HR用語の基礎知識

360度評価

人事の図書館 編集長 大西直樹
360度評価(英語:360-Degree Feedback)とは、上司・同僚・部下等、評価対象者にとって立場の異なる人が多面的に評価をする手法のことで、「360度フィードバック」「多面評価」とも呼ばれています。 「評価」という言葉が付いてはいますが、元々は能力開発の手法としてアメリカで誕生したもので、必ずしも人事評価のための手法ではなく、処遇等とは結び付けずに育成の手法として用いられることも多くあります。

360度評価に注目が集まる背景とは?

「働き方改革」が叫ばれるようになり、企業の働き方は大きく変わってきています。残業時間の短縮といった働き方の変化とともに、自宅やサテライトオフィス等でのテレワークが推奨され、働く場所も変化しています。その結果、直属の上司が常に仕事内容や勤務態度を把握できないため、従来のように上司のみが被評価者に対して評価を行う一方的な評価がきわめて困難になってきています。

普段あまり関わることの少ない上司から評価を受けた場合、良い評価であるならあまり気にならないかもしれません。しかし悪い評価や改善点を指摘された場合、被評価者はその評価に対して納得しにくく、会社に対する不満の一因となってしまう可能性もあります。これに対し、360度評価により普段から関わりの深い同僚や部下といった、様々な人から評価を受けることで、より納得感があり現実に即した評価が行えると期待されています。

さらに人材育成において、本人の「自律性」が重要視されてきており、本人に「気づき」を与えるためのフィードバックの手法として360度評価が注目されています。1人の上司による評価よりも、様々な立場の複数の人による評価の方が、本人も真摯に受け止めやすいと考えられており、特に管理職層では「部下(下位者)からどのように見られているのか」という気付きをマネジメントに活かしてもらうために、また若手社員では「周囲からどのように見られているのか」という気付きをチームプレーに活かしてもらうために、360度評価が有効な手法として注目されています。

360度評価のメリットとは?

多面的な評価を行う為の360度評価ですが、どのようなメリットがあるのでしょうか?

◆評価の客観性が高まる。
そもそも評価は公平で客観的なものでなければなりませんが、人間が人間を評価する以上は好き嫌いや相性といった感情的なものが多少なりとも影響することが考えられます。複数の評価者から評価が得られる360度評価では、より公平で公正な評価が可能となります。

◆直属の上司が発見できなかった点を評価できる。
フラット化する組織、多様化する働き方の影響で上司が部下との接点が少なくなる中、複数の評価者の視点で評価をすることで、被評価者の納得性を高めることができます。同時に上司が気づけていなかった新しい特性の発見にもつながりますし、結果のフィードバックを通してコミュニケーションの向上も図ることができます。

◆多面的に自身の現状を知ることができる。
自己評価と他者評価の違い、関係者による評価の違いから自己の強みや弱みを多面的に把握し、自己理解を深めることができます。また、上司による指導・育成のポイントが明確になり、効果的な育成につなげることもできます。管理職層では、部下や同僚からの率直な評価を得ることで現状の課題の認識につながります。

◆コンピテンシー(行動特性)の浸透につながる。
被評価者が改善すべき行動を自覚することで、目指す姿に近づくための意識改革ができます。そのため、高い成果をあげるために必要なコンピテンシーを浸透させ、自社のミッションやバリュー、クレドの体現を加速させることができます。

◆360度評価によって社員間のいじめ等、人間関係の把握ができる可能性がある。
360度評価によって社員間のいじめ等、人間関係の把握ができる可能性があります。評価を通じた上司と部下とのコミュニケーションの増加により部署での人間関係の問題等も把握できるようになるので、社員間での力関係によるいじめやパワーハラスメントを把握しやすくなる可能性があります。

360度評価導入を成功させる4つのポイント。

◆被評価者に評価内容のフィードバックを行う。
評価者による評価が終了したら、必ず被評価者にフィードバックを行うようにしましょう。長所を伝える時はフィードバック担当者の主観を入れず、事実のみを伝えましょう。一方、評価の低い点を伝える際には、本人の改善に向けて「具体的にどうしていこうか」とアドバイスと共に伝えていきましょう。被評価者は評価に対して納得し、企業側が育成に力を入れていることを感じて組織への信頼感も高まります。

◆評価項目をできるだけ少なくする。
360度評価導入のもうひとつのポイントが評価項目をできるだけ少なくすることです。評価項目が多い場合には、評価にかかる時間が長くなり評価者への負担も大きくなっていってしまいます。360度評価は、通常の業務を行いながら実施していくため、極力、評価者への負担とならないことが重要です。かといって設問数を極端に少なくしてしまうと、有効な評価データが集まりません。評価項目はおおむね10分~15分程度で回答できる設問数が理想です。

◆設問ではある程度の自由があるとより評価が充実する。
360度評価の設問のなかに、自由に記述が可能な項目も設けると回答の自由度が増し、様々な評価を集めることができます。また選択式の設問の場合でも「良い」「悪い」だけではなく、「どちらともいえない」というように3段階または4段階による評価項目を設けるとともに、「わからない」というような選択肢を設け無理に評価をさせないことも重要なポイントです。

◆被評価者はなるべくすべての人を対象とする。
360度評価で評価を受ける被評価者は、なるべくすべての人を対象とすることが望ましいです。社員だけではなく、管理職や役員、代表者といったすべての人が被評価者となることで、公平感が増すほか、組織運営に自分が関わっているという実感を得ることで、組織の一員であることを再認識し、当事者としての意識向上やモチベーションの向上といった効果が期待できます。また、普段評価されない経営陣が社員の評価を知ることで、今後の組織運営に関する貴重な情報源ともなります。

360度評価は部下が上司を評価するという非常に風通しの良い社風をもたらすことができる等、大きなメリットがあります。自社の課題解決のために、制度をしっかりと制定し、より働きやすい企業を目指すようにしましょう。

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