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学情レポート【COMPASS】2014.07

日本と海外におけるインターンシップ事情

採用広報開始が大学3年生の3月から、そして選考開始が大学4年生の8月からとなる2016年卒以降の就職活動。この開始時期の後ろ倒しに伴い、注目を集めているものがインターンシップだ。「朝日学情ナビ2016インターンシップ」においても6月1日のオープン時、前年同時期の2倍となる企業のインターンシップ情報が掲載された。採用広報スタートまでのブランクを埋めるようにインターンシップ実施意欲の高まりが見られる。

インターンシップは、学生が実際の職場での就業体験を通して「働くとはどういうことか」を知ることで自身のキャリアを考えるきっかけを提供し、また産学が連携し教育現場で学んだことを実地で試すことで、学生の学習意欲を喚起するなどその意義は非常に大きい。しかし日本で行われているインターンシップは趣旨や内容等様々で、本来の狙い通りのものばかりではない現状もある。

そこで今号では、日本の、さらには海外におけるインターンシップの実施状況を紹介し、インターンシップの在り方を改めて考えてみたい。なお、海外においてはインターンシップが採用活動とは切っても切れない関係のため、各国の採用方法や就職事情も交えながらレポートする。

1.日本におけるインターンシップの定義と実施状況

日本においてインターンシップが認知され始めたのは1990年代後半である。1997年に文部省・通商産業省・労働省(いずれも当時)が連名で発表した「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」では、「インターンシップとは、一般的には、学生が企業等において実習・研修的な就業体験をする制度のことであるが、(中略)学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこととして幅広くとらえることとしている。」とされている。
また「関係者間で共通した認識・定義が確立しているわけではない」という一文もあり、インターンシップの推進に向けて企業・大学・政府ともに手探りの状況であった。この「基本的考え方」は、一部改正された内容が2014年4月8日に文部科学省・厚生労働省・経済産業省の連名で発表されたものの大きな変更点はなく、これが現状の日本におけるインターンシップの位置付けと言える。

インターンシップの意義についても「主体的な職業選択や高い職業意識の育成を図り、就職後の職場への適応力や定着率を向上させる」「企業等の現場において、企画提案や課題解決の実務を経験したり、就業体験を積み、専門分野における高度な知識・技術に触れながら実務能力を高め、自主的に考え行動できる人材の育成につなげる」とされ、その目的は「学生の成長を促し、社会で活躍できる人材の育成」だと言える。

また2013年9月13日に一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)により発表された「『採用選考に関する指針』の手引き」においては「インターンシップは、産学連携による人材育成の観点から、学生の就業体験の機会を提供するものであり、社会貢献活動の一環と位置付けられるものである。したがって、その実施にあたっては、採用選考活動とは一切関係ないことを明確にして行う必要がある」とされている。経済界においてもインターンシップはあくまで学生のキャリア形成支援のためのものであり、採用とは一線を画するもの、と公言されている。

これらのことから、学生の成長や社会で活躍できる人材の育成が日本におけるインターンシップの意義・目的と捉えられるが、弊社が行った「2015年3月卒業予定者採用計画アンケート」によると、インターンシップ実施期間は「1週間程度以内」が78.0%、「1日」だけという回答も21.0%に及ぶなど短期間での実施が目立つ。これは仕事のイントロダクションに触れる程度であり、業務内容を密に体験し、学生の成長を促すという意味では不十分と言えよう。

学生にとっては1つのインターンシップの実施期間が短い方がより多くの企業、業界に触れる機会を得られるというメリットはあるものの、様々な課題を抱えながら行われているのが日本のインターンシップの現状であろう。

2. 欧米におけるインターンシップ

欧米においてインターンシップは100年以上の歴史があり、日本と比べ社会に溶け込んでいると言える。仕事や社会を知る体験は大学入学以前から行われており、小学校では親の職場を見学に行く会が催され、高校では夏休みを利用した「サマージョブ」と呼ばれる数週間の就業体験の場も用意されている。この章では、社会と教育の場が密接な関係にある欧米諸国の中からアメリカとイギリスのインターンシップについて取り上げる。

アメリカの新卒採用はその方法が大きく2つに分けられる。1つは優秀な学生を確保するため、大学や学部の絞り込みをかけた上で学内セミナーなどに参加し、採用したい層に直接アプローチをするというものである。もう1つは欠員補充のための通年採用で、新卒・既卒の区別をせずに行われているものだ。このうち、前者において有効な選考手法として実施されているものがインターンシップである。アメリカにおけるインターンシップは日本のように短期間ではなく、2〜3カ月かけて行うのが一般的である。募集に当たってはインターネットを通じた公募も行われているが、キャリアフェアやキャリアフォーラムと称される合同企業セミナー兼面接会に参加したり、大学に赴いてインターンシップ参加候補者の選考を行うなど、学生への直接的なアプローチによる参加者の選別が主たる方法だ。そして長期にわたるインターンシップを通じて、学生の働きぶりや適性を評価、ここに学業成績を加味したうえで採用の有無を決めていく。

日本でもITベンチャーを中心にインターンシップを直接採用に結び付ける企業もあるが少数派である。弊社調査では、インターンシップと採用活動との連携について「インターンシップ内で選考・内々定出しを行っている」企業は3.8%に留まり、多くの企業では採用広報の一環としてインターンシップが実施されている。このようにアメリカと日本ではインターンシップの実施目的が大きく異なっていると言える。

またアメリカではインターンシップ以外にも就業経験のためのプログラムがいくつも存在している。独立行政法人労働政策研究・研修機構の報告によると大学における職業教育プログラムとして、サービス・ラーニング(公益のための地域に根ざした無償労働経験)、ワーク・ラーニング(公益のための有償労働経験で、肉体労働が多い)、アプレンティスシップ(一種の徒弟プログラムで企業や使用者団体、労働組合などが主催し、技能指導などを受ける経験)、シャドウイング(社員に影のようにくっついて専門領域の労働について理解する経験)などが紹介されている。こうした数々の実践的なプログラムが用意されている理由は、アメリカにおける新卒採用が転職希望者と同じ土俵で採用試験に臨まなくてはならない即戦力採用であり、就業経験者に引けを取らないアピールをする必要があるからである。

新卒一括採用が一般的な日本とはここでも異なっている。なお、新卒一括採用はその是非が議論されているが、もし日本の新卒学生もアメリカ並みの即戦力採用が中心になった場合、こうしたプログラムが十分に用意されず社会基盤の構築が未熟であると、即戦力対象としてのアピールができる学生は少なく、結果的に新卒者の就職率の低下に繋がりかねない。

またイギリスにおけるインターンシップについてであるが、アメリカ同様、2〜3カ月という実施期間で、採用に結び付けることを前提に行われている。こうした通常のインターンシップのほか、1年間の長期に渡って実施されるイギリス独自の就業体験もある。

イギリスは一般的な学問分野を学ぶ大学の多くが3年制であり、第2学年と第3学年の間の1年間をこの就業体験の場に当てることから「サンドイッチコース」といった名称で呼ばれている。採用に結び付いているのはもちろんであるが、これは大学側が主体となって取り組んでいるキャリア教育プログラムであり、産学のパイプの強さや信頼があってこそ成り立つ制度と言えよう。

3. アジア(中国)におけるインターンシップと就職事情

アジアからは中国を取り上げる。中国は欧米諸国と比べると、日本と同じくインターンシップ後発組であるが、インターンシップの在り方は欧米同様に採用の一環として実施されている。中国の就職事情であるが、1980年代までは統一分配制度が敷かれていた。これは「高等教育機関の卒業生の職業は政府が配分する」と定められた制度で、学生には職業選択の自由が与えられていなかった。その後労働現場におけるミスマッチ等が問題となり、中国政府も方針転換をはかり、日本でいう合同企業セミナーのようなイベントが大々的に行われるなど人材市場が盛り上がりを見せていった。

その後、経済発展とともに次代を担う人材を育成するため、1999年には大学の定員を広げる政策が採用された。これにより大学生数は大幅な増加を辿り、大卒者数は2001年には100万人強だったものが、5年後の2006年には400万人を超え、現在は700万人に達している。ただし、この急激な大卒者数の増加に見合うだけの求人があるわけではない。

中国政府は1990年代後半に39の大学を研究分野での重点大学に指定、また100の大学に重点的に投資するという政策を採ったが、増加の一途を辿る大学生のスクリーニングのため外資系大手企業や国内の有名企業はそれらの指定された大学に絞り込みをかけて採用を行っている(なお、これについては、日本での文部科学省に当たる中国教育部が、新規学卒者の採用に際しての「差別的取り扱いへの是正」を勧告し、対象を限定した求人行為をしてはならないとしているが、ターゲットを絞った採用は後を絶たない状況である)。

そして指定大学からさらに優秀な学生を選出するために行われているものがインターンシップだ。
欧米諸国と同じく期間は2カ月ほどのものが多く、インターンシップの評価に学業成績が加味され採用の有無が決められていく。中国の大学生はよく勉強すると言われるが、就職に当たり学業成績が関わるとなると、勉学に励まざるを得ない事情も生まれてくる。企業のターゲットとなる大学へ入学するための受験勉強、さらにはそこからインターンシップへの参加権を勝ち取り、より良い就職先を得る。中国の大学生はこうした厳しい競争の波にさらされている。

総論

キャリア教育の重要性が唱えられているものの、社会や仕事をよく知らない学生を採用し、一から教え、自社の風土に合う人材に育てる――そうした考えや慣行が今なお日本には残っている。『学情レポートCOMPASS2014年5月号』で取り上げた「社会人基礎力育成グランプリ」のような取り組みは増加傾向にあるものの、教育現場と産業の場の隔たりはまだ大きく、有機的に結び付いていない状況だ。

学生と社会とを結び付ける上でインターンシップは大きな意味を持つが、日本ではその役割が未成熟と言える。諸外国のように採用直結型にしてしまう選択肢もあるが、競争に勝ち抜ける学生とそうでない学生の差が広がるなど、「和」や「協調」を重んじる傾向の強い日本社会には馴染まないかもしれない。最善の道を見出すのは容易ではないが、インターンシップそのものについても、インターンシップにまつわるキャリア教育と採用選考のあり方や考え方についても、インターンシップ先進国と言える国々から学ぶことは多くありそうだ。

≪当レポート執筆に当たっての参考文献・調査≫
・独立行政法人労働政策研究・研修機構Webサイト『海外労働情報』
・日野みどり『現代中国の「人材市場」と留学帰国者(金城学院大学論集 社会科学編 第6巻第1号より)』(2009年)
・リクルート ワークス研究所『Works102号』(2010年)
・リクルート ワークス研究所『Works Review Vol.6』(2011年)

 

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