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学情レポート【COMPASS】2014.09

どうなる!? 2016年卒採用 ~企業・大学・学生の動向に迫る~

経済環境の好転により、学生優位の売り手市場へ変遷を遂げつつある新卒市場。2015年卒採用においては予期せぬ内々定辞退により採用活動は長期化、多くの企業において終わりの見えない採用活動が続いている。しかしながら、既に2016年卒採用を意識した取り組みは始まっている。インターンシップを実施したり、来年3月以降の合同企業セミナー出展を画策したりと、採用計画の検討時期は昨年とあまり変わらないようだ。

2016年卒採用は、採用スケジュールが大幅後ろ倒しとなり、企業、学生、大学ともに大きな関心事の一つと言えるだろう。今号ではその2016年卒採用について、2014年6月に企業・団体の採用担当者を対象に調査・集計した「採用状況アンケート」を基に各社の動向についてレポートする。合わせて、大学の2016年卒学生に対する就職指導の実施状況や当事者である2016年卒学生の思いについても紹介する。

企業の動向について

「スケジュール後ろ倒しに賛同できない」企業が56.2%と過半数

2016年卒採用から、政府の要請、それに伴う経団連発表の「採用選考に関する指針」に基づき「採用広報開始が大学3年生の3月以降、選考開始が4年生の8月以降」と採用スタートが後ろ倒しになる。この後ろ倒しの賛否について昨年の6月と今年の6月に、企業・団体の採用担当者にアンケート調査を実施した。

「賛同」「どちらかと言えば賛同」の合計は前年15.3%から今年12.4%と微減。「賛同できない」「どちらかと言えば賛同できない」の合計は、前年56.3%、今年56.2%とほぼ変化はなかったものの半数を超えている。2015年卒採用の実施前後で意見の大きな変化は見られず、「スケジュール後ろ倒し」を懸念材料と捉える企業が多いのが現状と言えよう。

賛同する企業の「賛同理由」は、前年も1位であった「学生が本来すべき学業に専念できる時間が増えるため」が前年比6.2ポイント増の61.6%で今年も1位となった。2位に挙げられた「学生が学業や課外活動、就職活動準備等に費やす時間が増えることで学生の質の向上が見込めるため」(29.1%)と合わせ、就職活動以前に、まずは学生生活を全うすることが学生の本来あるべき姿だという思いが読み取れる。採用担当者からも「就職することが大学への入学目的になっており、建前ばかりの学生が増えているように思う。就職活動が遅くなれば、今より本質的な部分が磨かれるのでは?」「学業や学生仲間との交流に時間をかけ、社会性を養ってほしい」といった意見が寄せられた。

「賛同できない理由」については、「採用活動期間が短縮化されることで他社とのバッティングの増加が予測されるため」(65.6%)が前年に続き1位に挙げられた。中堅・中小企業からは「今までは大手企業とのバッティングを避けるため遅めに動き出していたが、大手企業のスケジュールが遅くなればバッティングは避けられない」といった声が多く聞かれる。質の高い学生確保に向け企業規模を問わず選考や内々定出しが集中し、学生の取り合いが激化する。この点をデメリットと捉える企業が多いようだ。2位に挙げられた「採用活動期間が短縮化されることで辞退者が出た際の再母集団形成に困難が生じることが予測されるため」(47.2%)は前年から8.0ポイント上昇した。学生優位となった2015年卒採用で内々定辞退が続出したことを受け、採用期間が短縮化される2016年卒採用においては辞退者発生時のリカバリーの難易度がよりいっそう高まることを懸念しているようだ。

2016年卒以降のスケジュール後ろ倒しについて

2016年卒以降のスケジュール後ろ倒しについて グラフ

参考:【2016年卒以降のスケジュール後ろ倒しについて(2013年6月調査時)】

参考:【2016年卒以降のスケジュール後ろ倒しについて(2013年6月調査時)】 グラフ

後ろ倒しに賛同する理由

後ろ倒しに賛同する理由 グラフ

後ろ倒しに賛同できない理由

後ろ倒しに賛同できない理由 グラフ

出所:学情「採用状況アンケート(2013年6月調査)」および学情「採用状況アンケート(2014年6月調査)」

説明会は3月開始を遵守するも、選考・内々定出し開始時期は業界によりばらける結果に

採用後ろ倒しについて「賛同できない」という声が多い中、各社はどのタイミングで採用活動に本格的に乗り出すのであろうか。会社説明会の開始時期については「2015年3月頃」が49.5%であり、半数の企業は採用広報スタートについては「採用選考に関する指針」の解禁タイミングに合わせる見込みだ。3月以前に説明会を実施する企業は19.6%あり、解禁日を待たずして採用広報に乗り出す企業も少なからず見受けられる。

上場区分別では「2015年3月頃」「2015年4月頃」「2015年5月以降」の合計が「上場」=83.6%、「非上場」=79.4%となった。業界別に見ると「2015年3月頃」開始については「金融・証券・保険」(84.6%)が他の業界から頭一つ抜け出し、3月1日を皮切りに一斉に広報活動に乗り出す見込みだ。また、3月以降に説明会を開始する企業は「メーカー」(88.6%)、「商社」(81.8%)、「百貨店・ストア・専門店」(88.2%)、「金融・証券・保険」(92.3%)、「サービス」(78.9%)、「情報(通信・マスコミ)」(82.9%)、「ソフトウェア・情報処理」(75.0%)、「その他業界」(70.9%)とどの業界においても70%以上であり、業界により差はあるものの、多くの企業が「3月広報開始」を守る意向である。

会社説明会の開始時期

会社説明会の開始時期 グラフ

会社説明会の開始時期(上場区分別)

会社説明会の開始時期(上場区分別) グラフ

会社説明会の開始時期(業界別)

会社説明会の開始時期(業界別) グラフ

一方、「選考開始時期」については「2015年8月頃」選考を開始する企業が23.4%と最も多いものの、2015年8月以前に開始する企業が75.7%と4分の3を占める。8月に次いで多いのが「2015年3月頃」(20.2%)、次に「2015年4月頃」(19.7%)であり、前年までの選考開始タイミングと大きく変えずに実施する意向の企業が多い。または3月の説明会開始後、8月まで待っていたら他社に学生を持っていかれる可能性が高く、接触した学生の自社への熱意が冷め止まないうちに選考のフェーズに持っていきたいという気持ちの表れとも捉えられる。

上場区分別に見ると、「2015年8月頃」は「上場」=32.6%、「非上場」=20.7%となり、上場企業に遵守傾向が見られるが8月以前にも67.4%の上場企業が開始と答えており、上場・非上場による大きな特徴の差異とは言えない。業界別では説明会開始時期と同様、選考開始時期においても「金融・証券・保険」が指針遵守の代表格であり、「2015年8月頃」選考開始が69.2%に達し、他業界を引き離している。一方で、「金融・証券・保険」「メーカー」以外の全ての業界においては、「2015年8月頃」選考開始よりも「2015年3月頃」また「2015年4月頃」に選考開始する企業が多く、業界により選考開始タイミングが二分される状況になりそうだ。

選考開始時期

選考開始時期 グラフ

選考開始時期(上場区分別)

選考開始時期(上場区分別) グラフ

選考開始時期(業界別)

選考開始時期(業界別) グラフ

「内々定出しの開始時期」についても「選考開始時期」同様、「2015年8月頃」が28.1%と一番多いものの、2015年8月以前の内々定出しが61.5%に達する。業界別では「2015年8月頃」に内々定出しを開始するのは、「金融・証券・保険」(76.9%)がトップであり、次いで「メーカー」が46.1%と続くが、それ以外の業界では「2015年4月頃」から順次内々定出しが行われていくことになりそうだ。

12月広報スタート、4月選考開始だった前年までと比べ、2016年卒採用では3月広報開始とともに選考もスタートする。その一方で業界によっては8月に選考開始ピークがやって来る。前年までであれば12月から4月までに様々な説明会に参加しながら志望業界の幅を広げ企業理解を深めることができたが、2016年卒採用ではそんな暇もなく選考に突入することになる。この状況は学生の混乱を招くだけでなく、企業にとっても「志望度が高くない学生」「社会人と接し慣れしていない学生」の受験が増えるなど、採用の困難さを引き上げることになりかねず、「選考時期の長期化」は免れない事態となりそうだ。

※なお、当記事で取り上げた「採用状況アンケート」の回答企業695社のうち、2016年卒採用の説明会・選考・内々定出しの開始時期が「未定」であった企業がそれぞれ40%ほどであった。今回の分析では「未定」は反映せず集計した。

内々定出しの開始時期

内々定出しの開始時期 グラフ

内々定出しの開始時期(上場区分別)

内々定出しの開始時期(上場区分別) グラフ

内々定出しの開始時期(業界別)

内々定出しの開始時期(業界別) グラフ

出所:学情「採用状況アンケート(2014年6月調査)」

大学における就職指導について

各大学の指導は「事前準備の重要性の理解」と「インターンシップ参加促進」に注力

就職活動スタート時期の後ろ倒しに伴い、各大学ではどのようなことを意識して2016年卒学生の就職指導に当たっているのか。4〜7月には「事前準備の重要性の理解」と「インターンシップ参加促進」に重点を置いた内容で就職ガイダンスが実施された。翌年3月以降、就職活動の各ステップは短期で進むことが予想され、いかに躓かず進めるかの鍵は、早期から自己分析や業界研究などを通して、自分や社会について正しく深く理解することに掛かっていると言える。そのため例年以上に強く事前準備の重要性を学生に訴える大学が多い。

インターンシップ関連の講座では、インターンシップの意義や情報収集の仕方、エントリーシートなどの選考対策や実習中の心構えなど、インターンシップに関わるあらゆる内容について丁寧な指導がなされた。さらに今年から学内にて合同企業インターンシップセミナーを実施する大学もあり、実践的な業界・仕事研究ができる場であるインターンシップへの積極的な参加を促している。

理系学部のある大学については、修士論文や卒業研究に取り組む時期と就職活動時期のバッティングを事前に認識してもらうための指導がなされている。自分の専攻に直接関わる企業だけを受験して選考通過できなかった場合、研究で多忙を極める秋頃には就職活動の立て直しが難しく、今のうちからできるだけ幅広い業種や職種を見ておくよう学生に訴えている。また、夏休み明けからは、少しでも社会人と触れ合ってもらうために、これまでは実施していなかったOBOG懇談会やOBOG講演会など、卒業生を招いたコンテンツを計画している大学もある。

就職ガイダンスの実施時期については、就職活動後ろ倒しに合わせてガイダンス開始を後ろ倒しする大学は少数であり、前年から変更していない大学が大半である。一部、インターンシップサイトを早期から活用させ、夏のインターンシップ参加促進を図ろうと開始時期を早めた大学も見られる。しっかりと就職ガイダンスに出席する学生にとっては就職活動準備期間は総じて伸びたと言える。

2016年卒学生の思いについて

2016年卒学生の5人に4人は後ろ倒しを「大変そう」だと感じている

当事者である2016年卒学生は、就職活動後ろ倒しについてどのように感じているのであろうか。6月15日(日)に東京、大阪、名古屋の3都市にて開催された弊社主催のキャリア支援イベント「朝日学情ナビの仕事フォーラム~業界研究&インターンシップ~[SUMMER]」において参加学生にアンケート調査を実施した(当イベントは全学年対象であるが、アンケート結果については2016年卒学生の回答のみを抽出し集計)。

これによると「就職活動期間が短くなって大変そう」が80.3%、「就職先が決まるか心配」が65.5%と、この二つの悲観的意見が突出している。大きくポイントが離れて「就職活動の準備期間が長くなって良い」が12.3%、「学業や課外活動の時間が確保できて良い」が10.2%、「特に意識していない」が4.6%という結果となった。5人に4人は「大変そう」だと感じており、多くの学生が就職活動スタート後ろ倒しを好意的には受け取っていないようだ。もっとも毎年就活生が頼りにする「1学年上の先輩の就職活動事例」が参考にできない分、不安に思うのは当然かもしれない。

またインターンシップサイトがオープンしたばかりの6月時点のアンケートであるため、今後インターンシップ参加や就職活動の準備が進めば不安が軽減されることも考えられる。この後ろ倒しが学生にとって有益なものになるかどうか、今後も注視していきたい。

「就職活動スタート後ろ倒し」についてどう思うか

「就職活動スタート後ろ倒し」についてどう思うか グラフ

出所:学情「朝日学情ナビの仕事フォーラム来場者アンケート(2014年6月調査)」

まとめ

今回のアンケート結果を見る限り、2016年卒採用は「採用選考に関する指針」に従い、「採用広報開始が大学3年生の3月から、選考開始が4年生の8月から」という足並みを揃えたスケジュールでは進まないことが予想される。「8月から始まる選考に備えればいい」そう考えている学生は足元をすくわれかねない状況だ。

また例えば金融業界志望学生は8月以降に多くの本命企業の選考や内々定出しが始まることになる。企業としてはそうした学生に8月前に内々定出しを行っていたとしてもその後の選考結果次第では内々定辞退の増加を覚悟する必要が出てくるかもしれない。解禁日まで半年。様々な予測を立てながら来たるべき2015年3月1日に備える必要がありそうだ。

※レポート内の各項目は小数点第一位を有効桁数として表記しているため、択一式の回答の合計が100.0%にならない場合があります。

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