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学情レポート【COMPASS】2013.05

学びの現場発! 学生の成長がより良い社会を生み出す
 社会人基礎力育成グランプリ2013 受賞校インタビュー【Part1】

今回で6回目を迎える「社会人基礎力育成グランプリ」。
その決勝大会が3月4日に東京で開催された。

「社会人基礎力育成グランプリ」
は、ゼミ・研究・授業等における社会人基礎力の「育成・成長の事例」と「その成果」を指導担当教員+学生によるチームが発表するもので、社会人基礎力の礎となる3つの能力(「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」)がどれだけ成長したかといった点で審査が行われる。

先に行われた予選大会には過去最多のチーム数
となる、92大学・109チームが参加、その激戦で高い評価を得た8校が決勝大会の舞台へと歩を進めた。

第2回、第4回、第5回大会
でそれぞれ大賞を受賞した大阪工業大学、多摩大学、福岡女学院大学が決勝の舞台で相まみえ、各校のさらに進化した取り組み・成果発表のほか、学部1年生のみの活動でありながら決勝の舞台に立ち、新たな可能性を提示した日本大学・工学部など、今年もバラエティに富んだ発表が行われた。

今号では受賞校の中から準大賞を受賞した日本大学・工学部、石川県立看護大学・看護学部、会場特別賞を受賞した多摩大学・経営情報学部の取り組みと学生の成長を、インタビューより紹介する。
※大賞を受賞した大阪工業大学・工学部の取り組みについては、次号掲載予定。 

準大賞 日本大学 工学部

道を身近(ミチか)に ~村民と学生との協働による道づくり~

指導教員:工学部 土木工学科 教授 岩城 一郎 氏

■取組内容について

当プロジェクトは、有志教員による課外講座を受講した土木工学科1年生による官学産 民連携の「道づくり事業」です。
具体的には福島県平田村にて地域の住民の方とともに 砂利道の村道のコンクリート舗装を行いました。
昨年6月に行った1回目の舗装作業では 学生たちは住民の方々と関わることに躊躇し、打ち解けられず仕舞いでした。

その後、夏休 みに「道普請(地域住民が業者などに頼らず自分たちの手で道を整備すること)」について 自ら調べ、その重要性を認識したり、またどのように住民の方と接するべきかを考え、9月の 作業では無事打ち解けることができました。

学生たちはこの活動の参加者が高齢者中心 であることに疑問を感じ、事業継続の上でも若い世代の参加が必須と考え、次の取り組み である「橋の名付け親プロジェクト」で若い世代を巻き込んでいくこととなりました。

企画書 の作成、広報手段の考案、村長へのプレゼンを通し、プロジェクトは実施が決定、現在継 続展開しています。

■先入観にとらわれない若い感性が村を動かし、若者を巻き込む取り組みへ

社会人基礎力育成グランプリに参加したのはインフラ整備に高い関心を持つ3人の1年生だったのですが、発想の斬新さや伸びしろの大きさに驚かされました。
村道舗装の成果発表で社会人基礎力育成グランプリの予選会は通過できましたが、学生たちはそこで満足してしまい燃え尽き症候群に陥ってしまったんです。

「ここまで来たのだから最後まで責任を持ってやり遂げなさい」と叱咤し、「橋の名付け親プロジェクト」という新たな課題に取り組ませました。そのとき彼らは思いも寄らぬ力を発揮してくれたのです。

私からすると「道づくり事業の参加者は高齢者ばかりになってしまうのが当たり前」という先入観がありました。
しかし学生たちは「自分たちが普段使っている道や橋の事業に子どもや若い人が関わらない」ことを疑問に感じており、名付け親の対象は小中学生にまで広げるべきだというアイディアを出し、若い感性溢れる企画書を完成させました。
そしてこの発想が平田村の村長の共感を得て、村と若者を巻き込んだ活動という大きな成果につながりました。

きっかけを与えたときの爆発力は私の常識を覆すもので、本当に驚きましたね。
今回のプロジェクトでは、自ら率先して参加したいと意思表示してくれたやる気の高い1年生に、社会的問題となっているテーマのみを与え、出てきた成果物に対し合理的か否かという点のみからアドバイスすることを心掛けて進めましたが、見事に期待に応えてくれたと思っています。

この事業は今年の6月で一区切りしますが、その後の残り3年間の学生生活において、自らが目標を立て、高い意識を保ちながら専門知識や技術を身に付け、真に社会で活躍できる人材(技術者)になれるよう成長してくれることを期待しています。

準大賞 石川県立看護大学 看護学部

「世代間交流による『健康なまち』創造の軌跡 ―健康は一人じゃなく、みんなで創るもの―」

指導教員::看護学部 看護学科 准教授 垣花 渉 氏

■取り組み内容について

ゼミ生が起ち上げた「健康増進のための市民サークル」による健康教室を起点に、地域に住む働く世代の健康の維持・増進に向けた取り組みを行ってきました。
健康教室実施にあたり、参加者募集のため市役所や商工会に告知協力を依頼し、またNPOに体操指導の協力を得るなどして、1回目の健康教室が開催されました。

しかし一方的な講義になってしまうなど、様々な課題が山積する結果に。
その後、連携団体と役員会を開催し、課題の共有と改善案について打ち合わせをしました。
また学生同士でも頻繁に話し合いを行い、次回の健康教室から「グループワークを行う」「参加者の活動継続を促すため体重記録表へコメントを付けていく」といった工夫をしていきました。

このように課題を見つけては改善を繰り返すことで、参加者が主体的に楽しく活動に臨むようになり、健康教室は活性化かつ洗練され、さらに学生もファシリテーターとして成長していきました。

またこの活動を通し、参加者のストレス低下や健康意欲の増進などの成果にも繋げていくことができました。

■失敗からの学びが成長の原動力になる

学生の指導に当たっては「失敗から学ばせること」を意識しました。
失敗体験を通して人を育てるには、「自ら考えたことを実践させ、その上で失敗させる」ことが不可欠であるため、健康教室については企画から運営まで全て学生に行わせました。

1回目の健康教室は目論み通り見事に失敗。
その時に私は学生とともに失敗した状況を確認、学生を励ますに留め、解決への最短経路を教えないよう徹しました。
結果、学生は「まじめな雑談」と称する昼食会を繰り返し実施、教室の改善策を何度も話し合うようになっていきます。

その中で「参加者である住民が主体的に活動に臨むことが、楽しい健康教室には欠かせない」という着想を得て、あくまで主役は参加住民であり、学生は脇役に徹するという教室の方向性が固まっていきました。
その話し合い過程の中で、学生たちの間に「より良くしよう」という意識が強く芽生えていくようになりました。

失敗学習には気長に見守る根気が求められますが、試行錯誤を繰り返す中でこのような意識が生まれ、彼らの成長を感じることができましたね。
その結果、参加住民も主体的に活動に臨むようになっていき、健康教室は順調に進んでいきました。
活動の主体はゼミの4年生でしたが、下級生も活動に参加し、受付、講義、測定等役割分担しながら進行しました。
ゼミ生と下級生では経験や知識に差があるため、ゼミ生だけの方が活動はスムーズに進められるのですが、サークル継続のためにも後輩の育成は欠かせず、ゼミ生は下級生を巻き込んだ教室運営にこだわりました。

私も学生も異学年のチーム構成に苦労しましたが、その過程でゼミ生はリーダーシップを学び、下級生は礼節を身に付けていったようです。
看護職者には、他者を思いやり、協力して物事を行える資質や能力が求められます。

学内外の世代間交流を通じて培ったこれらの力を、卒業後も各々の職場で発揮してくれることを願っています。

会場特別賞 多摩大学   経営情報学部

「村山貞幸ゼミ『日本大好きプロジェクト』」

指導教員:経営情報学部 教授 村山 貞幸 氏

■取り組み内容について

当ゼミでは、イベントを通じて日本の伝統文化を伝承していく「日本大好きプロジェクト」を実行しています。
このプロジェクトは、幼稚園、保育園、児童館などの施設を訪問し、茶道・武道・工芸・影絵・鼓など20を超える伝統分野の活動を子供たちに体験してもらう「訪問型イベント」と、「和紙キャンドル」を用い来場者に「和」を感じていただく「集客型イベント」の2つに分かれます。

今回は、東日本大震災の被災地を何度も訪問、その中で「自分たちの住む地域が報道されず、忘れ去られてしまうこと」への不安を抱く被災者の声を聞き、その想いを和紙キャンドルで表現する企画を立ち上げました。

学生たちは37市町村を歩きながら被災者一人一人に声を掛け、2,400人以上から和紙へメッセージを記してもらい、東京ミッドタウンにて「絆」を意味する伝統紋様の形に配置して灯す「和紙キャンドルガーデン-TOHOKU2012-」を開催し、朝日新聞1面など多くのメディアに取り上げられました。

他にも語りきれないほど多岐に渡る活動を行っています。

■「変わりたい」という思いが「諦めない力」を生み出す

彼らを見ていて感じるのが「諦めない力」、社会人基礎力で言うところの「実行力」がついたという点です。
ハードな活動と知りつつ村山ゼミの門を叩くのは、過去の自分と訣別し、「変わりたい」という思いを持つ学生。
しかし活動をしていく中で学生それぞれの気持ちには温度差が生じていきます。

やる気がなかなか表に出てこない女子学生がおり、皆で東日本大震災の被災地に行くことになった際も彼女は渋っていました。
ところが実際に被災地に行き、飛び込みで多くの被災者の話を聞いて回ることで彼女の中で何かが芽生えたようです。

その後東京に戻ってイベントの準備をしている途中、彼女は体調を崩し、立ち上がれないような状態になったときがありました。
当然教員としては家に帰って休むよう命じましたが、「私は絶好調です、大丈夫です」という返答。

1人で帰れる状態ではなかったため、他の学生が肩を貸し、帰宅させましたが、その道中でも彼女は抵抗し「私は大丈夫だから現場に戻らせてほしい」と懇願していたそうなんですね。
それを聞いたときに、「あの学生がこんなに変わるのか」という思いとともに、胸が熱くなりました。

心の奥底にあった「変わりたい」という思いが開花したのだと思います。
指導に当たっては「何を行うか」はほとんど学生任せにしていますが、「社会性」を重視することは徹底させています。

自分勝手な言動は認めず、常に仲間のこと、社会のことを考えるよう繰り返し伝えています。
プロを意識させるこの活動で学生たちは素晴らしいスキルを身につけていきますが、それだけでは社会に出たときに金儲けのためだけにそのスキルを使ってしまうことに繋がりかねない。

そうではなく、人のため、社会のために行動できる人間になってもらえるよう、「社会性」を重視して指導していますし、それを今後も磨いていってほしいですね。

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