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学情レポート【COMPASS】2015.07

学情レポート【COMPASS】 2015.07
『社会や人を動かす、学生たちの取り組みの軌跡』

社会人基礎力育成グランプリ2015 受賞校インタビュー

今回で8回目を迎える「社会人基礎力育成グランプリ」。その決勝大会が2月26日に東京で開催された。「社会人基礎力育成グランプリ」は、ゼミ・研究・授業等における社会人基礎力の「育成・成長の事例」と「その成果」を指導担当教員+学生によるチームが発表するもので、社会人基礎力の礎となる3つの能力(「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」)がどれだけ成長したか、大学で学ぶ一般教養や専門知識をどれだけ深めることができたかという点で審査が行われる。今回は全50チームの中から地区予選を勝ち抜いた7チームが決勝大会に進んだ。地元企業とともに地域活性化を目指した取り組み、東日本大震災の風化を防ぎ、被災者支援に臨んだ取り組み、政策提言となるようなプロジェクトに挑んだ取り組みなど、大学教育の枠を超えて様々なことにチャレンジした学生たちによる熱を帯びたプレゼンテーションが行われた。

今号ではその中から大賞(経済産業大臣賞)を受賞した創価大学・経済学部、準大賞を受賞した大阪工業大学・知的財産学部および福岡女学院大学・人文学部の取り組みと学生の成長を、インタビューにより紹介する。

開催概要

開催日:2015年2月26日(木)
会 場:拓殖大学文京キャンパス
主 催:社会人基礎力協議会
共 催:経済産業省


決勝大会 結果

社会人基礎力大賞
(経済産業大臣賞)

  • 創価大学
    (関東地区代表)

社会人基礎力準大賞

  • 大阪工業大学
    (近畿地区代表)
  • 福岡女学院大学
    (九州・沖縄地区代表)

〈決勝大会出場大学一覧〉

【北海道・東北地区代表】
 石巻専修大学 経営学部
 「シャインズシャドウ 〜被災者を支える大きな影〜」

【関東地区代表】
 (1)城西大学 経済学部
 「目指せ地域活性化!!
  〜カップラーメン商品開発を通しての社会人基礎力の育成〜」

 (2)創価大学 経済学部
 「男女が共に働き、共に育む社会へ
  〜学生の学生による学生のための情報サイト、
   イクメン通信簿プロジェクト〜」

【中部地区代表】
 中京大学 総合政策学部
 「地元和菓子店との産学連携プロジェクトを通じた  
  社会人基礎力育成の取組み」

【近畿地区代表】
 大阪工業大学 知的財産学部
 「イクメン商品で自社ブランドを立ち上げる!
  〜知財力を活かしたマーケティング戦略の展開〜」

【中国・四国地区代表】
 広島工業大学 工学部
 「被災者の安らぎの場を創る」

【九州・沖縄地区代表】
 福岡女学院大学 人文学部
 「大学生の授業改革 近頃問題となっている大学の授業・・・
  地方女子大生がアクティブラーニングの授業改善へ挑む」


<社会人基礎力の3つの能力(12の能力要素)>

前に踏み出す力(アクション)

~一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力~

主体性
 

物事に進んで取り組む力

働きかけ力
 

他人に働きかけ巻き込む力

実行力

目的を設定し確実に行動する力

考え抜く力(シンキング)

~疑問を持ち、考え抜く力~

課題発見力

現状を分析し目的や課題を明らかにする力

計画力

課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力

創造力

新しい価値を生み出す力

チームで働く力(チームワーク)

~多様な人々とともに、目標に向けて協力する力~

発信力
 

自分の意見をわかりやすく伝える力

傾聴力

相手の意見を丁寧に聴く力

柔軟性
 

意見の違いや立場の違いを理解する力

情況把握力

自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力

規律性

社会のルールや人との約束を守る力

ストレスコン 
トロール力

ストレスの発生源に対応する力

大賞(経済産業大臣賞)

創価大学 経済学部

「男女が共に働き、共に育む社会へ
 ~学生の学生による学生のための情報サイト、
  イクメン通信簿プロジェクト~」

指導教員:学士課程教育機構 副機構長・教授 西浦 昭雄 氏

取り組み内容について

今回当ゼミ生が取り組んだ内容は、「女性の社会進出」を大目的として、それを達成するために必要な男性の育児支援制度の利用を促すためのWebサイト「イクメン通信簿」の立ち上げです。「イクメン通信簿」とは、子育てサポート企業として厚生労働大臣が認定する「くるみんマーク」の取得回数や、男性従業員の育児休業・時短勤務・子の看護休暇の各制度取得率等で、男性社員の育児支援制度の利用を企業がどの程度促進しているかをランク付けしたサイトです。

この取り組みを行うに至ったきっかけですが、ゼミ生の一人がネパールに留学した際、「女性は家事を行い、外で働くのは一般的でない」という男女格差を目の当たりにしたことでした。改めて日本を見たときに、先進国と言われる日本でもまだまだ女性の社会進出が進んでいないことを再認識したそうです。当ゼミでは、授業外で学生が集まり社会貢献プロジェクトを進めるサブゼミ制度を設けているのですが、本年度のサブゼミ活動ではこの学生がリーダーとなって「女性の社会進出」をテーマに取り上げることになりました。ただそこからすぐに「イクメン通信簿」というアイディアが出てきたわけではなく、その発想に至るまで実に3ヶ月掛かりました。「女性の社会進出」というテーマを掲げたものの、それは政府の成長戦略における重点課題でもあり、学生が扱うにはあまりにも大きなテーマ。どうすればこの課題を解決できるか、何度も何度も考えてはみるものの、ある方法では学生でできることには限界がある、またある方法は既に先行事例がある・・・多くのアイディアを出しては検証を重ねましたがどこかで行き詰ってしまい、これだという結論にはなかなか至りませんでした。

3ヶ月後、有力案として残ったものが「一人目プロジェクト」です。骨子としては「男性の育児休暇の取得が促進されれば女性の社会進出も進むはずだが、これまでの慣習などもあり男性従業員はなかなかこうした制度を利用しづらい。なのでまずは一人、男性が育休を取得することで後続が出やすい環境をつくろう」というものです。ただこのアプローチ方法も、一人に注目してその一人を追いかけても、その社員の職場復帰後の処遇等を考えたときに必ずしも好ましいものになるとは限らない。そして何よりもプロジェクトの限られた期間では効果検証が難しいということで、この案も行き詰ってしまいました。

振出しに戻ってしまいましたが、彼らはただでは起きませんでした。これまで様々な企業の女性進出や男性の育児支援制度取得の取り組みデータをまとめてきており、このデータを活用したらどうだろうという発想に至ったわけです。男性の育休取得の問題は、個人の意思よりも、組織の問題という要素が強い。企業が取得促進を図らないと、休職中の業務が他メンバーの負荷に繋がることに遠慮して取りづらいのが実情である。では企業が積極的に男性社員の育児休暇取得を促進するためには何が必要か。学生たちはそれを、社会からの目、そして学生からの目というインセンティブであると考えました。育児支援制度を積極的に活用している企業は世間からの評価も高くなり、学生からみると就職先を選ぶ上での大きな判断材料になる。すでに200~300社の事例を調べていたのでさらにもっと多くの事例を調べ、これを通信簿という評価形式のWebサイトで周知する。そうすることで「様々な立場の人が御社の取り組みに注目していますよ」というメッセージが発信でき企業に対して社員の育児参加を後押しするような動機付けをしていける。それが学生たちが導き出したアイディアでした。学生たちがとことん考え抜いたからこそここまで到達することができたのだと思います。

社会人基礎力の向上とともに、社会へ影響を与えられるものにまでプロジェクトを成長させる

その後学生たちは、ホームページ等で各社の取り組みに関する情報を調べ、企業に対してこの内容で問題ないかなど確認を取っていったのですが、結果的にその数は4000件にも上りました。学生の取り組みということで相手にしてくれない企業が出てくる懸念もありましたが、それでも73社はホームページにない非公開情報まで提供してくださるなど、学生の取り組みに理解を示していただきました。またそうした企業とのやり取りの中で「もっと誠意のあるメールじゃないと駄目だよ」といったアドバイスをいただくなど、企業の方にも生きた教育をしていただけたと思っています。情報収集作業は主に夏休みに行いましたが、作業量は膨大で、一人でも欠けたら手が回らなくなる状況でした。その中でも一人ひとりが自分のやるべきことに関して責任を持って取り組み、インターンシップやアルバイトなどで自分が動けない場面では他のメンバーに責任をもってバトンタッチする、そうしたやり取りの中でお互いの連帯感、そして信頼を深めていったようです。

今回の取り組みの中で、学生たちはまず「女性の社会進出」という課題を解決するためのアプローチ方法を徹底的に考えることで「考え抜く力」を身につけました。そして膨大な量の情報収集や企業担当者とのやり取りの中で「前に踏み出す力」を、さらにはメンバー同士で助け合いながら進める中で「チームで働く力」を身につけるなど、まさに取り組みの一連の流れの中で、社会人基礎力のあらゆる要素を向上させていったと思います。

▲徹底的に議論を重ねる学生たち

実は社会人基礎力育成グランプリの1週間後に厚生労働省イクメンプロジェクト推進委員会主催の「ソーシャルビジネス・アイデアコンテスト」という大会があり、学生たちはこの「イクメン通信簿」を引っ提げて出場。50を超えるチームが参加する中で見事優勝を手にしました。社会人基礎力育成グランプリは学生の成長が評価基準ですが、ソーシャルビジネス・アイデアコンテストは企画勝負。実際のイクメンの専門家が見ても「イクメン通信簿」という企画を評価いただけたことは、学生たちが社会に影響を与えられる存在に成長できたのだと思い、とても誇りに感じています。

(イクメン通信簿:http://ikujihan.lk6.co/

準大賞

大阪工業大学 知的財産学部

▲新商品開発に向けた会議の様子


「イクメン商品で自社ブランドを立ち上げる!
 ~知財力を活かしたマーケティング戦略の展開~」

指導教員:知的財産学部 知的財産学科 准教授 高田 恭子 氏

取り組み内容について

知的財産学部は特許や意匠、商標などの知的財産について多角的に学ぶ国内唯一の専門学部です。その知的財産学部の有志学生を集め、実践教育および地域連携の一環として『知財PR隊』というプロジェクトを実施しています。『知財PR隊』プロジェクトでは、中小企業や個人の知的財産に関する相談をうけて学生が教員の指導のもとで知的財産コンサルティングをし、さらには一緒になって知的財産活動をしていくものです。その中で東大阪市のとある中小企業から「初めての自社製品となる『抱っこ紐商品』を開発しているが知財について分からないので相談に乗ってほしい」という依頼がありました。今回社会人基礎力育成グランプリに出場したのは、この企業の知財活動に取り組みたいと自発的に応募してきたメンバーです。小規模企業には知的財産の部署がないことが多く、商標や特許をとりあえず取得してはいても効果的に運用できていないのが実情です。今回の企業も例外ではなく、商標および特許の取得も販売する寸前までしていないような状態で、学生たちは新商品の権利取得(特許・商標の調査、提案)とブランディング(流通調査、市場調査、アンケート調査)活動を企業の方と一緒に行いました。また知的財産活動に留まらず、消費者を招いた試作品の調査会など商品開発にも関わり、まさに企業と一体になって活動に臨んでいきました。

チームの一人一人が考え、行動することが主体性の獲得に繋がる

この取り組みにおける一番の壁は「学生たちがいかに主体性を獲得するか」であったと思います。例えば企業担当者とともに会議を開く際、「会議資料をどう作ればいいか」「どのようにアジェンダを立てればいいか」といったことが分からず、学生はやり方ではなく内容を聞いてくる。「自分たちで案を出すように」と伝え、その後学生たちがアドバイスを求めてきた際も、結局私の顔色をうかがいながら答えを待ってしまう。いわば「答えは誰かが与えてくれるもの」という考えにとらわれた状態でした。また市場調査や流通調査などを実感するにつれて学生のやる気にも個人差が生まれ、学生同士が集まっても何も決まらないまま1ヶ月ほど経過してしまった時がありました。やる気のあるリーダーが一人で頑張っているような状況で仲間割れも発生している状況でした。これ以上活動継続は難しいと判断し「もうやめたら」と伝えましたが、リーダーは活動をやり遂げたいという思いが強かったので、「メンバーの一人一人が達成感を感じられないとモチベーションが維持できずチームが停滞してしまう。リーダーが一人で頑張るのではなく、役割分担をして皆が達成感を得られるようにしてみては」とアドバイスしました。それをきっかけに学生たちはチームの在り方を見直し、何とか活動を立て直していきました。このチームの在り方を考える経験がその後の活動の原動力となりました。

このプロジェクトの醍醐味は様々な人と関われること。だから学生には、とにかく現場に足を運ぶよう何度も伝えてきました。しかしながらアルバイトを優先し、相手先企業へ足を運びたがらない傾向にあります。そのことから活動が停滞してもいましたが、前記の続行を決意してからは皆が学生生活の中におけるこのプロジェクトの優先順位を高め、一つ一つの会議の準備や実地での対応、そして学生同士での顔をつき合わせた話し合いなどの質や量を向上させていきました。そうした経験を通して主体的に活動するとはどういうことかを学んでくれたように思います。

学生たちが社会に出た際、就職先の企業で、知的財産の具体的な活動について学んだことをダイレクトに活かしていけるのではと思います。もちろんそれだけではなく「組織の中で主体的に活動するとはどういうことか」「今自分が何をすべきか」といったことをじっくり考え行動に結び付けていったこの経験は、学生たちの大きな力になってくれると信じています。

準大賞

福岡女学院大学 人文学部

▲ワークを取り入れながら双方向型の授業を行う


「大学生の授業改革 近頃問題となっている大学の授業・・・
 地方女子大生がアクティブラーニングの授業改善へ挑む」

指導教員:人文学部現代文化学科 教授 キャリア開発教育センター長 浮田 英彦 氏

取り組み内容について

当ゼミの学生たちが取り組んだことは、学生たち自身の手による大学の授業運営です。15コマのキャリア形成に関する授業で、女性社会人などのゲストスピーカーを招致し、「女性として働くとは」などのテーマで語っていただくことが主な内容でした。自身の将来を考える上で欠かせない、学生たちにも身近なテーマではありましたが、授業運営を進めていく中で学生たちは大きな挫折を味わうことになりました。開講した当初はゲストスピーカーへの応対や気配り、また授業をスムーズに進行できるかという点ばかりに気を取られており、授業後のアンケートを見ると受講生からの評価は芳しいものではありませんでした。もっとも受講生の態度も良いとは言えず、進行役の学生が受講生に対し「飲み物は机の上に出さない」「バッグを床に置かないように」などと注意しても全く聞き入れられず、遅刻や居眠りをする受講生までいました。思い通りに授業が展開できないことに学生たちは大きなショックを受けていました。「どうやったら受講生を巻き込んだ魅力的な授業にすることができるのだろうか」授業後の対策会議で徹底的に考えた末に学生たちが辿りついたものは、普段からゼミで学んでいる『生徒への声掛けをワントーン高く発声する』、『全員と目が合うように笑顔でゆっくりと語りかける』、『アクションは大きく』などのファシリテーション技法でした。また、授業内容も一方的な講義形式ではなく、パネルディスカッションや質疑応答の時間を設けることで受講生を巻き込めないかと考えていきました。時間はかかりましたが、こうしたアイディアを実践していく中で受講生の姿勢も徐々に積極的になり、授業内での発言も増えていきました。何よりも受講生の表情が明るくなり、「生きた授業をしているな」と私自身も思えるほどでした。初めからそうした意図があったわけではないにしろ、試行錯誤する中で、教える側も教わる側も双方向で意見を発信し、その場にいる全員が主体的に学習し合う「アクティブラーニング」を体現したものにまで授業を成長させることができたことは学生たちの大きな自信になったと思います。

先輩への憧れや敬意がモチベーションに繋がる

今回学生たちが試行錯誤しながらも満足度の高い授業運営を成し遂げられた背景には、「社会人基礎力育成グランプリ2012」で大賞に輝いた先輩達への憧れがあったのだと思います。「いつかは私たちもあんな風になりたい」という強い想いが高いモチベーションに繋がっていたようです。当ゼミでは、私はできる限り学生と距離を置き、先輩が後輩を育てることを慣習化しています。また先輩が努力している姿を後輩が見聞きし、自分のことと同様に考えるよう働きかけています。特に今年準大賞を受賞した学生たちとグランプリ2012で大賞を受賞した先輩とは年齢が離れているにも関わらず、「その先輩たちのようになりたい」「先輩たちに追いつきたい」と思えたのは、ゼミ活動で育まれた先輩への憧れや敬意が良い循環の中で連鎖していっているのだと思います。

近年では、当ゼミの学生達が希望する業種や職種の幅がどんどん広がっており、メーカーやソフトウェア業界などこれまでは志望者の少なかった企業へ果敢に挑戦しています。これは様々な経験を経て、自分を見つめ、世の中を知ることで培った自信や気付きによるものだと感じています。「結婚しても仕事は楽しいから、辞めずにずっと働き続けたい!」仕事に対して、こういった前向きな意欲を持ち続ける学生達が後に続くことを期待しています。

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