解釈をしないための充分な説明と理解も必要です。

既にワークライフバランスを導入している企業でも、従業員のパフォーマンスを維持できてない、もしくは従業員の生活を犠牲にしてしまっているのではないか、という心配の声を聞くことがあります。ワークライフインテグレーションは決して、簡単に始められるものではありません。それでも、仕事とプライベート両方が大切でどちらも優先できる状態を作りたい、相乗効果を生み出したい!と思われたのであれば、前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

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