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学情レポート【COMPASS】2014.05

学生たちの取り組みが企業、大学、社会を動かす
 ~社会人基礎力育成グランプリ2014 受賞校インタビュー~

今回で7回目を迎える「社会人基礎力育成グランプリ」。その決勝大会が3月10日に東京で開催された。「社会人基礎力育成グランプリ」は、ゼミ・研究・授業等における社会人基礎力の「育成・成長の事例」と「その成果」を指導担当教員+学生によるチームが発表するもので、社会人基礎力の礎となる3つの能力(「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」)がどれだけ成長したか、大学で学ぶ一般教養や専門知識をどれだけ深めることができたかという点で審査が行われる。

実は今回の「社会人基礎力育成グランプリ」は前回開催のあと主催者不在となり、その開催が危ぶまれていた。しかし「PBL(Project Based Learning=課題解決型学習)による学生の成長の機会は増えている。
学生のためにもこの成果を発表する場は残したい」という大学関係者の想いは強く、大学教員の有志が集まり「社会人基礎力協議会」を結成、この度の開催に至った。

その想いを託され、3月10日の決勝大会で魅力あふれる取り組みを堂々と発表した学生たち。今号ではその中から大賞(経済産業大臣賞)を受賞した中京大学・総合政策学部、準大賞を受賞した創価大学・経済学部および京都光華女子大学短期大学部・ライフデザイン学科の取り組みと学生の成長を、インタビューより紹介する。

開催概要

開催日:2014年3月10日(月)
会 場:拓殖大学
    文京キャンパス
主 催:社会人基礎力協議会
共 催:経済産業省

決勝大会 結果

社会人基礎力大賞
(経済産業大臣賞)
中京大学(中部地区代表)

社会人基礎力準大賞
創価大学(関東地区代表)
京都光華女子大学短期大学部(近畿地区代表)

社会人基礎力育成グランプリ2014 受賞校インタビュー

社会人基礎力育成グランプリ2014 受賞校インタビュー

決勝大会出場大学一覧

決勝大会出場大学一覧

大賞|中京大学 総合政策学部

「地元の化粧品製造企業との産学連携プロジェクトを通じた社会人基礎力育成の取り組み

指導教員:総合政策学部 教授 宮川 正裕 氏

■取組内容について

大賞|中京大学 総合政策学部

中京大学総合政策学部では、2007年に経済産業省の社会人基礎力育成・評価事業の認定を受けて以来、フィールドワーク等の授業を通じて学生たちの社会人基礎力を養う取り組みを続けてきました。私が指導するゼミ(プロジェクト研究と呼ぶ)でも、こうした流れを尊重して産学連携プロジェクトに取り組んでいます。

このプロジェクト研究の中で、私が強く意識しているのが、大学という高等教育の場で身に付けた知識を使い、社会に活かしていくスキル、「TransferableSkills(移転可能スキル)」の習得です。この「TransferableSkills」には、社会で必要となるさまざまなスキルが挙げられていますが、私のゼミではその中でも特にマネジメント能力に着目し、ビジネス戦略、経営戦略、オペレーションズ・マネジメントなどについて学んでいます。

そこで、2年次にこれらの理論を学び、その上で3年次のプロジェクト研究に取り組むことで、社会人基礎力と「Transferable Skills」を同時に磨いてもらおうと考えています。

今回のプロジェクトでは、名古屋市内にある化粧品製造企業と手を組み、学生の視点を活かした新商品の開発に取り組みました。単に新商品のアイデアを提案するのではなく、どうやったら売れるのかを考え、販売までお手伝いをしたのが大きな特徴です。

提携先となったメーカーは、業務用の商品を開発・製造し、BtoB中心のビジネスを展開する会社でした。大量生産したボディソープなどの商品を、ホテルや旅館、温浴施設に広く販売していますが、商品の大半はシニア層に向けたもの。そこで、学生たちのアイデアを基に、若者向けの新たな商品を企画したのです。
提携先の既存商品であるアロエと天然塩を使ったボディスクラブを活かしながら、新たに温泉成分やミカンエキスなどの効果も期待して「美容」「デトックス」を前面に打ち出した新商品を企画提案し、提携メーカーに採用していただきました。

■新商品の提案を通じ、データに基づく裏付けの重要性を学ぶ

プロジェクト開始当初に提案した企画は、コストや市場性の点で採用に至らす2ヵ月で10個近くの提案が不採用となりました。学生たちは「どうやったら担当者を説得できるのか」を考え抜きました。提携先の担当者を納得させるためには、なにより商品が売れる根拠が必要です。そのため、学生たちには、まず仮説を立てその裏付けを取るという、データに基づいた提案を行うように促しました。そこで学生たちは「浴衣を着て旅館に泊まる女子会であれば、美容と健康をテーマにしたボディスクラブに興味を持つのでは」という仮説を立て、その裏付けを取るために同世代の学生を対象としたアンケート調査を実施。
「どんな商品が良いと思うか」「どれくらいの価格なら購入したいか」「どのような香りが好きか」などの質問に対し、451人から回答を集め、そのデータを元に改めて提案を行ったのです。
これには、提携先の担当者からも「これだけの生の声を集めるのは、なかなかできないことだ」と驚かれました。

4月からプロジェクトが始動し、7月には若者向けのボディスクラブの企画案が固まりましたが、提携先の企業はあくまでBtoB・大口取引を柱としたメーカーであり、せっかく新たな商品を企画しても、購入先が決まらなければ提案が無駄になってしまいます。そこで、新商品の販売までをお手伝いしようと、美人の湯を謳う愛知県と三重県2つの温泉地にターゲットを絞り、ホテルの社長や女将さんの前でプレゼンテーションを実施しました。

ただ、商品自体は好評だったものの、PB商品に付随する最少ロットの一括買い取りという点に難色を示され、結局、成約には至りませんでした。私たちが販売リスクを負うのは難しいし、提携メーカーが小口での委託販売に対応することもできない。課題の解決が暗礁に乗り上げそうになった頃、旅行会社の方のアドバイスをいただくことで、プロジェクトが再び前進し始めました。温泉地の観光協会にコンタクトし、1社が難しいなら数社で購入してもらう方法はどうだろうと、ホテルや温泉旅館数社の女将さんが集う会合で、プレゼンをする機会を得たのです。

ちょうどその温泉地の旅館では、若い年代の観光客、とりわけ女性客を呼び込みたいと考えていました。そこで、「女子旅」「プリンセスケア」といったコンセプトの下、新商品を盛り込んだ若者向けの観光プランを提案したのです。こうした動きの中で、蒲郡市観光協会が中心となって2014年度に開催するイベントに中京大学とJTBプロモーションが協力することで予算化が決定しました。

困難な壁にぶつかる中で、学生たちに「考え抜く力」が身についた

総合政策学部教授 宮川 正裕 氏

中京大学の総合政策学部では、大きく「公共政策」と「ビジネス戦略」の2つを学びます。今回のプロジェクトでは、企業のビジネス戦略として新商品を企画し、その拡販を通じて企業を元気にするお手伝いをする、という目的を持ってスタートし、結果的に学生は観光客誘致や地域の活性化という公共政策的なアプローチも経験できました。その意味では、公共政策とビジネス戦略の両方を学ぶ良い機会になったと感じています。

そして、大学で得た知識を実践の場で活かす中で、社会人に求められる「悟性」も養われたと思います。とりわけ今回のプロジェクトでは、学生たちに「考え抜く力」が身につきました。単に「うまくいかなかった」と悩むのではなく、提案が次々と不採用になる中で、その原因は何なのかを探ったり、一度は断られたホテルや旅館にどうすれば商品を購入してもらえるのかを懸命に考えた。こうした苦しい経験が、「考え抜く力」の醸成に大いに役立ったと思います。

また、データを収集することが説得力につながるという、仮説検証型の問題解決法の重要さもしっかりと学べたはずです。理工系では仮説検証を行うのが当たり前ですが、文系では一方通行の講義になりがちで、こうした経験がなかなか得られません。

こうしたプロジェクトを通じ、理論と実践の摺合せによって身についた経験知は大変貴重であり、今後どのような職業に就いたとしても、必ず役立つだろうと思います。この機会を与えて下さった関係各位にあらためて御礼申し上げる次第です。

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